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俺×恋=0になります。  作者: 光黒猫
第四章 俺×近くの存在=近すぎてわかりません。〜姉弟姉妹編〜
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137話 俺×B組=少しだけ軽くなりました。

生徒会室を出たあとも、胸の奥に残る感覚は消えなかった。


重いわけじゃない。

けれど、確かに何かが変わってしまったという実感だけが、じわじわと残っている。


「……」


廊下を歩く。


足取りは、さっきよりも軽いはずなのに、どこか落ち着かない。


「……戻るか」


小さく呟いて、教室へ向かう。


扉の前で一瞬だけ立ち止まり、そのまま開けた。


「——お、来たじゃん」


入った瞬間、神宮丸がこちらに気づく。


「どこ行ってたんだよ」


「ちょっとな」


適当に返す。


「ちょっとってなんだよ、サボりか?」


「違ぇよ」


軽く言い返す。


そのやり取りが、妙に自然だった。


「あんた、うるさい」


横から白ヶ崎が口を挟む。


「戻ってきたばっかなんだから、少しは静かにしなさい」


「いや普通に聞いただけだろ!?」


「声がでかい」


「理不尽!」


いつものやり取り。


その空気に、ほんの少しだけ肩の力が抜ける。


席に座る。


「で?」


神宮丸が身を乗り出してくる。


「なんかあったのか?」


「……」


一瞬、言葉に詰まる。


祇園のこと。


会長の言葉。


全部が頭の中にある。


「この前の事件の件で——」


口に出しかけた、その時だった。


「はい、そこまで」


白ヶ崎がさらっと遮る。


「……は?」


思わずそっちを見る。


白ヶ崎は、何事もなかったかのように続ける。


「その話、今いい」


「いやでも——」


「いいの」


被せてくる。


「今はそういう空気じゃないでしょ」


「……」


言葉が止まる。


「重い話する顔してる」


さらっと言われる。


「……」


否定できない。


神宮丸がニヤッと笑う。


「確かに、なんか雰囲気違ぇな」


「あんたは黙ってなさい」


「ひでぇ!」


「……」


少しの沈黙。


でも、それも長くは続かない。


白ヶ崎が、わざとらしく軽い声で言う。


「そういえばさ」


急に話題を変える。


「今日の昼、何食べる?」


「は?」


神宮丸が素っ頓狂な声を出す。


「急すぎない!?」


「普通でしょ」


「いや今の流れからそれ!?」


「お腹空く時間だし」


「……まあ、そうだけど」


一瞬で空気が切り替わる。


「真守くんは?」


白ヶ崎がこっちを見る。


「何食べたい?」


「……」


少し考える。


さっきまでの重い思考が、ふっと遠のく。


「……なんでもいい」


「それ一番困るやつ」


即ツッコミが入る。


「じゃあカレー」


「昨日も食べたでしょ」


「じゃあラーメン」


「安直」


「うるせぇな」


軽く返す。


神宮丸が口を挟む。


「いや普通に学食の日替わり定食でよくね?」


「それはあり」


白ヶ崎があっさり乗る。


「え、そこはあっさり?」


「合理的だから」


「基準それなんだな……」


三人でわちゃわちゃする。


「……」


その流れの中で、ふと気づく。


さっきまで考えていたことが、少しだけ遠くなっている。


完全に消えたわけじゃない。


でも、今は——


「……」


無理に掘り下げなくていい。そんな感覚だった。


「よし、決まりな!」


神宮丸が立ち上がる。


「学食行くぞ!」


「仕切るな」


「いいだろ別に!」


「うるさい」


「扱いひどくね!?」


いつものやり取り。


「……」


自然と立ち上がる。


流れに乗る。それでいい気がした。

教室を出て、廊下を歩く。


「……」


隣で、白ヶ崎が少しだけ近づいてくる。


神宮丸には聞こえないくらいの距離で、ぽつりと小さく言う。


「……あとで聞くから」


「……」


一瞬だけ、そっちを見る。


白ヶ崎は前を向いたまま。


いつも通りの顔。


「……今はいい」


続けて、短く言う。


「普通でいて」


「……」


その言葉に、少しだけ息が抜ける。


「……」


小さく頷く。


それで十分だった。


前では神宮丸が騒いでいる。後ろでは日常が続いている。


「……」


その中に、自分もいる。


「……ま、いいか」


小さく呟く。


今はまだ——


それでいい気がした。

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