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俺×恋=0になります。  作者: 光黒猫
第三章 俺×過去=探し出します。〜過去探索編〜
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99話 俺×違和感=ズレてきます。

朝、目が覚めた瞬間から、なんとなく嫌な予感がしていた。


理由はない。ただ、昨日の夜に感じたあの微妙な違和感が、寝て起きても消えていなかっただけだ。


「……」


布団の中で一度だけ深く息を吐いてから、体を起こす。


いつも通りの朝。窓から差し込む光も、部屋の空気も、何一つ変わっていない。


なのに、どこか落ち着かない。


「……気のせいだろ」


そう呟いて、自分を納得させるように頭を振る。


考えすぎだ。最近いろいろありすぎただけだ。

そう結論づけて、部屋を出る。


リビングに入ると、真希那がすでに起きていた。


「おはよー、まーくん」


「……おはよう」


いつも通りの声。いつも通りのテンション。

そのことに、少しだけ安心する。


「なにその顔。寝起き悪い?」


「普通」


「絶対普通じゃない顔してるけど」


軽く笑いながら、真希那が近づいてくる。

その距離の近さに、思わず一歩引く。


「近い」


「えー、冷たっ」


いつものやり取り。


それだけで、さっきまでの違和感が少しだけ薄れる気がした。


「朝ごはん食べる?」


「あとでいい」


「またそれー。ちゃんと食べないと倒れるよ?」


「倒れない」


適当に返しながら、冷蔵庫に手を伸ばす。

その時だった。


「……あれ?」


真希那の声が、少しだけ変わった。


「どうした」


振り返ると、真希那がスマホを見ながら首を傾げている。


「いや、なんかさ」


画面をこちらに向ける。


「知らない番号から電話履歴あるんだけど」


「……」


一瞬だけ、思考が止まる。

けれどすぐに、いつもの調子で返す。


「間違い電話だろ」


「だよねー。でもさ、夜中の三時なんだけど」


「……」


少しだけ引っかかる。


「出てないんだろ?」


「うん、気づかなかったし」


「ならいいだろ」


それで終わる話のはずだった。


「でもさー」


真希那はまだスマホを見ている。


「同じ番号から三回もかかってきてるんだよね」


「……」


ほんの一瞬だけ、空気が止まる。


けれど——


「ストーカーじゃん」


「やめろ」


即答で否定する。


「え、違うの?」


「違う」


「残念」


「残念がるな」


軽くツッコミを入れると、真希那はケラケラと笑った。その様子に、少しだけ肩の力が抜ける。


「まぁいいや。出なければそのうち諦めるでしょ」


「そうだな」


そう言いながらも、心の奥に小さな引っかかりが残る。


夜中の三時。


三回の着信。


偶然で片付けるには、少しだけ多い。


「……」


ただ、それ以上考える前に、真希那が別の話題を持ち出してきた。


「てかさ、聞いてよ」


「なに」


「昨日コンビニ行ったらさ、めっちゃ怖い人に睨まれたんだけど」


「……は?」


思わず顔を上げる。


「いやほんと!なんか黒いフード被っててさー」


「……それ、普通に不審者じゃないか」


「でしょ!?やばいよね!」


真希那はなぜか少し楽しそうだった。


「楽しい話じゃないだろ」


「でもさ、絶対こっち見てたんだよね」


「気のせいだろ」


「えー、絶対そうだってー」


笑いながら言っているが、内容は笑えない。


「……」


少しだけ、胸の奥がざわつく。


ただ——


「で、どうしたんだよ」


「え?普通にスルーして帰った」


「……」


拍子抜けする。


「追いかけられたりは?」


「ないない」


あっけらかんとした様子。


「だから多分ただの変な人」


「……」


それで片付けていいのかは、正直わからない。

けれど、真希那の様子を見る限り、深刻にはなっていない。


「……気をつけろよ」


「はーい」


軽い返事。


そのまま、またいつもの調子に戻っていく。


さっきまでの話が嘘みたいに、明るい空気がリビングに広がる。


「てかさ、まーくん」


「なに」


「もしストーカーだったら守ってくれる?」


「……当たり前だろ」


少し間を置いて答えると、真希那は満足そうに笑った。


「よし、安心した」


「軽いな」


「大事なことだよ?」


冗談みたいなやり取り。


それなのに——


「……」


心の奥では、全く笑えなかった。


知らない番号。

夜中の着信。

コンビニでの不審な視線。


どれも一つ一つは小さい。


偶然で片付けられる程度のもの。

けれど、それが重なった時。


「……」


前の事件。


脅迫状。


そして、まだ終わっていないという感覚。


「……」


視線が自然と真希那に向く。

何も知らないように、いつも通り笑っている。


「……」


その姿を見て、逆に確信に近いものが生まれる。


今回の“標的”。


まだはっきりとはしていなかった。


けれど——


「……やっぱりか」


小さく呟く。


「ん?なに?」


「……なんでもない」


ごまかすように視線を逸らす。


けれど、もうわかってしまった。

これは偶然じゃない。全部、繋がっている。


そして、その先にあるのは——


「……」


真希那だ。


まだ何も起きていない。

だからこそ、今のうちに動かなければいけない。


じわじわと広がる不安が、確信へと変わっていく。それだけが、はっきりとしていた。

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