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俺×恋=0になります。  作者: 光黒猫
第五章 俺×真実=繋がってきます。〜愛の告白編〜
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173話 俺×炎柱=近すぎると余計に意識します。

夕方になると文化祭は終盤に差し掛かり、校内の空気も少しずつ落ち着き始めていた。


最後の見回りとして、真守は校庭へ向かう。


外に出た瞬間、視界が一気に開けた。


中央には、大きなキャンプファイヤー。


火はすでに灯されていて、パチパチと静かな音を立てながら、ゆっくりと揺れている。その周りには自然と輪ができていて、音楽に合わせて人の流れが生まれていた。


「……」


少し離れた場所で、それを眺める。


ただ炎を見ているだけなのに、どこか落ち着く。そんな時間だった。


「楽々浦くん」


横から声がかかる。


振り向くと、葵と奏が立っていた。


「まだ、見回り?」


「まあ、そんなところです」


「そっか」


葵が頷いて、少しだけ距離を詰めてくる。


「じゃあさ」


軽く笑う。


「気分転換に、一緒に踊ろ?」


「……いや、自分は——」


断ろうとした、その時だった。


「あ、葵さん!さっきの演劇めっちゃ良かったです!」

「奏先輩もすごかったです!」

「サインください!!」


周りから一気に声がかかる。


気づけば、人が集まり始めていた。


さっきの演劇を見ていた人たちが、そのまま二人に話しかけている。


「……」


葵も奏も、それに応える。


笑顔で、丁寧に。


「ありがとうございます」


「見てくれて嬉しいです」


その輪は、あっという間に広がっていく。


「……これは無理だな」


小さく呟く。


完全に囲まれていた。さっきの言葉も、もう続けられる空気じゃない。


少し距離を取る、そのタイミングだった。


「真守くん」


別の声。


振り向くと、目の前に白ヶ崎がいた。


まだ、メイド服のまま。炎の光を受けて、少しだけ違う表情に見える。


「……まだそれ着てんのか」


「悪い?」


「……いや」


「似合ってるって言ったの、真守くんでしょ」


「……」


言い返せない。


「意外と気に入ってるじゃん」


「……別に」


そっぽを向く。


けれど、その仕草はどこか柔らかい。


「……で」


一歩、近づいてくる。


「踊る?」


短く言う。


「……いいのか」


「何が」


「メイド喫茶、忙しいんじゃないのか」


「今日はもう終わり」


あっさりと返され、そのまま、手が差し出される。


「……」


迷いはなかった。


その手を取る。


そして引かれるまま、輪の中へ入る。

音楽に合わせて、自然と体が動く。


最初はぎこちなかった。けれど、それもすぐに消えていく。


目の前にいるのは、白ヶ崎だけだった。周りの声も、炎の音も、少しずつ遠くなる。

ただ、向かい合っている距離だけが、はっきりと残る。


白ヶ崎の綺麗な顔が、炎に照らされて幻想的な雰囲気になる。

火の光が揺れて、その表情を柔らかく照らす。

普段より少しだけ静かな顔。それが、やけに近く感じる。


一歩、踏み込む。


その分だけ、距離が縮まる。逃げ場はないはずなのに、不思議と嫌じゃなかった。


むしろ——


その距離を、保ちたくなる。


手が触れるが、離れない。指先の温度が、そのまま伝わる。呼吸が、少しだけ重なる。視線が、逸らせない。


言葉は、いらなかった。


ただそこにいるだけで、全部伝わる気がした。


もう一歩、近づく。


白ヶ崎の瞳が、わずかに揺れる。


それでも、逃げない。そのまま、距離がさらに縮まる。


顔が、近づく。


ほんの少し動いたら、唇が触れられる距離。

そのまま、時間がゆっくりになる。

音も、光も、全部が遠のいていく。


ただ——この距離だけが、現実だった。


あと少し。


その瞬間だった。



『生徒会より連絡です』



放送が、響く。



『楽々浦真守君、至急生徒会室まで来てください』



「……」


時間が、戻る。


一気に、現実に引き戻される。


「……はぁ」


思わず、ため息が漏れる。


さっきまでの空気が、全部切れる。


「……タイミング悪すぎだろ」


小さく、吐き出す。


「……」


白ヶ崎も、同じように少しだけ顔を歪めている。


「……ごめん」


「……ほんとだよ」


少しだけ拗ねた声。


「すぐ戻る」


「……ほんとに?」


「戻るって」


さっきより、少しだけ強く言う。


「……」


白ヶ崎は少しだけ迷ってから、小さく頷く。


「……待ってる」


「……ああ」


ゆっくりと、手を離す。


さっきまで繋がっていた温もりが、少しだけ残る。


そのまま背を向け、炎の光を背中に受けながら校舎へ向かう。


さっきまでの時間が、まだ残っている。

ほんの少しだけ、足取りが重い。


それでも——


止まるわけにはいかない。呼ばれた以上、行くしかない。


そのまま、生徒会室へ向かった。

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