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俺×恋=0になります。  作者: 黒猫
第一章 俺×春=新しい出会いが待っています。
15/16

14話 俺×生徒会室=自己紹介してもらいます。1

《メッセージ 一件》


“ごめんねまー君!実はあの遅刻ってのは嘘で、少し驚かせたくてお姉ちゃんが腕時計の時間を一時間ずらしちゃいました〜♪♡”


真希那のメッセージが来てから、真守は何度もスマホ、教室の時計、自身につけている腕時計を順番に見る。


「やはり、俺の腕時計だけが……」


どうりで教室に人がいないわけだ。廊下や校門にも誰もいないのに、遅刻のはずがない。あのバカ姉、弟の腕時計の時間と現時刻を一時間もずらすイタズラを普通するかね。


「まぁ、結果オーライということで、本でも読みますか……」


教室で一人だからか、気兼ねなく独り言をつぶやく真守。ぼーっと、時間が過ぎるのを待ち、一人の世界に没頭する。


「この小説面白いな、今回の衝動買いは成功だったな」


頭で考えていることも口からダダ漏れている。そんな気の抜けた真守に一つの災難がやってくるのだった。


机に足を乗せ、背もたれには頭がずり落ちるほど、普通の人から見たらとてもだらしない格好で本を読んでいる。


そんな時、教室のドアが突然開かれた。


「失礼します、楽々浦君はいますか!」


「は、はい?」


急に名前を呼ばれ、一人の世界に入っていたのを慌てて現実に戻そうとし、姿勢を正す。


「なんだ、君しかいないじゃないか」


朝早くから真守を訪ねる。よっぽどの用事ではない限り、そんな無駄な体力を消費するようなことはしないだろう。


よっぽどの用事ね……用事、用事、そんな用事あったか?


「そんな、緊張しないでくれ、僕が直々に生徒会室絵案内をしてあげるからついて来なよ」


「生徒会……?」


あぁ、生徒会ね。たしか昨日、会長と話し合う約束があったような……って、


「か、か、会長!?」


「あはは、楽々浦君、僕って気づかないで返事をしていたのかい?」


「も、も、申し訳ございません!とんでもない無礼を働いてしまいました!」


一人の世界から現実に戻るまでの間、気が飛んでしまっていた真守は返事をした後、ずっと考え事をしていたため会長と確認する暇もなく会話を続けてしまっていた。


「あはは、無礼をされたとは僕は思ってないから大丈夫だよ。まぁ、そんなことより、君のB組はまとまりがないね」


「は、はぁ……まとまりがないと言いますと?」


率直な疑問。会長はその疑問に応えるべく、蛇行した机を一つ一つ整えながら説明をする。


「まず、B組なら学校が始まる30分前にはみんな出席するべきだ。それと、この机を見る限りだと、もうこのクラスではいじめが始まろうとしているね」


30分も前に登校が当たり前かよ……早過ぎるだろと言いたいところだが、最後の一言は本当のことなのか?だとしたら100%俺じゃないか?


「いじめですか?」


「そうそう、このクラスはとてもわかりすい。だからか、誰がいじめられるのまでわかっちゃうよ」


ふっ、会長、当の本人を前にしてそんなこと言っていいのですか?それはそうとして……そうか、俺はこのあといじめられる運命なのか……


まだ誰がいじめられるのかを聞いていないのに、一人勝手に落胆する。その真守の姿を見かねたのか、会長が慌てて訂正する。


「一つ言っておくと、楽々浦君ではないから安心してくれ」


「えっ……?」


会長が急いで発言した言葉は、真守の心を落ち着かせるには十分な一言だった。


だがしかし、俺がいじめられることがないのなら、一体誰が……


「君の言いたいことは分かるが、今はその話をする必要はないよ」


くっ……この会長はなんでもお見通しかよ!


「で、でも、俺のクラスです。そんな、いじめなんて見過ごせません!」


見せかけの正義。こんな場面でありがちなセリフを吐く。もちろん、そんなことは会長にはお見通しだった


「君は本当にその子を救いたいのかい?ただ、誰よりも早くその子がいじめられるのを知りたくて、周りより優越感を得たいだけなんじゃないか?」


「うっ……」


見事的中され言葉を失う。


今、俺を側から見たらとんでもなくかっこ悪いだろう。こんなの最低なゲス野郎が考えることなのだから。


「まぁ、この話はまた今度詳しくするとして、今は君を生徒会室に連れて行くことが最優先だから、そっちを先に済ませよう」


「……」


見事論破されてからか、真守は一言も発することなく、会長の後ろをとぼとぼとついて行く。


会長が生徒会室らしきドアの前で止まる。そのドアを見る限り、内装が広く、豪華なのは真守でも伺えるほどだった。


「よし、楽々浦君、準備はいいかい?」


真守の気を和らげるためなのか、会長は優しく問いかけ、手を差し伸べる。


うっ……こんな、手を取ってしまったら完全にホモ野郎だと間違われるじゃないか。


「はい、自分は大丈夫なので、ドアを開けてもいいでしょうか?」


会長の差し伸べた手を無視し、話を進めようとする。


ここは弱気になってはダメだ。あくまで俺は、まだ生徒会を断る気でいるんだ。


強気、強気!!


「本当に楽々浦君はわかりやすいな」


会長に出会ってから何回も聞く言葉。そんな言葉を真守に向けながらドアを開ける。


「え、えっ……?」


ドアが開いた瞬間。


目の前に広がっていたのはとても神々しく、それは、ヴェルサイユを彷彿とさせる宮殿をモチーフにしたであろう作りになっており、硝子の長机が立派に一台置いてあった。


「学校の中にこんな場所があったなんて……」


生徒会の役職ごとに席も用意してあり、恐らく生徒会の人たち一人一人が使うのであろう空間も別に作られていた。


「ようこそ、我が、生徒会室へ!!」


会長はおもむろに両手を広げ、真守を歓迎する。


会長の一言で席に座っていた生徒たちが立ち上がり、真守のいるところへ歩み寄る。


「紹介しよう、この子が生徒会新メンバーの楽々浦真守君だ!」


「……!?」


勝手に加入してしまっていることにツッコミが入れられない。現実離れしすぎた光景に戸惑いを隠せないでいた。


「あれ、楽々浦君、いつものように否定してこないのかい?」


強引に話を進めたはずの会長の方がペースを崩してしまう。


「あ、あの、ここは本当に学校なんですか?」


「えっ、あ、そうだけど」


聞かなくても分かる質問を前に、会長は詰まりながら答えを言う。すると、そんな真守を見てられないのか、一人の女子生徒が前に出た。


「会長、本当にこの人が次期生徒会長に相応しいのでしょうか?」


ロングヘアーに髪をかきあげた先輩らしき女子生徒が、真守に指をさす。


「マコト君、まだ楽々浦君をちゃんと知ろうとしないでその発言はよろしくないな」


「くっ……会長、申し訳ございません」


会長に注意され、その女子生徒は悔しそうな顔を浮かべながら元の立っていた位置に大人しく戻った。


「あ、あの、俺、こんなところいちゃいけないと思うので、教室に戻りますね……」


異質な空間。当たり前だと思いたくない現実。こんな人たちと肩を並べて、まともに生徒会の仕事ができる自信がないと真守は逃げることを決意した。


「おっと、それはダメだよ!」


会長自らが真守の手を引っ張る。


「か、会長……俺、こんなとこにいたら気が狂っちゃいそうですよ」


「あはは、そんなこと言って、君はこの場から逃げたいだけだろ?」


引き止めた腕に近づき、顔を近づけながら真守に優しく問いかける。


「か、か、か、会長!?」


顔が近すぎたのか、真守は意味もなく赤面してしまう。


「今から生徒会のメンバーを紹介するから、それまではここにいてくれないかな?」


手首を掴んでいた手を肩に乗せる。このまま抱き寄せてしまうのではないかと思わせるほどの雰囲気と距離感。


待ってくれ、俺が女の子だったら即、会長にオチていただろう……しかし俺は男だ!オトコの娘でもなんでもないぞ!!


「あ、あの、会長……顔が近いです……」


「あっ、すまないね、困っている顔の楽々浦君が可愛くてね、ついいじめてしまった」


この人、本気で言っているのだろうか……


「それじゃ、気を取り直して、僕の率いる生徒会メンバーを紹介するよ!」


会長はそう言うと、列の端っこに立っていた巨漢を前に押し出した。

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