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俺×恋=0になります。  作者: 光黒猫
第四章 俺×近くの存在=近すぎてわかりません。〜姉弟姉妹編〜
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151話 俺×推理=信じるものを間違えそうです。

昨日の騒がしさが嘘みたいに、廊下は静かで、いつも通りの学園の朝が広がっている。

けれど、その“いつも通り”がどこか現実味を持たないのは、自分の中だけがまだ昨日から抜け出せていないからだと、なんとなく分かっていた。


「……」


玄関を出て、歩き出す。


隣には白ヶ崎がいる。それだけで、少しだけ呼吸が楽になる。


「今日、生徒会行くの?」


白ヶ崎が前を向いたまま聞いてくる。


「……うん」


短く返す。


「教室は?」


「後回しで」


赤坂のことが頭から離れない。


「……分かった」


白ヶ崎はそれ以上聞かなかった。


ただ、少しだけ距離を詰めてくる。


「気をつけて」


その一言だけが、静かに残る。


「……うん」


それだけ返して、校門へ向かう。


校門をくぐった瞬間、進路を変える。教室には向かわず、そのまま生徒会室へ。


足が自然と速くなる。


「……」


赤坂がいない。連絡も取れない。そして、退学処分。全部が繋がっているようで、まだ何も分かっていない。


「……急がないと」


誰にも聞こえないくらいの小さな声で呟く。

時間がない。それだけは、はっきりしていた。


生徒会室の前に立つ。


ドアノブに手をかける直前、ほんの一瞬だけ動きが止まる。


「……」


葵の顔が浮かぶ。昨日のあの距離、あの目。


「……」


考えるな、と自分に言い聞かせる。


ドアを開ける。


「——真守!」


中に入った瞬間、声が飛んできた。


視線を上げるよりも早く、葵がこちらへ駆け寄ってくる。

距離が、一気に詰まる。


「……おはようございます」


反射的に、少しだけ目を逸らしながら返す。


「おはよう!」


葵はいつも通り、明るく笑う。


「来てくれたんだね」


「……はい」


短く返す。


「犯人、探しましょうか」


できるだけ平静を装って言う。


葵が一瞬だけこちらを見て、それから小さく頷いた。


「うん」


その笑顔は、いつも通りに見える。


けれど——


「……」


ほんの少しだけ、何かが違う気がした。


その違和感を深く考える前に、真守は視線を逸らし、副会長スペースへと歩き出す。


葵も当然のようにその後ろについてくる。振り返ることはしなかったが、その距離の近さだけははっきりと分かった。


席に着き、机に手を置く。


「……」


頭の中で整理する。


共犯者は、生徒会メンバーの中にいる。

つまり——ここにいる誰か。


「……」


まず思い浮かぶのは神楽坂先輩。


情報を持っている。行動が読めない。けれど、それだけで疑うのは危険だ。


「……」


今は誰も信用するな。


会長の言葉が、頭の中で反芻される。


「……」


そして、葵。


協力者として指名されている。それは安心材料なのか、それとも——


「……」


分からない。判断材料が足りない。考えれば考えるほど、足元が曖昧になる。


その時だった。


「真守」


葵が声をかけてくる。


「一人一人、見ていかない?」


「……どういうことですか」


「仕事してるところに行って、動き見て」


自然な流れで言う。


「ついでに話もして、アリバイ確認する」


「……」


合理的だった。


今の状況では、それが一番確実だ。


「……いいですね」


頷く。


「じゃあ行こ」


葵が立ち上がる。


迷いがない。


その動きの速さに、ほんの少しだけ違和感を覚えながらも、真守はそれを表に出さずに後を追った。


最初に向かったのは庶務スペースだった。


中では三宝と山影が向かい合い、資料を広げながら話し合っている。


「——こいつぁ決まりじゃろ」


三宝の低い声。


「はい。でもこっちはまだ裏取り必要っすね」


山影が返す。


机の上の資料には、制裁対象の名前が並んでいる。


「……」


いつもの光景だった。


「何の用だ」


山影が顔を上げ、鋭く言う。


「今忙しいのだが」


その空気を気にする様子もなく、葵が一歩前に出る。


「赤坂って人、知ってる?」


「……は?」


あまりにも唐突だった。


「おい……」


思わず声が出る。


予定ではなかった。もっと段階を踏むつもりだったのに。


「仕事の邪魔すんな」


山影が強く言う。


「今それどころじゃない」


「関係あるから聞いてる」


葵は一歩も引かない。


視線も逸らさない。


「……」


空気が一瞬、張り詰める。


「……ちっ」


山影が舌打ちする。


「赤坂?クラスメイトだから顔と名前は知ってる」


ぶっきらぼうに言う。


「それ以上は知らない」


三宝も続く。


「わいも同じじゃ」


短く答える。


「顔と名前くらいじゃな」


それ以上の情報は出てこなかった。


「……」


真守は小さく頷く。


この二人が関わっている可能性は低い。少なくとも、この件では。


「お邪魔しました」


そう言って、その場を離れる。


廊下に出ると、さっきまでの緊張感が少しだけ抜ける。


そのまま二人は再び副会長スペースへ戻った。

席に着くと同時に、葵が口を開く。


「今の感じだと、あの二人は違うね」


「……そうですね」


関わりが薄すぎる。


「で」


葵が少しだけ間を置く。


「一番怪しいのは、黒ヶ峰」


「……」


真守も同じ結論だった。


「……自分もそう思います」


赤坂と接点がありそうな人物。そして、動きが読めない。


「あと、神楽坂先輩」


葵が続ける。


「……はい」


そこも一致していた。


「この二人は最後に回そ」


葵が言う。


「一人ずつ潰していって、最後に当たる」


「……効率的ですね」


「でしょ?」


葵が笑う。


その笑顔を見た瞬間——


「……」


また、違和感が浮かぶ。


ほんのわずか。でも、確かに。


「……」


それを押し込める。


今は、それを考えている場合じゃない。


「じゃあ次」


葵が立ち上がる。


「会計、行こ」


「……はい」


真守も立ち上がる。


向かう先は坂下のもと。


「……」


進みながら、思う。


本当に、これでいいのか。


けれど——止まる理由は、どこにもなかった。

そのまま二人は、次の場所へと足を向けた。

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