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俺×恋=0になります。  作者: 光黒猫
第五章 俺×真実=繋がってきます。〜愛の告白編〜
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168話 俺×核心=その答えはすぐ隣にありました。

朝の空気は、驚くほど普通だった。

昨日までの出来事が、全部夢だったんじゃないかと思うくらいに。


昨日の殴られた箇所が痛み、無意識に頭に手を置く。


「……」


隣を歩く白ヶ崎が、ちらりとこちらを見る。


「大丈夫?」


短い一言。


それだけなのに、ちゃんと心配しているのが分かる声だった。


「……まあ」


曖昧に返す。


本当は、大丈夫じゃない。けれど、それをそのまま言うほどでもなかった。


「……」


それ以上、白ヶ崎は踏み込んでこない。

ただ、歩くペースをほんの少しだけ合わせてくる。


「……」


校門が見えてくる。


いつも通りの景色、いつも通りの生徒たち。その中に、自分も混ざっている。


——はずなのに。


頭の中だけが、妙に騒がしい。

赤坂のこと、会長の言葉、共犯者。


そして——昨日の出来事。


夢百合姉妹の件で、時間を使った。けれど、必要だった。


あれは、必要な時間だった。


それでも——


「……」


間に合うのか、という焦りだけは消えない。


「……真守くん?」


「……ああ」


呼ばれて、少し遅れて返事をする。


「今日も、生徒会?」


「……そうなるかな」


短く答える。


「……」


白ヶ崎が、少しだけ考えるような間を置く。


「無理しないでね」


それだけ言う。


「……」


小さく頷く。

それ以上は、何も言わなかった。


教室には寄らなかった。そのまま、足は自然と生徒会室へ向かっていた。


「……」


廊下を歩く。


足音がやけに響く気がする。


考えがまとまらない。整理しようとするほど、余計に絡まる。


「……」


扉の前で、足が止まる。


一度、息を吐く。


それから——


ドアを開けた。


「おはようございます」


中から声が返ってくる。


「……」


視線を向ける。


そこにいたのは——


葵だった。


痛々しい傷はまだ残っていたが、そこには前から知っている夢百合葵がいた。


「……楽々浦くん、おはよう」


いつもの笑顔、いつもの声。

距離感も、全部“普通”だった。


「……おはようございます」


少しだけ、間を置いて返す。


「……」


違和感は、ない。


ないはずなのに。

どこか、引っかかる。


「……」


「どうしたの?」


葵が首を傾げる。


「昨日の疲れが残ってる?」


「……いや」


首を振る。


「……少し、話いいですか」


「うん、いいよ」


あっさりと頷く。


そのまま、副会長スペースへ移動する。


椅子に座り、向かい合う。

距離は、適切だった。昨日までの“近すぎる距離”は、そこにはない。


「……」


そのことに、少しだけ安心する自分がいる。


「……何かあった?」


葵が、静かに聞く。


その声音は落ち着いていて、変な圧もない。


「……」


言葉を選ぶ。


そして——


話し始める。


赤坂のこと、会長から言われたこと、退学処分の話。


そして——


共犯者がいる可能性。


「……」


全部を順番に、できるだけ正確に、感情は混ぜずに、事実だけを並べる。


「……」


葵は、一度も遮らなかった。

ただ、静かに聞いている。


「……」


相槌も、必要最低限。


「そうなんだ」


「……うん」


その程度。


「……」


話し終える。


少しだけ、息が重くなる。


「……」


沈黙が落ちる。


葵は、すぐに何かを言わない。少しだけ考えるように、視線を落とす。


その間が、やけに長く感じる。


「……」


やがて、顔を上げる。


「……なるほどね」


小さく言う。


その反応は、あまりにも落ち着いていた。


「……」


「共犯者、か」


ぽつりと呟く。


「……」


「確かに、それなら辻褄は合うかもね」


言っていることは、正しい。ちゃんと状況を理解している。


「……」


それなのに——


どこか、“外側”にいる感じがする。


違和感があるけれど、言語化できない。


「どうするの?」


葵が、こちらを見る。


「このまま探す?」


少しだけ迷う。


「……そうですね」


頷く。


「時間もないですし」


「……」


「最後、神楽坂先輩のところへ、いくしかないかなって」


「……」


葵が、静かに頷く。


また、少しだけ沈黙。

その空気の中で、ふと気づく。


「……」


さっきから。


葵の反応が——


“綺麗すぎる”。


無駄がなく、引っかかりもない。


まるで——


用意された答えをなぞっているみたいに。


「……」


「……どうかした?」


視線に気づいたのか、葵が問いかける。


少しだけ迷う。


それでも——


口を開く。


「……葵先輩」


「うん?」


「……さっきから、その」


言葉を探す。


「……妙に落ち着いてますね」


「……」


一瞬の間。


ほんのわずかな沈黙。


「……そう?」


葵が、首を傾げる。


「……普通じゃない?」


「……」


「こういう時こそ、冷静に考えないと」


穏やかに言う。


「……」


間違ってはいない。

正しい。正しすぎる。


「……」


違和感が、消えない。


そのまま、もう一つだけ踏み込む。


「……この話、初めて聞きましたよね」


「……」


また、ほんの少しだけ間が空く。


「うん」


すぐに答える。


「初めてだよ」


「……」


即答。


迷いがない。


「……」


そのはずなのに——


何かが、引っかかる。


「……」


沈黙。その中で葵が、ふっと息を吐く。


「……ねえ」


静かに、声を落とす。


「……」


「楽々浦くん」


「……はい」


「……」


一拍。


ほんの少しだけ、視線を逸らす。


それから——


戻す。


「……それ」


小さく、言う。


「……」


「私なんだよね」

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