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俺×恋=0になります。  作者: 光黒猫
第五章 俺×真実=繋がってきます。〜愛の告白編〜
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181/228

180話 私×初恋=あの日の続きでした。

小学生の私は、あまり笑わない子供だった。

笑えなかった、の方が正しいかもしれない。


鏡を見るたびに感じる違和感。


周りとは違う、白い髪。


それだけで、私は“普通じゃないもの”として見られていた。


最初は、ただの好奇心だった。


「どうしてその色なの?」

「触っていい?」


そんな言葉が、少しずつ変わっていく。


「気色悪い」

「触ったら、あの色が移るよ」


距離ができて、視線が変わって、気づけば誰も隣にいなくなっていた。


一人でいる時間が当たり前になって、それでも、どうにか耐えていた。


けれど——


ある日、限界が来た。


校舎の二階、窓越しに見える地面。


「……もういいや」


そう思った。怖くなかったわけじゃない。


でも、それ以上に——どうでもよかった。


踏み出した。その先の記憶は、曖昧だった。気がついた時には、病院のベッドの上にいた。



病院は静かだった。


けれど、その静けさは優しいものじゃない。

ただ、何もないだけの空間。それでも、学校よりはずっと楽だった。


窓の外を眺める時間だけが、少しだけ落ち着いた。


その日も、そうしていた。


——後ろから、声がした。


「……なぁ、俺、マモルって言うんだけど」


振り返る。


知らない男の子。どこにでもいそうな、普通の子。むしろ、少しだけ冴えない印象。


「……」


反射的に睨む。


関わりたくない、そう思って、そのまま逃げた。それで終わると思っていた。


でも——


次の日も、その次の日も、その子は話しかけてきた。

逃げても、逃げても。


何度も。


「……また来たの?」


初めて言葉を返した日。


正直、うんざりしていた。


でも、それ以上に——


少しだけ気になっていた。どうしてこの人は、こんなにしつこいのか、どうして諦めないのか。


「暇なんだよ、ここ」


そう言って笑う姿は、どこか無防備で。


「……バカみたい」


思わずそう言った。


それでも、その子は気にしなかった。

また話しかけてくる。そのうち、少しずつ話すようになった。


ほんの少しだけ。


「学校は?」


そう聞かれた時、少しだけ迷った。

でも、隠す意味もないと思った。


「……いじめられてるから」


淡々と話す。


感情を込めないように。壊れないように。


それでも、その子は——


否定しなかった。


「……そんなことねぇよ」


まっすぐな声だった。


「容姿とか、関係ねぇし」


「……」


信じられなかった。


だから、見せた。


包帯を外して、自分の髪を。

これを見ても、同じことが言えるのか。


そう思って。


でも——


「……綺麗だな」


その一言で、全部崩れた。


「すげぇ、綺麗」


もう一度言われる。


「……」


何も言えなかった。


ただ、頬が熱くなっていた。

あの時、初めて思った。


——この人は、違う。


それから、病院生活が少しだけ楽しみになった。


あの人に会えるから。


それだけで、少しだけ世界が優しくなった。



でも、その時間は終わる。


「もう来なくていいですね」


あの人が、そう言われた日。

怪我は治っていた。


もう、終わりだった。


「……あのさ」


その子が言った。


「写真、撮らない?」


「……なんで」


「思い出」


それだけだった。


少しだけ迷って、それでも頷いた。


それが——最後。



それから、何年も経った。


高校の入学式の日、私は少し遅れて教室に入った。


理由は、特にない。ただ、人混みが苦手だっただけ。

席に座り、一通り担任の挨拶が終わる。これから自己紹介、という流れ。


教室の空気は、少しずつ落ち着いていた。


「……」


特に興味はない。


周りの生徒を軽く見ながら、時間が過ぎるのを待つ。


その時だった。


ガラッ——


教室の扉が、勢いよく開く。


空気が、一瞬で変わる。


全員の視線が、そちらに向く。


遅れて入ってきた生徒。


「……」


ざわつきが広がる。


「遅刻?」

「初日から?」


ひそひそとした声。

小さな笑いが起こり、歓迎されていない空気。


「……」


私も、その流れの中にいた。特別何かを思ったわけじゃない。


ただ——


“印象が悪い”


それだけ。


視線を向ける。


そこにいたのは、一人の男子。少し慌てた様子で教室に入ってくる。


「……」


冴えない。


それが、最初の印象だった。


目立たない、かっこいいわけでもない、むしろ、頼りない。私の関わるタイプじゃない。


そう思った。


——そのはずだった。


「……?」


ほんの一瞬だけ、違和感が走る。


何かが引っかかる。でも、それが何なのか分からない。


「……気のせい」


そう思って、視線を外した。

その時はまだ——気づいていなかった。


「楽々浦真守です」


名前が呼ばれる。


その瞬間、心臓が、大きく鳴った。


「……え」


息が、止まる。


その名前。

その声。

その雰囲気。


全部が——


繋がる。


でも。


「……違う」


否定する。


そんな都合のいい話、あるはずがない。

それでも、彼から目が離せなかった。



気づけば、話しかけていた。


「楽々浦くん?」


振り向いた顔、その反応。


全部が——あの頃のまま。


「は、ふぁいっ!!」


盛大に噛む。


それを見た瞬間、確信しかけた。

でも、怖くなった。違っていたら、また失うのが怖くて。


だから——


素直に話せなかった。


「なんで私があなたと話さなきゃいけないのよ」


本当は、違う。


聞きたいことがあった。覚えてるのか、とか、あの時のこと、とか。


でも、全部は言えなかった。


「罰ゲームよ」


嘘をつく。


距離を取るための言葉、自分を守るための言葉。


それでも——


話したかった。だから、離れなかった。



後で、一人になった時。


すごく後悔した。どうして、あんな言い方しかできなかったのか、どうして、素直になれなかったのか。


分かっていた。


怖かっただけだ。また失うのが、また、一人になるのが。


それでも。


少しずつ、話せるようになった。

時間をかけて、距離を縮めて。


あの頃みたいに。


「……」


意識が、今に戻る。


目の前には、真守くんがいる。

手には、あの写真。あの日の、最後の記憶。

胸の奥が、じんわりと熱くなる。


ずっと探していた、ずっと会いたかった。

あの時の続きを。


やっと——見つけた。


心の中で、そっと呟く。


これが、私の初恋の人。


そして——


……ずっと、好きな人。

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