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俺×恋=0になります。  作者: 光黒猫
第五章 俺×真実=繋がってきます。〜愛の告白編〜
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172/228

171話 俺×メイド=好きになっているかもです。

文化祭当日。


校門をくぐった瞬間、空気が一気に変わった。


普段より人が多く、呼び込みの声があちこちから飛び交っている。校舎もいつもと違う顔をしていて、どこか別の場所に来たみたいだった。


「いらっしゃいませー!」

「焼きそば安いよー!」


そんな声を横目に、真守は腕章に軽く触れる。


——生徒会。


今日は客として回るわけじゃない。


「……はぁ、見回りか」


軽く呟いて、歩き出す。


校内を一通り巡る。

大きな問題はない。


多少騒がしいくらいで、むしろ文化祭らしい空気だった。


「……」


そんな中で、ふと足が止まる。

目の前は、自分のクラス。


少しだけ迷ってから、扉に手をかける。


「お帰りなさいませ、ご主人様」


「……」


一瞬、言葉を失う。


白ヶ崎だった。


メイド服姿で、丁寧に頭を下げている。

普段の強気な雰囲気はそのままなのに、どこか柔らかく見えた。


「……」


自然と、見入る。


「……なに」


少しだけ頬を赤くして、睨まれる。


「……いや」


視線を逸らす。


「似合ってる」


素直に言う。


「……っ」


一瞬、動きが止まる。


「……そう」


そっけなく返すけど、耳が赤い。


「ご注文は?」


すぐに切り替える。


「おすすめで」


小さくため息をつきながら、メモを取る。

その仕草が、やけに丁寧で——


「……」


なんだか、少しだけ距離を感じる。


「おい楽々浦!」


奥から神宮丸が飛んでくる。


「来たならちゃんと金落としてけよ!」


「見回り中だっての」


「今日は関係ねぇ!客だ客!」


「意味分かんねぇよ」


「ほら座れ!」


強引に奥の席へ押し込まれる。


「……」


周りを見ると、思っていた以上にちゃんとしていた。教室の装飾も、雰囲気も、しっかり作り込まれている。


「……意外とやるな」


「だろ?」


神宮丸が得意げに言う。


「俺のプロデュースだからな」


「何もしてなかっただろ」


「精神的支柱だよ!」


「いらねぇよ」


そんなやり取りの中で——


「お待たせしました」


白ヶ崎が料理を持ってくる。


「……」


近い。


テーブルに置くために身を乗り出す。距離が、自然と縮まる。


「……」


一瞬、目が合うがすぐに逸らされる。


「ご主人様、こちらになります」


少しだけ声色を変えて言う。


「……なんだその声は」


「接客だから」


「絶対、楽しんでるだろ」


「別に」


そっけなく言いながら、ほんの少しだけ笑っている。


「……」


そのまま食べ始める。


味は普通。


でも——


「どう?」


横から覗き込まれる。


「……うまい」


「ほんとに?」


「……咲音が持ってきてくれたからかな」


「……そ」


短く返す。


でも、その声は少しだけ柔らかい。


「なあなあ白ヶ崎!」


神宮丸が割り込んでくる。


「お前マジで当たりだろこれ!」


「うるさい」


「いや絶対人気トップだって!」


「黙れ」


「怖っ!」


それでも楽しそうだった。


「……」


その空気の中で、ふっと力が抜ける。


気づけば、さっきまでの“役目”とか“立場”とか、全部忘れていた。


ただ——


普通に、楽しい。


「……」


ふと、白ヶ崎の方を見る。


忙しそうに動きながらも、時々こちらを気にしている。だが、目が合うとすぐ逸らされる。


その仕草が、なんだか少し可笑しくて。


「……」


同時に、少しだけ——


胸の奥が、あたたかくなる。


「……」


こんな風に、誰かと過ごす時間が当たり前みたいになっていることに、少しだけ驚く。

前までは、こんな余裕なかったのに。気づかないうちに、少しずつ変わってきているのかもしれない。


少し前の自分なら、不幸を避けて一人でいることが一番だった。

誰かに頼るなんて考えなんて、微塵もなかった。でも、今は心の奥で助けを求めているのかもしれない。


それが悪い気はしなかった。


そんなことを思いながら、食べ終わる。


「ごちそうさま」


「ありがとうございました、ご主人様」


軽く頭を下げる。


「……」


一瞬、視線が合う。


「……どうだった?」


小さく聞かれる。


「……よかった」


「……」


「店も」


少しだけ間を置いてから、


「咲音も」


付け足す。


「……っ」


また、少しだけ固まる。


「……真守くん、そういうのズルい」


「何がだよ」


「……別に」


そっぽを向く。


「……」


その様子が、やけに自然で。


「……じゃあな」


「……うん」


今度は、少しだけ柔らかく返される。


店を出て廊下に出ると、また賑やかな空気に包まれる。


さっきまでの時間が、少しだけ残っている。

楽しかった。ただ、それだけだった。


自然と、少しだけ口元が緩む。


「……」


こういう時間も悪くない、と心の中で思った。

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