Shopping Street3
八百屋の後は精肉店に寄って牛肉を買った。
...も、もしかして今日の晩御飯って......!
お姉ちゃんの料理の中で、私が一番好きなのはハンバーグなのだが、私の推理が正しければ、今日の料理は私が3番目に好きな料理だ。
因みに2番目はカレーである。
しかし3番目と言っても、あまり頻繁には出ないので、なんか久し振りに食べたいなあと思う時があり、最近ちょうどそんな感じだったから、今物凄くウキウキしている。
「あ、そうだ、華凛ちゃん、なんか情報は掴めた?」
車に向かう途中、美月さんが聞いて来た。
「あまり大した事は......
ただ、一昨日の夜にこの商店街に来ていた人達が何人かいたんですけど、特に気になる人はいなかったって言ってました......まあ、お店の人とは違って、そんなに他人の事に注意はしてないでしょうけどね。
あとは一連の犯行が、雨の日になると現れる、例のシリアルキラーによるものなんじゃないかって話している人が何人かいました」
「そっか...華凛ちゃんはどう思ってる?」
「そうですね......」
私は少し考えたあと
「怪しい点が散見されますけど、現状揃ってる手掛かりからは、まだなんとも言えない...ですかね」
と答えた。
「うん、だよね。もう少し手掛かりが掴めると良いんだけどな...」
美月さんが歯痒そうに言った。
模倣犯を出さない為に、事件の内容は警察が極力伏せている。
だからこそ私も、遺体に両手で目を覆わせるという、犯人の署名的行為については、現場や写真を見るまでは一切知らなかったのだ。
それはつまり、第一発見者が情報を漏らすのを警察が固く禁止していたからで、その点については非常に上手くいっていたという事だ。
となると......いや、可能性はまだ十分にある。
大分暗くなったな。
もう夕方過ぎか......
秘密を覆い隠すかの様に、雨は激しく降り続ける。
美月さんの車で自宅に到着する。
夕飯の支度が出来るまでの間、美月さんにはリビングで寛いでもらう事にした。
「美月さん、お疲れでしょう?暫くゆっくりなさっていて下さい。
今お飲み物持ってきますね」
お姉ちゃんがそう言うと
「華澄ちゃんも疲れてるだろうに、なんか悪いね」
と美月さんが申し訳無さそうに言った。
「いえ、そんな事ありません!私、料理するの好きなので」
お姉ちゃんがにこやかに言う。
「かぁ~、なんて良い子なんだ!
こうなったらもう私の嫁に来ちゃいな!」
冗談だろうけど、気持ちは分かるな~、うんうん。
「あの、それはちょっと......」
「わはは!半分冗談だって!ありがとね、華澄ちゃん...それじゃ私は遠慮なく♫」
なんか今、"半分"って聞こえた気がするけど、まあ私の気のせいだろう。
美月さんはリビングのソファに横になった。
後で私が飲み物を持って行くと、既に豪快ないびきをかいて寝ていた。
よっぽど疲れてたんだろうな。
美月さんを起こさないよう、近くのテーブルに飲み物を気を付けて置き、私はリビングから出た。
さてっと、私はお姉ちゃんの手伝いでもしようかな。
私はキッチンへと向かった。
90分後───
「ふぅ~、食った食った!ごちそうさん!ほんと、めちゃめちゃ美味しくて幾らでも食べれちゃうわ~。
華澄ちゃんプロ並みだね、やっぱり うちに嫁に来ない?」
「ふふ、美味しく召し上がって下さって、ありがとうございます!」
最後の言葉は無視して、お姉ちゃんが褒められた事に対してお礼を言う。
こういうスルースキルを私も身に付けたい。
「あちゃー、フラれちゃったか~」
美月さんは、少し大袈裟に落ち込んでみせた。
...それにしても、やっぱりお姉ちゃんのビーフストロガノフはめちゃめちゃ美味しい!
美月さんじゃないけど、幾らでも食べれる気がする。
美味しそうに食べている私達を見て、お姉ちゃんも嬉しそうだった。
料理を手伝おうとしたら、お姉ちゃんの手際が良すぎて、私が手伝える事が殆んど無かったし、私に「休んでて」と逆に気づかってもくれた。
...けど、使用した調理器具を洗ったり、食器の用意をしたら、凄く喜んでくれた。
「君達、明日は学校だよね?」
いつの間に立ち直ったのか、美月さんが聞いて来た。
「はい、そうですけど...何かお手伝い出来る事があれば休みますよ?」
私がそう言うと
「ううん、それは大丈夫!
...っていうか、高校生活は今しか出来ないし、出来るだけ君達には楽しんで欲しいんだよね...まあ、今しか出来ないのは高校生活に限った事じゃないけどさ」
と、美月さんが真面目に言った。
「ありがとうございます美月さん。
それじゃあ高校生活を楽しんで来ますね!
ただちょっと、永瀬さんの事で色々聞きたい事があるので、私達は明日の放課後に神月高校の方へ行こうと思ってます。
高校生同士だからこそ聞ける話もあると思うので...」
実は手伝いの最中にお姉ちゃんとそういう話になっていた。
「おお、じゃあ放課後、車で迎えに行くよ」
「え、良いんですか?お忙しいのに...」
そんな事を言いながら、もう二時間近くも家に引き留めてしまっているが。
「だいじょぶだいじょぶ!じゃあ、明日はそういう事で......っと、もうこんな時間か、それじゃそろそろお暇するよ。
今日はほんとにありがとう!」
「こちらこそ。また機会があれば、いつでもいらして下さいね」
お姉ちゃんが微笑みながら言った。
「くぅ~、なんて良い嫁なんだ!寂しくなったら、いつでも私に連絡するんだよ...我が愛しの妹も...それじゃ!」
どうやらいつの間にか、美月さんは私の義理の姉になったようだ......疲れてるんだろうな、美月さん。
お姉ちゃんと一緒に後片付けをしたあと、私はいつも通りゲームをして寝る事にした。
昨日はアクションゲームでえらい目にあったから、今日は街作りのシミュレーションゲームをする事にした。
きっとこれだったら、リラックスして早く寝られるはず!
だったらゲームしないで寝ろと言われそうだけど、ちょっとでも良いからやってないと、なんか落ち着かない。
依存症...とは少し違って、適度に集中出来る時間があると、なんというか頭が整理されて考えがまとまるのである。
......ああ、良いBGMだな...癒される......
これなら今日は気持ち良く寝れそう......
私はまったりした心持ちで夜を過ごした。




