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俺×恋=0になります。  作者: 光黒猫
第四章 俺×近くの存在=近すぎてわかりません。〜姉弟姉妹編〜
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150話 俺×再構築=騒がしくても悪くないです。

リビングに、カレーの匂いが広がっていた。


鍋の中でゆっくりと煮えているそれを見ながら、真守は小さく息を吐く。さっきまでの重たい空気が、少しだけ遠ざかっている気がした。


「……カレーか」


後ろから声。


振り返ると、真希那が腕を組んで立っていた。


「まーくん、料理してる」


「それ今さら?」


「いや、ちゃんと見たことなかったから」


妙に感心した顔をしている。


「すごいじゃん」


「カレーだけな」


「いやでもすごいよ?火使ってるし」


「小学生みたいな褒め方やめろ」


そのやり取りを横で聞きながら、白ヶ崎が椅子に座る。


「……またカレー」


ぽつりと呟く。


「嫌なのか?」


「嫌じゃないけど……また?」


「これしか作れないから我慢してくれ」


「堂々と言うことじゃない」


「事実だろ」


「……」


白ヶ崎が頬を少し膨らませる。それを見て、真希那がぴくっと反応した。


「ちょっと」


「……なに」


「その顔なに」


「別に」


「まーくんが作ってくれてるのにその反応はないでしょ」


「文句言ってるわけじゃないし」


「同じだから」


「違うし」


「感謝しなよ」


「してるって」


「じゃあその顔やめなよ」


「無理」


「なんで!?」


また始まった。


「……」


真守は鍋をかき混ぜながらため息をつく。


「うるさいな……」


でも、その騒がしさが少しだけ心地よかった。




「いただきます」


三人でテーブルを囲む。


スプーンが皿に当たる音が、妙に落ち着く。


「……」


白ヶ崎が一口食べる。


「……おいしい」


「だろ」


「悔しいけど」


「なんで悔しいんだよ」


「またカレーなのに」


「そこ引っ張るな」


「でも美味しいのは事実」


「じゃあいいだろ」


「いいけど」


「どっちだよ」


真希那も一口食べる。


「うん、普通に美味しい」


「“普通に”いらねぇ」


「でも普通に美味しいんだもん」


「褒めてんのかそれ」


「褒めてる!」


くだらない会話が続く。

それだけで、少しだけ呼吸が楽になる。


食事を終え、それぞれシャワーを浴びる。時間はすっかり夜だった。


「……じゃあさ」


真希那が白ヶ崎を見る。


「咲音ちゃん、今日はありがとね」


「……」


「もう私帰ってきたし、大丈夫だから」


軽く笑いながら言う。


「帰っていいよ?」


「帰らないけど」


即答だった。


「は?」


「ずっと一緒にいたし」


「それは知ってるけど」


「これからも一緒にいるし」


「え?」


「一緒に寝るし」


「ちょっと待って?」


真希那が固まる。


「それは聞いてない」


「今言った」


「いやいやいや」


首を振る。


「一緒にいてくれたのはありがたいけど、もう私いるから必要ないよ?」


「必要あるけど」


「ないって」


「あるって」


「ない!」


「ある!」


バチバチだった。


「……」


真守はソファで頭を抱える。


「お前らほんとやめろ……」


止まらない。


「そんなにまーくんと一緒に寝たいの?」


真希那がニヤつく。


「……っ」


白ヶ崎が一瞬だけ言葉に詰まる。


「別に」


そっぽを向く。


「仕方なく一緒に寝てただけだし」


「へぇ?」


「でも」


少しだけ間を置く。


「真守くんが一緒に寝たいなら、いいけど」


「なんで俺基準なんだよ」


「……」


ちらっと見る。


その目がちょっとだけ真剣で、余計に困る。


「……はぁ」


真守は息を吐く。


「真希ねぇに見られるの恥ずかしいから」


「うん」


「今日からは別々に寝る」


「……え」


白ヶ崎の顔が一気に曇る。

分かりやすくショック受けていた。


「……そんなに嫌?」


「そういう問題じゃない」


「じゃあいいじゃん」


「よくない」


「……」


完全に落ち込んでいる。


真希那がくすっと笑う。


「じゃあ代わりに私が隣で寝るから安心して」


「絶対入るな」


即答だった。


「え、なんで!?」


「なんでもだ」


「理不尽すぎる!」


「お前が言うな!」


強引に話を終わらせる。


「とにかく今日は全員別々」


そう言うと、二人は不貞腐れた顔をして各自の部屋に入っていった。

さっきの騒がしが嘘みたいに、自室では静かな空間が広がっていた。そして、そのまま眠りについた。


夜中に目が覚める。部屋は相変わらず静かだった。


「……トイレ」


ぼんやりしたまま部屋を出る。


廊下は暗く、誰の気配もない。

用を済ませて戻り、ベッドに入る。


「……」


目を閉じる。


その時。


――カチャ


小さな音。


「……?」


ドアが開く。


「……真守くん」


白ヶ崎だった。


「どうした」


「……寝れない」


「は?」


「無理」


ふらっと近づいてくる。そのままベッドに入り込んできた。


「おい」


「……」


返事がない。かなり眠そうだった。


「……真守くんいないと寝れない」


ぽつりと呟く。


「……」


完全に寝ぼけてる。距離感が壊れている。


「……お前な」


「……」


もう反応はない。


そのまま体を寄せてくる。安心しきった顔。


「……はぁ」


少しだけ頬が熱くなる。


「……仕方ないな」


小さく呟く。


そのまま目を閉じる。

不思議と、すぐ眠れた。




「え?」


朝。


静寂を破る声。


「……は?」


次の瞬間。


「ええええええええええええええええええええ!?」


飛び起きる。


隣、白ヶ崎。

前を見る。


「……」


真希那が固まっている。


「……まーくん」


震えた声。


「なにしてるの?」


「……」


「なんで一緒に寝てるの?」


「……」


「私、いらない子?」


「飛躍しすぎだろ!」


「うわああああああああああああん!!」


泣いた。


「朝からうるせぇ!」


「だってぇぇぇ……!」


白ヶ崎が目を覚ます。


「……ん」


状況理解。


「……あ」


目が合う。


「……違う」


「何が!?」


「不可抗力」


「なるかぁぁぁ!」


「寝ぼけてた」


「じゃあ仕方ないってなるわけないでしょ!」


「なるわけあるでしょ」


「ならないわよぉぉぉ!」


カオスだった。


「……はぁ」


真守は深くため息をつく。


騒がしい、うるさい、面倒くさい。


でも——


少しだけ、笑いそうになった。

こんな朝も、悪くないと思ってしまった自分に、少しだけ呆れる。

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