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俺×恋=0になります。  作者: 光黒猫
第四章 俺×近くの存在=近すぎてわかりません。〜姉弟姉妹編〜
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129話 俺×同じ布団=距離が近すぎます。

シャワーを浴び終えたあと、部屋の空気が少しだけ変わっていた。


さっきまでの重さは、完全に消えたわけじゃない。けれど、水に流したみたいに、少しだけ輪郭がぼやけている。


「……」


タオルで髪を拭きながら、ベッドに腰を下ろす。


白ヶ崎も、自分の髪を軽く拭きながら、同じ空間にいる。


静かだった。


でも、さっきまでの静けさとは違う。

どこか、落ち着いた空気。


「……で」


白ヶ崎が口を開く。


「寝るの、どうする?」


「……」


その一言で、思考が止まる。


寝る。


そこまで、考えていなかった。


「……どうするって」


言いながら、自分でも答えが出ていないことに気づく。


「いや、だから」


白ヶ崎が少しだけ肩をすくめる。


「一緒にいるって言ってたじゃん」


「……」


確かに言った。


一人になりたくないって。


その時は、それしか頭になかった。


「……」


じゃあ、どうする。


別々の部屋に戻るのか。


それとも——


「……」


考えがまとまらない。


その様子を見て、白ヶ崎が少しだけニヤッとした。


「……じゃあさ」


軽い調子で言う。


「一緒に寝る?」


「……は?」


思わず顔を上げる。


「いや、冗談だけど」


そう言いながらも、どこか楽しそうだった。


「……」


普通なら、即答で断る。


そんなの無理に決まってる。距離が近すぎるし、色々とまずい。

そういうのは、ちゃんと線引きするべきだと分かっている。


「……」


けれど——


「……いいけど」


気づけば、そう言っていた。


「……え?」


白ヶ崎が目を見開く。


「……マジ?」


「……」


自分でも驚いている。


なんで、今それを許したのか。

理由は、うまく言葉にできない。


ただ——


一人になりたくなかった。それだけだった。


「……ほんとに?」


白ヶ崎が確認する。


「……ああ」


短く答える。


「……」


一瞬の沈黙。


それから——


「……変なことしないでよね」


少しだけ茶化すように言う。


「するかよ!」


反射的にツッコむ。


「絶対しないからな!」


「はいはい」


軽く流される。


そのやり取りが、少しだけ懐かしかった。


「……」


ベッドに視線を向ける。


一人用。


当たり前だが、広くはない。


「……どうすればいいんだ、これ」


「詰めればいけるでしょ」


「雑だな」


「大丈夫でしょ」


本当に気にしていない様子だった。


「……」


少しだけ息を吐く。


「……まあ、いいか」


どうにでもなれ、という気分だった。


「じゃあ、端っこ使っていいよ」


白ヶ崎が言う。


「……俺が端でいい」


「いいの?」


「いい」


短く返す。


それ以上考えると、また変に意識しそうだった。


「……」


二人でベッドに入る。


並んで横になる。


「……」


近い。


思った以上に、距離が近い。肩が触れそうで、触れないくらいの距離。


「……」


変に意識してしまう。


さっきまでの落ち着いた空気が、一気に別の意味で落ち着かなくなる。


「……」


白ヶ崎は、特に気にしていない様子だった。


むしろ——


「……」


少しだけ、楽しそうに見えた。


「……」


息を整える。


とりあえず、寝る。


それだけに集中する。


「……おやすみ」


白ヶ崎が小さく言う。


「……おやすみ」


短く返す。


目を閉じる。


意識を落とそうとする。


「……」


静かになる。


さっきまで聞こえていた生活音も、今はほとんどない。

二人分の呼吸だけが、ゆっくりと重なっている。


「……」


そのまま、時間が流れる。


——その時だった。


「……っ」


ふいに、何かが触れた。


一瞬、体が固まる。


「……」


白ヶ崎だった。


少しだけ距離を詰めて、真守に抱きつくような形になっている。


「……」


完全に、思考が止まる。


どうする。


動くべきか。離すべきか。

いや、そもそも起きてるってバレるのも——


「……」


とっさに、寝ているふりをする。

呼吸を変えないようにする。体も動かさない。


「……」


心臓だけが、やけにうるさい。


近すぎる。


距離が。


「……」


そのまま、しばらく時間が流れる。


動けないまま。


その時——


「……幸せ」


小さな声。


白ヶ崎の、独り言だった。


「……」


思わず、少しだけ目を開けそうになるのを堪える。


その言葉が、やけにまっすぐだった。

ふざけてもいない。誤魔化してもいない。

ただ、そのままの本音。


「……」


なんだそれ、と心の中で思う。


状況としては、かなりおかしいはずなのに。


それでも——


「……」


少しだけ、胸の奥が軽くなる。


さっきまでの重さが、ほんの少しだけ薄れる。


「……」


目を閉じたまま、意識を落とす。


考えようとすれば、いくらでも考えられる。


けれど——


今は、それをしなくていい気がした。


「……」


隣に、人がいる。

それだけで、十分だった。


気づけば、そのまま眠りに落ちていた。

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