First Incident2
コンビニに着いた。
入り口に監視カメラがついてるが、画角的に道の方は殆んど映してないだろう。
窓ガラスにアルバイト急募の張り紙が貼ってある。
自動ドアが開いた。
「いらっしゃいませ」
中年男性の声が店内に響く。
「お仕事中すみません。また少しお話を聞かせていただけないでしょうか?」
「...あっ、この前の刑事さん......はい」
「あの後、何か思い出した事とか変わった事とかありましたか?」
「いいえ、特には......人気の看板娘が居なくなって、ちょっと客足が遠退いた位...ですかね...あはは...いや笑うなんて不謹慎ですよね。すみません」
「いえ...大変ですね」
「まあ、はい、そうですね......」
店長さんが疲れた暗い顔をしている。
「すみません、お願いします」
美月さんと店長さんが話している間に、駄菓子コーナーで、私の大好きなゆるキャラ、モン太郎のおまけ付きお菓子があったのを発見し、レジまで持って来ていた。
「あ、は、はい......」
不意を突かれた感じになり、店長さんがちょっと慌てる。
「あっ、そうだ店長さん、最近この店に来なくなった常連さんとかいらっしゃいませんか?」
「じょ、常連さんですか...?
えっと......ああ、そう言えば...ここ数年、毎週タバコを買いに来られるお客さんがいるんですけど、今週は見てませんね。禁煙でもなさったのかな」
私は警察じゃないのに、店長さんが質問に答えてくれる。
「もしかしてその人って40代位のサラリーマンっていう雰囲気の方じゃないですか?」
私は敢えて、本命とは微妙に違う質問を、具体的な数字を交えつつ投げかけてみる。
「あー、どうかな...服装はいつもラフな格好だったし...うーん、でも年は多分30代そこそこって感じじゃないですかね。」
するとこの様に、相手から情報を引き出し易くなる。
商品を購入したのも、その一環である....
...べ、別に、モン太郎グッズが欲しかっただけとか、そういう訳じゃないから!
「そうですか~、じゃあ人違いかも......ところでお幾らですか?」
「あっ、えーっと......」
こんな感じで会計を済ませ、私とお姉ちゃんは店を出た。
......欲張って3つも買っちゃったから、結構いい値段になっちゃったな......で、でも良いよね!モン太朗可愛いし!!
きっと表情に出ていたのであろう。
お姉ちゃんがそんな私の様子を見て、ニコニコしていた。
ちょ、ちょっと恥ずかしい......
美月さんがコンビニから出て来る。
「華凛ちゃん、さっきのってどういう事?」
美月さんが何が何やら分からないといった表情で聞いてきた。
「不審人物が見当たらないなら、逆に居なくなった人はいるのかなって思ったんです...と言っても、事件とは何の関係もないかもしれませんけど」
「ふーむ、なるほどねぇ......華凛ちゃん、さっすが~♪」
美月さんが嬉しそうだ。
「あ、ありがとうございます...」
ちょっと照れる...
「それじゃあ次は2番目の事件現場だね......おっと、もうこんな時間か。本格的に調べるのは明日にして、今日は車で軽く周りつつ、どっか食べにでも行こうか?
私奢っちゃうよ~」
「えっ、良いんですか?やったぁ♫」
「わははは!この私にまっかせっなさーい!」
能力の使用は息をするのと同じとは言ってたけど、お姉ちゃんも現場を色々回って多少疲れてるだろうし、正直この提案は有り難かった。
私に料理を作るのを楽しみにしている所があるお姉ちゃんは、ほんの少しだけ残念そうだったけど、夕飯の買い物にも行ってないし、美月さんの気遣いが分かっているのもあって、深々と頭を下げながらお礼を言っていた。
美月さんの車に乗り、私達は超高層マンション街を軽く回りつつ、繁華街周辺にあるファミレスに行く事になった。
夕方過ぎ位だが、雨雲が厚い為、辺りはもう大分真っ暗だ。
車のタイヤが弾き飛ばす水飛沫の音が、なんか心地良いなと思ってる内に、超高層住宅街へと入った。
この辺りは、遠くから眺めるだけで、私も殆んど来た事が無いので、少し新鮮な感じがする。
こうして見ると、ある程度間隔は空けながらも、タワーマンションが林立している様子は結構見応えがあるなと思うし、何処となく近未来感もある。
また、無機質なイメージとは違い、木が沢山植えてあって、まるで森の様に感じる場所もあった。
現場は幹線道路から少し入った、タワーマンションの敷地内だったらしい。
一階部分が店舗になってるタワーマンションが何棟かあるけど、これだけ死角が多いと、多分近くに人がいても気付かないんじゃないかと思う。
実際、現場近くを歩いている人がいたのが監視カメラから分かったらしいが、その人は、近くで人が殺されている事に全く気付いていなかったという話だ。
ある程度、超高層住宅街を車で回ったあと、ファミレスへと向かった。
ここは一階部分が駐車場になっているので、立体駐車場やコインパーキングを回らなくて済む。
神月浜町は、高級住宅街、月見台、神月台、文化行政地区や大学を除いた全ての地区に、有料駐車場が存在していて、流石観光や海浜浴場で盛り上がっているだけの事はあるなと思う。
──美月さんに送ってもらって、自宅に着いた。
ファミレスでは、お姉ちゃんは和食を、私はステーキを頼んで、締めはパフェという感じだった。
美月さんに遠慮してパフェは注文しないでおこうと思ってたんだけど、「遠慮しないで、じゃんじゃん食ってけ!」と言ってくれたから、お言葉に甘える事にした。
ん~、久し振りに食べると美味しかったなぁ...!
店内では流石に事件の話は出来ないから、なんとなく家の事とか、高校の事とかを話してた。
美月さん、なんか楽しそうだったな。
...ふ~、それにしても疲れたな。
ちょっとゲームした後、今日は早めに寝て、明日の捜査に備えないと。
「おやすみー、お姉ちゃん」
「おやすみなさい、華凛ちゃん」
私達はそれぞれ部屋に入った。




