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俺×恋=0になります。  作者: 光黒猫
第五章 俺×真実=繋がってきます。〜愛の告白編〜
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170話 俺×本番前夜=ワクワクします。

あれから、数日が経った。


時間だけは、何事もなかったかのように進んでいく。


校舎の中はすっかり文化祭一色で、廊下には装飾が増え、教室の扉には手作りのポスターが貼られている。

どこを見ても準備の音と笑い声で溢れていて、その中心に自分もいる——はずなのに、どこか現実味が薄かった。


「おい楽々浦!手止まってるぞ!」


「……ああ、悪い」


神宮丸に呼ばれて我に返る。


教室ではメイド喫茶の準備が進んでいて、机を動かしたり装飾を貼ったりとやることは多い。手は動かしているつもりなのに、どうしても意識が散る。


「お前ほんとやる気ねぇな」


「ちゃんとやってるっての」


「じゃあもっとキビキビ動けよ、明日が本番だぞ」


「お前はテンション上げすぎなんだよ」


軽く返すと、神宮丸は満足そうに笑った。


その横で、白ヶ崎は黙々と装飾を整えている。


「これ、どこに置く?」


「その辺でバランス見て頼む」


「雑すぎ」


呆れながらも、きっちり配置していくあたりが白ヶ崎らしい。


その様子をぼんやり眺めていると、すぐに見抜かれる。


「……ぼーっとしてる」


「してない」


「してる」


即答だった。


「顔に出てる」


「……」


言い返せない。


「無理しないでね」


少しだけ声を落として言われる。


「……ああ」


短く返すと、それ以上は踏み込んでこなかった。


その距離感が、ありがたかった。


そのまま午前の準備が一段落し、流れるように昼休みへと移っていく。


「よし、飯行くぞ」


神宮丸が立ち上がる。


「お前は元気だなほんと」


「文化祭前日だぞ?浮かれない理由あるか?」


「ないな」


呆れながらも立ち上がり、白ヶ崎と三人で学食へ向かう。


いつも通りの流れだった。


食券を買い、空いている席を見つけて座る。


「今日はカツ丼にするしかねぇ」


「毎日、肉じゃねぇか」


「いいだろ別に、文化祭前日だし」


「関係ねぇよ」


軽口を交わしながら食べようとした、その時だった。


「楽々浦くん」


聞き慣れた声に顔を上げる。


葵だった。


「ここ、いい?」


「……どうぞ」


白ヶ崎が先に答える。


その後ろに、もう一人。


「私もいい?」


奏だった。


「……」


白ヶ崎が一瞬だけ視線を強める。


それでもすぐに逸らす。


「どうぞ」


短く返す。


葵が自然に席に座り、奏は——迷いなく真守の隣に座った。


「……」


距離が、近い。


「え、あ、先輩っすよね!?」


神宮丸が一瞬で反応する。


「めっちゃ可愛いんですけど……!」


「うるせぇよ」


「いや仕方ないだろ!?可愛いし!」


すぐにテンションが崩れる。


「初めまして、神宮丸です!」


「……夢百合奏です」


奏が少し困ったように笑う。


「奏先輩っすか!?名前も可愛いっすね!」


「……ありがとう」


軽く受け流す。


「双子なんですか!?あと趣味とか——」


「神宮丸、落ち着け」


「ごめんごめん!でも気になっちゃって!」


テンションはそのまま、言葉だけ敬語。


「……」


奏は困りながらも、嫌な顔はしない。

その柔らかさが、余計に目を引く。


「……」


真守は横目でそれを見る。


今までの奏とは、明らかに違う。


棘がない。ただ、柔らかい。

本来の奏は、こういう姿なのかもしれないと、ふとそう思う。


「……」


思わず、少しだけ見入る。


「顔になんかついてる?」


「……い、いや」


視線を逸らす。


その時、袖を引かれる。


「ね、これ食べてみて」


「……いや、自分のあるんで」


「いいから」


軽く押し付けられる。


「……」


断れない。


その様子を見ていた白ヶ崎が、すぐに動く。


「ちょっと、近い」


奏の腕を引いて距離を取る。


「別にいいでしょ」


「よくない」


「過保護すぎない?」


「うるさい」


静かに火花が散る。


「いや〜仲いいなほんと」


神宮丸はなぜか楽しそうに笑う。


「お前は黙れ」


「なんでだよ!」


全く反省していない。


葵はそんな様子を横で楽しそうに見ていた。


「ふふ、賑やかだね」


止める気は一切ない。


そのまま、なんだかんだと騒ぎながら時間が過ぎていく。


笑い声があって、軽口があって。


普通の昼休みだった。


「……」


それなのに、どこか現実味が薄い。


葵と奏が、普通に並んでいる。軽く言い合いながら。何もなかったかのように。


やがて昼休みが終わり、席を立つ。


「よし、戻るぞ」


神宮丸が先に歩き出す。

白ヶ崎もその後ろにつく。


その流れの中で——


「楽々浦くん」


横から、葵が小さく声をかけてくる。

ほんの少しだけ距離が近い。


周りには聞こえないように、声を落とす。


「停学の件」


「……」


「文化祭終わってから、一ヶ月だって」


「……そうですか」


短く返す。


「ごめんね」


「……」


「巻き込んで」


「……別に」


首を振る。


「どうにかなったんで」


「……うん」


それだけで会話は終わる。


すぐに距離を戻す。

まるで何もなかったかのように。


「……」


各自、午後の準備へ戻っていく。


作業に没頭していたせいか、気づけば外はすっかり暗くなっていた。


「よし!こんなもんだろ!」


神宮丸が満足げに言う。


教室はそれらしい形になっていた。


「意外とちゃんとしてるわね」


白ヶ崎が呟く。


「だろ?俺の采配だ」


「何もしてなかったでしょ」


「精神的支柱だよ」


「いらない」


軽口が飛び交う。


「……」


真守は教室を見渡す。


準備は整っている。


明日、ここで文化祭が始まる。


「……」


胸の奥が、静かにざわつく。


何も終わっていない。


むしろ——ここからだ。


小さく息を吐く。


そして——


翌日。


文化祭当日になった。

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