第18話 『少年兵』の戦後①
side 夜神夕子
『護身術』の授業。
美森教官による、一番肉体的にきつい授業科目。
私たち『Cクラス』のそれは、文字通り自分自身を『護る』ための技術を身につけるためのもの。
道場や試合会場で対面した相手と同じルールで技を競うようなものではなく、なんの準備もない時に襲いかかってきた相手から安全な場所まで逃げ切ることを目的とした特集教養。
危険な場所や狙撃ポイントへの警戒。
不意の攻撃に回避や対応するための条件反射の体得。
環境を利用した目眩ましや、状況を脱出して相手の計画を狂わせる翻弄の技術。
そして、パルクールじみたアクションや乗馬技術などを含めた遁走術。
初回は教官の強さと白兵戦という行為の基礎を知るために組手を体験しましたが、二回目からは本来の座学から始まり実践訓練まで行う本格的なプログラム。
その内容は本当に真面目で、厳しくて、さながら軍の訓練兵になったような気分。
けれど、実際問題……私たちはいつか『外の世界』で生きるつもりならそんなスキルも必須になってしまうくらいの恨みを買っている。
『暗殺や日常の中での襲撃に対応するためのスキル』が人生に役立つのかなんて質問が出ないくらいに、見知らぬ相手から殺意を抱かれてもおかしくない生き方をしてきてしまっている。
私も、それは理解しているつもりですわ。
なので、どんなに厳しい授業内容だろうと文句を言うつもりなんてありませんの。
なのだけれど……
「くっ、ぐっ、うぅ……足が、重い……」
「えっと、大丈夫……? 肩、貸そうか?」
「い、いいえ……お構いなく……先に、教室へ行っててくださいまし……」
「ご、午後の基礎教養出られなさそうだったら無理しなくていいからね? 千里先生には体調不良って言っておくから……サボりじゃなくてガチなやつだし」
授業内容に文句を言うつもりはないけれど、それ以前に基礎体力がなさすぎて皆さんと同じ訓練が受けられないなんて……前回は慣れない守護者なしでの戦闘だったからかと思ったのに、他のクラスメイトが準備運動でやってる走り込みや筋トレの時点でバテバテのヘトヘトになるなんて。
ミュジカさんに言われて『疲れ』の概念を自覚し始めただけかもしれないけれど、思えば戦場でも守護者に乗って移動していたので自分の足で走ったり跳んだりなんて一切していませんでしたわ。
長距離移動は基本的にニドラさんの背中でさながらプライベートジェット機かのような快適移動で消耗した覚えがありませんし。
「今思えば、あれってニドラさんの魔法みたいなものでしたのね……急加速でも振り落とされたりしませんでしたし」
ここは学校の運動場に隣接したシャワー設備付きの更衣室。
私の疲労困憊具合を心配した蓬さん以外は給食のために教室へ行ってしまいましたけど、私はどうにか運動着を脱いでシャワーを浴びて制服へ着替えたところで力尽きてベンチから動けなくなってしまいました。
正直、このまま蓬さんに教室まで運んでもらっても給食がちゃんと食べられる気もしなければ午後の基礎教養でノルマを達成できる気もしないくらいのグロッキーですわ。
……普段激しい運動をしない人間がいきなり激しい運動をするとこうなるのですわね。
「もう少し……動けるようになるまで、休んでから……気分がよくなれば、午後の授業に出ますわ……」
「う、うん……本当に無理しないでね。一応、給食は後で食べられそうなやつ夕子の分も取っておくから」
「はい……ありがとうございます……」
ずっと側に付いていても私が申し訳なく思うだけだとわかってくれているらしく、皆さんの後を追って更衣室を出ていく蓬さん。
……一人取り残されて、深く息をつく。
「歪ですわね……私って……心も、身体も、なにもかもが」
先日の、テーレさんとの会話の最中に湧き上がった脚の痛みと痣は、しばらく休んでいる間に消えていた。
けれど、その痣が消えるまでの間に私の脚を調べていたテーレさんの話では、私の感じた痛みや浮かび上がった痣は外傷というよりも心因性に近いものらしいと。
魔力に満ちたこの世界では、地球よりも精神が肉体に影響を与えやすい。
私の場合で言えば、テーレさんの提案……以前の私と同じように守護者を使えるようにするという『治療』を拒む私の無意識が戦場で受けた古疵を介して表出したものである可能性が高いのだと、そう言われましたわ。
そして……言うまでもなく、そんな状態での強引な精神干渉は危険ということで『治療』は断念。
けれど、一晩寝て起きてみれば、痣も痛みも嘘みたいに跡形もなく消えていたので、その残痛のせいで運動に支障が出ているというわけでもなくて……護身術の授業についていけないのは単純に私の体力のなさの問題。
きっと、普通の『ずっとダンスの類をやってきた人』なら、それがバレエであれフラメンコであれ、日本舞踊であれ、その振り付けの中に走ったり跳んだりといった動きがないとしてもそれなりの『体力』そのものはあるのでしょう。
だって、筋力や速さを比べる競技ではないにしても、『肉体を動かす練習』を数え切れないほど繰り返して、そのために時間と努力を注いできたはずなのだから。
けれど、私の身体はそうなっていない。
努力してきたはずなのに、冗談ではなく人生の何割かの時間をまるごと踊ることに費やしてきたはずなのに、私の肉体はそれで鍛えられるのではなく過労で死ぬほどボロボロになって、精神も自分の疲労や苦痛に気付かなくなっていただけ。
休日の概念もなく、回復の暇もなく、ただ厳しければ厳しいほど伸びるはずだなんて理論で無計画に動かされ続けた肉体なんて、だからといって走り込みや筋力トレーニングのような体力作りに向いた運動をしていたわけでもない私の肉体なんて、とても健康的に育つわけもなし。
極端なことを言ってしまえば、毎日ゲームに没頭して健康的な生活を疎かにした人とそう変わりませんわ。
それも、楽しんでやっているゲームならともかく、やりたくないものを無理にやり続けていたのだからストレスが溜まる分だけゲーム中毒よりもさらに不健康だとすら言えるかもしれませんわね。
むしろ、一度死んで生まれ変わった今は……今の私の身体は、これでもかなりマシになっているはず。
少なくとも、この世界に来て旧都砦や戦英プロで『重要戦力』として充分な休養や健康管理を受け始めたことで前世の末期……冗談でも何でもなく文字通り『過労死寸前』だった頃よりはかなり『健康体』と言える状態に近くなったのだろうと思いますけれど。
けれど……そう思えるのも、そういった考え方ができるのも、この『学校』に通い始めて私の知見がある程度広がったから。
先日の件でミュジカさんから『基礎体力がない』という指摘を受けていなければ、私はこの授業の訓練だって『そうしなければならないから』と私にとっては当たり前の癖で心底から思い込んで、その思い込みの力で疲労感や苦痛をごまかして蓬さんと一緒に教室に向かっていたかもしれませんわ。
今この瞬間は、ちょっとそちらの方が楽だったのではないかと思ってしまわなくもないのですけれど……
「あら、夕子さん……でしたわね? もう給食の時間かと思っていたのだけれど、違ったのかしら?」
私が一人で物思いに耽っていると、更衣室の入り口から聞こえた『知らない人』の声。
そちらを見ると、そこには……腕に私が着ていると同じ意匠の制服を畳んでかけている同年代くらいの女の子が立っていましたわ。
髪は銀色、髪型はツインテール。
服装は『外』に暮らす女の子が私服として着ていそうな、この世界のヨーロッパ的文化に馴染んだデザインの洋服で……
「えっと、あの……あなたは……その制服、もしかして……クラスメイト、ですの? あの、空席の……」
「ええ。はじめまして、夕子さん。私は……『ビィ』よ。ちょっと家の事情というか、副業というか、諸用でなかなか学校に来られなくて。今日はどうにか午後の授業には出られそうだったから走って来たの。ただ、それで汗をかいてしまったし制服に着替えないといけないから、先にここに寄ったの」
『ビィさん』。
聞いたことがない上に人名らしくない響き。
けれど、そういえば目覚めたばかりの私を診てくれていたドラゴン娘さんが『シィシィシィ』という名前で縮めて『シィ』と呼ばれていたはず。
それに、そのシィさんは『フィースさん』を『フィ』と略していたし、この世界ではそういう名前を短縮したあだ名のような呼び方を最初から自分で名乗るのも珍しくないのかもしれない。
ともあれ、彼女は慣れた様子で制服とその下に隠れていた荷物をベンチに置いて洋服のボタンを外しながらシャワー室へ入っていく。
そして、シャワーの水音が聞こえ始めてから、その雨のような音の中でもよく通る声が私の方へ響いてきますわ。
「夕子さん、そういえば夕子さんって日本人でしたわね。日本では全部の家にこんなシャワーがあるって本当?」
「全部……ではないかもしれませんけど、ほとんどの家にはある……と、思いますわ。他の家とかに行ったことはないけれど、ドラマとかではよく見たので」
「ドラマ……それって、『テレビ』の話よね? テレビも全部の家に一つはあるって聞いたけど、本当なの?」
「それも、ほとんどの家にはあると思いますわ。クラスの……あちらでのクラスメイト同士の話では、最近はパソコンやネットというもので見たいものが見れてしまうのでテレビ番組はあまり見ないというようなことを言っていた気がしますけど」
「パソコン……ネット……ああっ! それは知ってるわ! 『インターネット』でしょ? ミサイルの撃ち合いが一撃で終わっちゃってつまらなくならないように作ったってやつ!」
「えっ? インターネットってそんな目的で作られたものなんですの?」
話しぶりからしてこちらの世界で生まれ育った人間のはずのビィさんから地球の歴史について逆に教わってしまいましたわ。
いえ、確かに言われてみればインターネットというのは生まれた時から当たり前にあったものでしかなくてどんな理由や経緯で作られたものかとかは知りませんでしたけど。
戦争での国と国の撃ち合いが簡単に終わらないようにするためとは……野蛮な話ですわね。
つい最近の基礎教養でゲームの中に出てきた『死の商人』とか『戦争特需』とかそういう話なのでしょうか。
戦争なんて、人ができるだけ死なない内に早く終わった方がいいなんて当たり前の話だと思いますけど。
戦争をしていた当時の人々は、命をなんだと思っていたのやら。
と、そんな事を考えていると手早くシャワーを済ませていたビィさんがタオルで髪を拭きながら服を着替えていましたわ。
私にアトリさんみたいな『そういう趣味』はない……はずなのですけれど、芸術品のようなスタイルですわね。
これが黄金比というものなのか、ちょっと同じ人間か疑わしく感じてしまいましたわ。いえ、そういえばアトリさんもかなり近いものはありましたけど。
「あら? 夕子さん、シャワーはよろしいんですの? いえ、髪が少し濡れているし浴びた後なのかしら?」
「ちょ、ちょっと護身術の授業で疲れてしまって休んでいましたの……まだ、どうにも慣れなくてというか、なんというか……私、荒事の類はあまり向いていないみたいで」
さすがに、準備運動で体力を使いきってしまったというのは恥ずかしくて少し表現を選んだ自分自身に恥ずかしくなる。
ただ、なんというか……
「向いてない? そうかしら? 夕子さんはとても強い転生者だと聞いたことがあるのだけれど……」
……変な『自負心』があったから。
自慢するようなことじゃないのはわかっているけれど、私は『戦場で活躍した転生者』として、自分が能力を使わなければ他の人には軽い運動すら自分には難しいのだとは素直に言えないくらいの自負心がある。
私は『強い側』の人間、それも『すごく強い転生者』としての実績と実力がある。
あの砦でもそう認識して、そう振る舞っていて、だからこそ大人の兵士さんたちや他の転生者相手にも物怖じせずに話せた。
なんなら、クラスの皆さんとそれなりに抵抗感なく話せるのも、今は少し能力を上手く使えなくなっているとしても私の中に『強い私』が今も隠されてるからじゃないかという気もする。
他人に自慢できることではないけれど自分を支える、密かな自信と自負心。
そんな『成功体験』として戦場にいたことを思い出せるくらい、私は『強い側』だった。
こういう言い方はすごく悪いかもしれないけれど……『強い側』なのに大人に怯え続けていたマサヨシくんはそれが出来ていないのがいけないと内心で暗い優越感のようなものまで持っていた気がする、
逆に黒雄さんや白鳥さんは使い方の限られた能力頼りの転生者で、しかもそれに人間としての実力が伴っていないのに偉そうで傲慢だと少し思っていた……そんな気もする。
本当に、今になって改めて思うのは良くないことだと思うけれど……私があの砦で『対等』だと思っていたのは、レイさんとジャネットさん、それにフェイレス先生くらいだった。
逆に言えば……私は、あの人たちと自分が対等だと思うことで、独立軍の中でもわかりやすく飛び抜けた自分の『活躍』に自負心を持つことで、自分が『強い側』で特別だと認識することで、『戦場』に生きているということへの恐怖をごまかしていたのかもしれない。
……その結果が、自分がいきなり死ぬようなことはないと思ってレイさんからの忠告も軽んじた直後の『あれ』だったわけだけれど。
まだ、そんな認識が抜けきっていないのだろう。
未だに守護者も満足に使える状態に戻っていない、あの頃の『強さ』を取り戻せていないというのに……
「でも、夕子さん……初陣で、相手が『戦士衆』ではないとはいえ、あの強靭な『森の民』の方々を殺戮……いえ、一方的にたくさん殺したという噂は本当なのでしょう? なら……」
『殺戮』。
ビィさんが言葉を選び直す前に洩れた言葉。
私が無警戒だったところへ、不意に耳を通じて脳へ響いた単語。
それが、過去の自分の『強さ』を回顧していた私の思考に痺れのようなノイズを生まれさせた。
それは、本当に不意の一撃で、心臓に悪いくらいの唐突さで、私の思考を狂わせた。
「さつ、りく……? えっ、あっ、それは……あれ……? 私は、戦場で、『活躍』を……殺、りく、なんて……そんな、酷いこと、なんて……あれ……?」
さっきまでのグロッキーを忘れるくらいの、そんなものを上書きしてしまうほどのノイズ。
心臓が嫌な高鳴り方をしている。
命の危機に近い、魂の危機とも呼べる感覚が警鐘を鳴らすけれど、その向こう側の脅威がどういうものか直視できない。
それを見つめること自体が致命的だと無意識が訴えていて、心の目を閉じたいと思うのに、それを考えるなと思うほどにイメージは鮮明に像を結んで、それは記憶の中の一瞬一瞬に確かにあったもので……
「でも、私が、『戦った』のは、挑みかかって来た人だけで……」
苦し紛れの言い訳。
けれど、言葉にしてみて、自分の心がそれを『嘘』だと認識しているのを強く意識してしまう。
独立軍は、私たちは、『攻め込んだ側』だった。
私が一番『活躍』したのは、旧都の周りに元々住んでいた森の民からその土地を奪って『占領』するための戦場だった。
吐き気が胸の奥から湧き始める。
『戦った』なんて耳触りのいい言葉で、聞かなかったことにしたい『殺戮』という耳障りな言葉を上書きしようとした自分自身に失望したのを悟る。
「大人の人たちが、ロバートさんが、『そうする』だけでいいからって……『不明』で、『空間に線を引く』だけ、だったから……訓練で、人そっくりの人形にそうしたのと同じようにするだけだったから」
なんで、今の今まで意識しなかったのか。
こんな不意打ちじゃなければ正面から見つめることができなかったのか。
それはきっと……目を逸らしていたそれは、あまりに『致命的』なものだと理解してしまっていたから。
「私は……大人に言われるままに、何も考えずに人を殺して……」
だって……『強かった』はずの『その頃の私』は、疑問に思わなかったから。
私より『偉いらしい』大人から『そうしろ』と言われたら『そうする』以外ないと思っていたから。
日本舞踊の先生が自分と同じように舞いなさいと言えば、その通りに舞う。
軍の大人がみんなで戦いながら守護者で舞うように言えば、同じように舞う。
そこに、大きな違いなんて感じていなかったから。
そうすればいいと言われていたから、そうしていただけで、実際それで『上手くやれて』いて『認めてもらえた』から。
今日の護身術の授業で、体力不足のせいでクラスの皆と同じことができなかった時、自分の体力のなさに驚いたけれど、それを見かねた美森教官に見学を指示されたときにはもっと驚いた。
申し訳ないと思うと同時に自分でも身体がついてこないのが信じられなくて……私にとっては、言われた動きをそのまま言われた通りにすること自体は、是非もなく、疲れたり嫌だったりなんて理由で拒否する選択肢なんてなくて、自己判断なんてする余地もなく言われた通り『そうする』のが当たり前のことで……
「戦争、だったから……迎え撃たないと、殺されてしまうと思って……? 本当に……? もっと、他にも、いくらでもできる選択だって……独立軍から逃げ出す選択肢だって……それくらい、選べるだけの力はあったはずで……」
今日受けたばかりの『護身術』の授業。
その中で語られた基本理念が脳裏に浮かび上がる。
『相手を殺して解決しようという選択肢は捨てて逃げることを最終目的に据えろ』と。
さっき知ったばかりの『インターネット』が生まれた背景について。
ビィさんの話を聞いて、頭の中で考えていたことが蘇る。
『戦争をしていた当時の人々は、人の命をなんだと思っていたのか』と。
その二つが繋がって、離れようとして、私の魂を別々の方向に引っ張って行こうとするようで。
急激に左胸の奥にある心臓が苦しくなって、呼吸が荒くなる。
運動での息切れはとっくに収まったはずなのに、もっと息苦しくて死にそうなほど辛い。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」
「……あっ、えっと……もしかして、私なにかやっちゃいましたの?」
「い、いえ、あなたが悪いわけじゃ……私が、私がやったことで、私が……」
「これは、あれですわね。『ダメな日』のパターンですわ。こういう時には確か……夕子さん、ちょっと動かないでくださいね?」
私の後ろに回り込むビィさん。
彼女に何をするつもりかと問いかけることもできない私の頭に響いたのは……
「当て身!」
そんな軽いかけ声と、首筋から脳へ伝わる鋭い衝撃だけ。
私の意識はそこでテレビの電源を切るようにフッと途切れて────
「あ、起きた。夕子ちゃん、頭は大丈夫? いや、この聞き方はなんか意味が違う感じになっちゃいそうだけど。首、痛くない? あと、やたらネガティブな気分になってたり、逆に空飛べちゃいそうなほどハイになってたりしない?」
ふと目覚めた私の目の前にいたのは、知らない天井から降り注ぐ照明の中で逆光になりながら私を見下ろすレイさんの顔。
そういうメイクなのか痣なのか、頬に目玉模様のようなものを浮かべながら私を見下ろす知人は、私のボンヤリとした寝起きの表情を確認して、ホッと息をつきました。
「とりあえず、気分のリセットはちゃんとできたみたいだね……じゃあ、施術の後に言うのは順番が逆かもしれないけど、一応は挨拶ってことで。『いらっしゃいませ』、『ご来店ありがとうございます』。それから、ちゃんと施術後ってことで『当店のサービスをご利用ありがとうございました、夕子ちゃん』……なんてね?」
「サービス……? なんの、ですの……?」
「そりゃ、ボクの分身たちが経営してるリフレッシュ専門店……いや、あー、うん、マッサージ? そう、マッサージ屋さん『トゥー・マッチ・ハピネス』の超々健全合法サービスコース、だよ?」
最近、作者が得意技に向かないほのぼの平和青春物語路線に舵を切ってちょっと物足りないとか牙抜けちゃって残念だなーとか思っていたであろう一部の読者の皆様に朗報です。
まあ、なんて大袈裟に言っておいてなんですが……作者は変わらず『こういうこと』する人のままでしたというだけのお話ですが。
まずはここから数話、ちょっとだけ刺激の強い回になるかもしれませんが、どうぞ覚悟してお楽しみを。
あ、あとご報告ですが、SF短編として『世界を滅ぼす謎の筒』を投稿しました。
この捻くれ作者らしく内容が内容なので、気になる方は精神に余裕のある時にお試しくださいませ。
それと、ようやくストックが溜まってきたのでまた今週の土曜日から当面水土週二投稿を再開したいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。




