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俺×恋=0になります。  作者: 光黒猫
第四章 俺×近くの存在=近すぎてわかりません。〜姉弟姉妹編〜
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157話 俺×独り言=聞いてはいけないものでした。

夜の公園は、思っていたよりも静かだった。


昼間の喧騒が嘘みたいに消えていて、街灯の光だけがぼんやりと地面を照らしている。風も弱く、音がない分だけ、自分の足音がやけに大きく感じられた。


「……」


来るべきじゃなかったかもしれない。


そんな考えが、一瞬だけ頭をよぎる。それでも足は止まらない。

赤坂のこと、タイムリミット、共犯者。全部が絡み合って、立ち止まる余裕なんてなかった。


「……葵先輩」


小さく呼ぶ。


その声に反応するように、ベンチに座っていた影がゆっくりと顔を上げた。


「……あ、真守」


葵だった。


「……早いですね」


「うん」


短く頷く。


声はいつも通り。

少なくとも、表面上は。


「……」


少しだけ安心する。けれど、胸の奥に残る違和感は消えない。


「……今日は学校、休んでましたよね」


自然とそう聞いていた。


葵は少しだけ視線を落とす。


「……ちょっとね」


それから、ため息をつくように続ける。


「姉妹喧嘩しちゃって」


「……」


「もう最悪でさ」


苦笑する。


「顔も見たくなくて」


「……そうだったんですか」


「うん」


軽く頷く。


「それでイライラして、寝れなくて」


「……」


「そのまま気持ち悪くなって、休んだ」


内容としては、理解できる。


むしろ自然だ。


でも——


どこか、引っかかる。


「……」


沈黙が落ちる。


その間に、葵が立ち上がる。


そして——


一歩、距離を詰めてくる。


近い。


思っていたよりも、ずっと。


「……」


無意識なのか、それとも——


判断がつかない。


「……あの」


少しだけ距離を取ろうとする。


けれど葵も、自然に距離を詰めてくる。


逃げ場がない。


「……それで」


無理やり話を戻す。


「今日は、少し聞きたいことがあって」


「うん」


葵は頷く。


「いいよ、なんでも」


その言い方が、少しだけ重い。


「……赤坂先輩の件なんですけど」


真守は本題に入る。


「タイムリミットが決まりました」


「……」


「文化祭までに、共犯者を見つけないといけないんです」


「……そうなんだ」


反応は薄い。


「……」


「それで」


続ける。


「今の状況だと、自分一人じゃ厳しくて」


「……うん」


「だから、葵先輩の意見を——」


そこまで言いかけて、言葉を止める。


視線を感じた。


さっきよりも、ずっと強い。


「……」


葵が、じっとこちらを見ている。


逃げ場のない視線。


「……どうしました」


思わず聞く。


「……真守ってさ」


葵がぽつりと言う。


「ちゃんと、私のこと見てる?」


「……え」


意味が分からない。


「……どういう」


「最近さ」


少しだけ首を傾ける。


「他のことばっかり考えてない?」


「……」


言葉に詰まる。


確かに、そうだった。


「……」


何も言えない。


その沈黙を、葵はじっと見ていた。


それから——


ふっと視線を逸らす。

どこか遠くを見るように。


そして——


「……ほんと、邪魔なんだよね」


小さく呟く。


「……え」


聞き返す前に、言葉が続く。


「……いなくなればいいのに」


「……」


空気が変わる。


さっきまでの空気とは、明らかに違う。


「……死ねばいいのに」


「……っ」


息が止まる。


声は小さい。淡々としている。


それなのに——


異様に重い。


「……」


誰に向けた言葉なのか。考えるより先に、頭に浮かぶ。


——奏。


さっきの話。姉妹喧嘩。


「……」


真守の中で、繋がってしまう。


「……まさか」


その時だった。


「……あ」


葵が小さく声を漏らす。


「ごめん」


すぐに笑う。


「今のなし」


軽く手を振る。


「ちょっとイライラしてただけだから」


「……」


さっきまでの空気が、嘘みたいに消えていた。


「……」


何も言えない。


「……それで?」


葵がいつもの調子で言う。


「話、続けて」


「……」


頭が追いつかない。


けれど——


止まるわけにはいかない。


真守は無理やり思考を戻す。それでも、心のどこかで理解していた。


今のは——普通じゃない。


けれど、その違和感の正体には、まだ辿り着けない。

ただ一つだけ、はっきりと残っている。


「……」


——死ねばいいのに。


その言葉だけが、強く、頭に残っていた。

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