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俺×恋=0になります。  作者: 光黒猫
第四章 俺×近くの存在=近すぎてわかりません。〜姉弟姉妹編〜
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136話 俺×螺旋=もう戻れない場所にいます。

学校に戻る頃には、昼の光が少しだけ傾いていた。


「……」


見慣れた校門。


いつも通りのはずなのに、どこか違って見える。


足を進める。


教室には戻らず、そのまま生徒会室へ向かう。


頭の中では、さっきの会話が何度も繰り返されていた。


祇園の言葉。

結城のこと。


「誰かに指示されていた」


その一言が、ずっと離れない。


同じ構造。

同じ違和感。


点と点が繋がりそうで、まだ繋がらない。


生徒会室の前に立つ。


一度だけ、深呼吸をする。

そして、ドアを開けた。


「失礼します」


中はいつも通りだった。


葵がいて、アリスがいて、他のメンバーもそれぞれの作業をしている。


日常の延長線。


それなのに、少しだけ空気が違う気がした。


視線が一瞬だけ集まり、すぐに散る。何も変わっていないはずなのに、何かが変わっている。


その違和感だけが、静かに残る。


奥へ進む。


会長の席。

そこに、会長はいた。


「……お疲れ様です」


軽く頭を下げる。


会長はゆっくりと顔を上げた。


「やあ、楽々浦君」


その声は、いつも通り柔らかい。

それだけで、ほんの少しだけ緊張がほどける。


けれど——


「もう会ったんだね」


その一言で、思考が止まる。


祇園のことだと理解するまでに、わずかな時間が必要だった。


「……なんで」


自然と声が漏れる。


会長は微かに目を細めるだけで、特に驚いた様子はない。


「君なら行くと思っていたよ」


穏やかな口調だった。


決めつけではない。ただ、見透かしていたような言い方。


「……」


言葉が詰まる。


否定できない。


その通りだったからだ。


「……祇園先輩の話、少し聞きました」


気を取り直すように口を開く。


「……あの人」


一度、言葉を区切る。


「加害者っていうより……被害者にも見えました」


会長は、静かに頷いた。


「いい視点だね」


短く、そう言った。


「彼女は加害者であり、同時に巻き込まれた側でもある」


その言葉は、断定的なのに押し付けがましくなかった。


むしろ、すでに真守が辿り着きかけている答えを、そっと補強するような響きだった。


「……」


胸の奥で、何かがはまる。


祇園。結城。


バラバラだったものが、同じ線上に並び始める。


「……会長は」


自然と、次の言葉が出る。


「どこまで知ってるんですか」


その問いに、会長はすぐには答えなかった。


ただ、静かにこちらを見る。

逃げ場のない視線。けれど、それは威圧ではなかった。


試されている。そんな感覚だった。


「……」


ここから先に踏み込む覚悟があるのか。

その問いが、言葉にされる前に伝わってくる。


「……」


一瞬、迷う。


知れば戻れない。


そんな予感が、はっきりとあった。


それでも——視線を逸らさずに言う。


「……知りたいです」


その一言に、会長はわずかに笑った。


「いいね」


優しく、肯定するように。


「その覚悟があるなら——少しだけ教えよう」


前置きは、それだけだった。


多くは語らない。けれど、十分だった。

この件が個人の問題ではないこと。祇園も結城も、“同じ構造”の中にいること。


そして——


「君も、もうその外側にはいない」


静かに、言葉が落ちる。


「……」


心臓が、わずかに強く打つ。


否定はできなかった。


もう関わっている。もう巻き込まれている。それは、事実だった。


「怖いかい?」


会長が、ふとそんなことを聞く。


試すような声音ではない。ただ確認するように。


「……」


少しだけ、間を置く。


正直に考える。


「……怖いです」


小さく答える。


「でも」


続ける。


「止まる理由にはならないです」


その言葉を聞いて、会長はゆっくりと頷いた。


「それでいい」


短く、しかしはっきりと。


否定しない。


押し付けない。


ただ、背中を押す。


「無理に強くなる必要はない」


穏やかに続ける。


「怖いまま進めばいい」


その言葉が、妙にしっくりきた。


「……」


息を吐く。


胸の奥の重さが、ほんの少しだけ軽くなる。


「……」


もう戻れない。


その実感はある。


それでも——


「……やります」


小さく、呟く。


誰に向けたわけでもない言葉。けれど、それは確かな意思だった。


会長はそれ以上何も言わなかった。

ただ、静かに頷くだけ。それだけで十分だった。


「……」


生徒会室の空気は、変わらない。


けれど、自分の立っている場所だけが、少し変わっていた。


そんな感覚が、はっきりと残っていた。

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