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俺×恋=0になります。  作者: 光黒猫
第五章 俺×真実=繋がってきます。〜愛の告白編〜
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169話 俺×天秤=その答えには代償が伴います。

「……私なんだよね」


その一言で、思考が止まった。


「……は?」


間の抜けた声が出る。

けれど、それ以上言葉が続かない。


「……」


目の前の葵は、いつもと変わらない顔をしている。少しだけ困ったような、申し訳なさそうな表情。


それだけだった。


「……どういう、意味ですか」


ようやく絞り出す。


葵は少しだけ視線を逸らして、それから戻す。


「そのままだよ」


静かに言う。


「……私が、生徒会室に入ってた」


頭の中で、点が繋がっていく。


夜な夜な忍び込んでいた人物。

生徒会メンバーじゃないと入れない。

葵と赤坂の仲。


「……」


「……でも」


葵が続ける。


「そんな大事になってるとは思ってなかった」


「……」


「ちょっと、気になっただけで」


「……」


「まさか退学とか、そういう話になるなんて思ってなかった」


本当にそう思っている顔だった。


軽率だった。でも、悪意はない。そういうタイプの“やらかし”だった。


真守は、深く息を吐く。


「……まずいですね」


素直に言う。


「……」


「このままだと、葵先輩も——」


言葉を選ぶ。


「……退学になる可能性、ありますよ」


「……」


少しだけ沈黙。


「……そっか」


葵が、小さく言う。


「仕方ないね」


あっさりとした言い方だった。

その軽さに、少しだけ苛立つ。


「よくないです」


はっきり言う。


「……」


「そんな簡単に、納得しないでください」


葵が少しだけ目を丸くする。


「……でも」


「でもじゃないです」


被せる。


「まだ、どうにかできる可能性あります」


「……」


「会長に、話します」


「……」


「今から」


そのまま立ち上がる。

もう、迷いはなかった。その足取りは真っ直ぐで、無意識のうちに会長室の前に立った。


一度だけ息を吐き、それからノックする。


「どうぞ」


中から、いつもの声が返ってくる。


ドアを開ける。


「失礼します」


「やあ、楽々浦君」


穏やかな笑顔だった。


「どうしたんだい?」


「……」


少しだけ間を置き、それから、口を開く。


「共犯者が、分かりました」


会長の表情は、変わらない。


「……そうか」


ただ、それだけを言う。


「……」


「それで、その人はどうなりますか」


名前はあえて、出さない。


「……」


会長が、少しだけ考えるように視線を落とす。


「……そうだね」


静かに言う。


「退学が妥当だろう」


その一言が、重く落ちる。


「……どうにか、なりませんか」


すぐに言葉を重ねる。


「事情があって、悪意があったわけじゃなくて」


言葉を探す。


必死に。


「……」


会長は、じっとこちらを見ている。

それから、ふっと小さく笑う。


「……そんなに葵君を庇って、どうするんだい?」


「……っ」


心臓が、跳ねる。


言葉が出ない。


「……」


会長は、静かに続ける。


「分かっていたよ」


穏やかな口調のまま。


「君が辿り着くことも、その答えも」


「……」


「そして——」


少しだけ、間を置く。


「夢百合君の抱えていた問題も」


「……」


頭の中で、何かが弾ける。


「……なんで」


ようやく声が出る。


「……分かってて……なんで、葵先輩と一緒に」


言葉が詰まる。


「協力するように、言ったんですか」


会長は、首を傾げる。


「言っていないよ」


「……え」


「僕は」


静かに言う。


「“夢百合君に頼んだよ”としか言っていない」


「……」


「葵君とは、一言も言っていないよ」


その瞬間——


理解する。


「……」


確かに、言われていない。

“葵”とは、一度も。


「……」


自分で決めていたんだ、勝手に。


会長は、ずっと分かっていた。

入れ替わりも、違和感も、全部。


「だから」


会長が続ける。


「君に任せた」


「……」


「結果的に、全て解決に向かっている」


「……」


何も言えない。


葵も、同じだった。

少しだけ俯いている。


その空気の中で——


会長が、ふっと息を吐く。


「……ただ」


少しだけ、声のトーンが変わる。


「今回の件については、上に掛け合ってみよう」


「……」


顔を上げる。


「……葵君の件は停学処分で、どうにかなるかもしれない」


「……っ」


思わず、頭を下げる。


「ありがとうございます」


隣で、葵も深く頭を下げる。


「……ただし」


会長の声が、少しだけ強くなる。


「赤坂の件は、別だ」


「……」


「彼女の行動は、明確に悪意がある。僕は、それを許すつもりはない」


はっきりと言い切る。


「……」


空気が、引き締まる。


「……楽々浦君」


名前を呼ばれる。


「君は、彼女をどう思っている?」


「……」


言葉に詰まった。


正直、分からない。

あの日から、関係は変わってしまった。


「仲がよろしくないのは、分かっているよ」


会長が、淡々と言う。


「それでも、助ける必要があるのかい?」


「……」


一瞬の迷い。


それでも——


「……はい」


はっきりと、答える。


根拠はなかった。

理由も、うまく言えない。


それでも——


「……」


会長が、小さく苦笑する。


「……そうか、仕方ないね」


少しだけ、目を細める。


「それなら」


一拍置く。


「それ相応の覚悟を、しておくといい」


「……」


その言葉の意味は、分からない。

けれど——軽くはないことだけは、分かった。


会長室を出る。


扉が閉まる音が、やけに大きく響いた。


「……」


廊下に出て、葵と隣に並ぶ。

しばらく、何も言わない。


「……」


先に口を開いたのは、真守だった。


「……とりあえず、助かりましたね」


「……うん」


小さく頷く。


「……」


また、沈黙。


「……」


それでも、さっきまでとは違う重さが、少しだけ軽くなっていた。


ただ、問題はまだ終わっていない。


むしろ——


ここからが、本番だった。

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