表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺×恋=0になります。  作者: 光黒猫
第四章 俺×近くの存在=近すぎてわかりません。〜姉弟姉妹編〜
PR
139/228

138話 俺×勘違い=状況がややこしすぎます。

放課後の教室は、いつもより少し騒がしかった。


「……」


窓の外を見る。夕方の光。一日が終わる空気。


今日も、色々あった。頭の中は、まだ完全には整理できていない。


それでも——


「……」


少しずつ、前に進んでいる感覚はあった。


その時だった。


「……楽々浦くん」


教室の入り口から声がかかる。


振り返る。


そこにいたのは——葵だった。


「……葵先輩」


軽く頭を下げる。


教室の空気が、少しだけ変わる。


「……え、なにあれ」

「先輩じゃね?」

「呼びに来てる?」


周りがざわつく。


「……ちょっといい?」


葵が、いつも通りの調子で言う。


「はい」


立ち上がる。


そのまま近づく。


「どうかしましたか?」


「うん」


あっさり頷く。


「私も、その、協力したい」


「……」


一瞬、言葉が止まる。


“協力したい”。


真守にしか分からない言い方。


だからこそ——


「え、なに?」

「秘密の話?」

「なにそれ」


周りの勘違いが一気に加速する。


「ちょっと待っ——」


言いかけた、その時だった。


「それなら私もいます」


横から白ヶ崎が割って入る。


「……は?」


葵がそっちを見る。


「何?」


「協力するなら、私も関係あります」


「いや、別に独占してないけど?」


「独占してるつもりはなくても、そう見えます」


「見えないでしょ」


「見えます」


「見えないって」


完全に、噛み合っていない。


しかも——


二人とも、完全に自分の世界に入っている。


「……」


周りのざわつきが、さらに大きくなる。


「なにあれ」

「修羅場?」

「楽々浦やばくね?」


「……」


やばい。


普通にやばい。


「おいおい」


神宮丸がニヤニヤしながら近づいてくる。


「楽々浦、お前」


肩を叩いてくる。


「モテモテじゃん」


「違ぇよ」


「いやいやどう見てもだろ!」


「違うって言ってんだろ!」


「ひゅーひゅー!」


周りからも冷やかしが飛ぶ。


「……」


視線が痛い。めちゃくちゃ痛い。


「……もういい!」


思わず声が出る。


「ちょっと来てください!」


葵と白ヶ崎の腕を軽く引く。


「え、ちょっ」

「なに?」


「いいから!」


そのまま教室を飛び出す。


「ひゅーー!!」


後ろから神宮丸の声。

完全に面白がっている。


「……」


廊下を歩く。


少し離れた空き教室に入り、ドアを閉める。


「……」


ようやく静かになる。


「……はぁ」


思わずため息が出る。


「ちょっと、何なんですか今の」


振り返る。


「急に来て、しかもあの言い方……」


「ごめん」


葵があっさり言う。


「いやごめんで済む話じゃ——」


「ちゃんと説明するから」


被せられる。


「……」


一瞬、言葉が止まる。


「……まず」


葵が白ヶ崎の方を見る。


「誤解させたならごめん」


素直だった。


「私は別に、何か取り合ってるつもりはない」


「……」


白ヶ崎が、少しだけ目を細める。


「ただ」


葵が続ける。


「楽々浦くんが関わってる件なら、放っておけない」


その言葉には、迷いがなかった。


「……」


白ヶ崎が、少しだけ息を吐く。


「……そういうことなら」


一歩引く。


「最初からそう言ってください」


「言ったつもりだったけど?」


「伝わってません」


「そっか」


「はい」


微妙にバチバチしている。


「……」


空気が、少し落ち着く。


「……それで」


今度は真守が口を開く。


「葵先輩」


少しだけ真面目な声になる。


「この件に関わったら」


一拍置く。


「普通の学園生活、送れなくなりますよ」


はっきりと言う。


「……」


葵は、少しも迷わなかった。


「関係ない」


即答だった。


「……」


「楽々浦くんがいない学園生活の方が、無理」


「……」


空気が、止まる。


「……え?」


思考が、一瞬遅れる。


その言葉の意味を理解する前に——


「は?」


白ヶ崎が反応する。


「ちょっと待ってください今の」


一歩前に出る。


「それどういう意味ですか?」


「そのままだけど?」


「告白ですか?」


「違うけど?」


「でもそう聞こえました」


「聞こえ方の問題でしょ」


「問題です」


顔が赤い。


分かりやすく赤い。


「ちょっと落ち着いて!」


真守が間に入る。


「話ずれてる!」


「ずれてない」


白ヶ崎が即答する。


「大事なとこなの!」


「違うだろ!」


「違わない!」


「そういうことじゃないって!」


またカオスになりかける。


「……はぁ」


もう一度、ため息。


「……とりあえず」


無理やり軌道修正する。


「葵先輩が協力するって話ですよね」


「うん」


「……」


少しだけ考える。


リスクはある。確実に。


「……」


それでも。


「……分かりました」


小さく頷く。


「無理はしないでください」


「しない」


即答だった。


「……」


白ヶ崎の方を見る。


「……」


少しだけ不満そうな顔。


「……分かりました」


渋々、頷く。


「ただし」


指を立てる。


「私も一緒です」


「はいはい」


葵が軽く流す。


「流さないでください」


「流してないって」


また始まりそうになる。


「……」


その時だった。


ガラッ


ドアが開く音。


三人同時に振り向く。

そこにいたのは——奏だった。


「……」


空気が、一瞬で変わる。さっきまでの空気が、全部消える。


「……」


奏は、ゆっくりと中に入ってくる。


その顔。


「……」


完全に、怒っていた。いや、それ以上。

鬼みたいな表情だった。


「……」


一直線に、真守の前まで来る。

距離が、ゼロになる。


「……私は」


低く、言う。


「許してないから」


その一言で——空気が、凍りついた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ