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俺×恋=0になります。  作者: 光黒猫
第四章 俺×近くの存在=近すぎてわかりません。〜姉弟姉妹編〜
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166話 俺×衝突=壊れたものは止められますか。

倒れて力が入らない。この部屋に来てから何時間経ったのだろうか。

そんなことを思いながら、まだ意識がはっきりと戻らない真守。まるで夢の中のような感覚に陥る。


夢ならよかったのに。


もうこのまま、ずっとこの部屋にいることになるのだろうか、諦めかけていたその時。


扉が、乱暴に開いた。


「まーくん!!」


その声が響いた瞬間、空気が一気に裂ける。


「……っ」


真希那だった。


状況を一瞬で把握する。


倒れている真守。

拘束の跡が残る葵。

そして——その前に立つ奏。


「……何してんの」


低い声。


次の瞬間には、動いていた。


「どけ」


迷いなく、奏を突き飛ばす。


「っ!」


体勢を崩した隙に、葵の元へ駆け寄る。


「大丈夫!?」


手早く縄を解く。


「……っ、真希那さん……」


「喋んないで、今はいい」


短く言い切る。


解放された葵の体が崩れかけるのを支えながら、真希那はゆっくりと立ち上がる。


そして、そのまま奏へ向き直る。


「……」


視線がぶつかる。


「……何してんの」


今度は、ほんの少しだけ怒りが混ざる。


「……」


奏は何も言わない。


ただ見ている。その視線は、もうさっきまでの余裕じゃない。どこか揺れていた。


「……」


その時だった。


「……っ」


床に倒れていた真守の指が、わずかに動く。


「……」


目が開く。


ぼやけた視界の中で、最初に映ったのは——


「……真希ねぇ……?」


「……っ!!」


その一言で、真希那の表情が崩れる。


「まーくん!!」


一気に駆け寄り、抱きしめる。


「よかった……ほんとに……」


声が震えていた。


「……」


その瞬間だった。


「——邪魔」


低い声。


背後で、奏が動く。


スタンドを振りかぶる。


狙いは——真希那。


「……っ!」


振り下ろされる。


「——ぐっ!!」


鈍い音。


頭部に直撃する。

血が、流れる。


「……っ、真希ねぇ!!」


真守の意識が一気に引き戻される。


「……」


真希那は、一瞬だけ揺れる。


けれど——倒れない。


ゆっくりと顔を上げる。

血が頬を伝っているが、その目が変わる。


「……はあ」


小さく息を吐く。


「……その程度かよ」


低く言う。


次の瞬間、踏み込み、一気に距離を詰める。


「っ!」


奏が反応する前に腕を掴む。


体勢を崩し、そのまま床へ叩きつける。


「っ!」


上から押さえ込む。


完全な制圧。


「……暴れんな」


手に力はある。けれど、殴らない。

ただ、止めるだけ。


「……っ」


奏がもがくけれど、徐々に弱くなる。


「……」


真希那は少しだけ力を緩める。

逃がさないように、でも、締めつけないようにもする。


「……無理してるでしょ」


ぽつりと、言う。


「……」


「強いお姉ちゃんやるの」


静かに続ける。


「……」


「分かるよ、私も姉やってるから」


その言葉で、空気が少し揺れる。


「……」


「でもさ」


少し間を置く。


言葉を選ぶ。


「あなたの妹は——葵ちゃんは」


まっすぐに見る。


「たった一人しかいない存在なんだよ?」


「……」


「どんなことがあっても、傷つけちゃダメ」


その一言が、静かに落ちる。


強くもなく、優しくもなく。

ただ、真っ直ぐだった。


「……っ」


奏の呼吸が乱れる。


「……」


「それ壊したらさ、もう戻らないから」


「……やめて」


小さく、奏が言う。


「やめてよ……」


「……」


その時だった。


「……真希那さん」


葵が、前に出る。


まだふらつきながらも、しっかりと立っている。


「……少しだけ」


「……」


真希那は、少しだけ考えて——手を離す。


完全には離さない。けれど、葵が入れる距離を作る。


「……」


葵が、奏の前に立つ。


まっすぐに、見る。


「……ごめんなさい」


はっきりと、言う。


「……」


「私、お姉ちゃんを追い込んでた。気づいてなかった。無意識で、やってた」


「……」


「守られてるのに……それに甘えてた」


「……」


「……ごめんなさい」


もう一度。


逃げない目で、言う。


「……」


静寂。


「……今さらかよ」


かすれた声。


「……遅いんだよ」


「……」


葵は、言い返さない。


ただ見ている。


「……」


その視線に、奏の呼吸が崩れる。


「……っ」


涙が落ちる。


「……」


「……ごめん」


ぽつりと、零れる。


「……ごめん、葵」


そのまま、力が抜ける。


抵抗が消える。

完全に——崩れる。


「……」


真希那が、ゆっくりと手を離す。もう抑える必要はない。


葵が、そっと近づく。

言葉はいらなかった。


ただ、二人とも泣いていた。


その光景を、真守はただ見ていた。


何も言えない。それでも——終わったことだけは、分かった。


「……まーくん」


声が近づく。


振り返る。真希那が、そばにいた。

そのまま、抱きしめられる。


「……っ」


「無事でよかった……」


「……」


少し間を置いて、言う。


「……離れろよ」


「えー」


少しだけ笑う。


「これも一つの姉弟の形ってことで!」


「……」


一瞬、考える。


それから、小さく息を吐く。


「……まあ、今日だけはありにしとく」


その一言で、空気がほんの少しだけ緩んだ。


嵐は、過ぎていた。


けれど——


確かに、何かが変わっていた。

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