Third incident2
永瀬さんの殺害現場から、200m弱離れた所に目的の公園があった。
公衆トイレに続く、舗装されてない ぬかるんだ道に、少し足跡が残っているのが肉眼でも分かった。
「靴の大きさは27cm。靴底の感じから、もしかしたら革靴か何かかもしれない。
所々少し歩幅が広くなったりしてるから、落ち着こうとしてるけど、興奮と焦りがちょっと出てるって感じじゃないかな」
お姉ちゃんを先頭に、足跡を辿っていくと男子トイレの前まで来た。
......やっぱり入らないと駄目...だよね?
集中していて気付かないのか、普段だったら恥ずかしがりそうなお姉ちゃんが、全く動じてない。
あとで素に戻ったら、ちょっと面白そう。
美月さんは、そんな私達に気付いたからなのか、少しニヤニヤしていた。
男子トイレの中に入ると、床が濡れているのが目に入った他、微かに泥がついているのが視認出来た。
「被害者の血痕が排水溝付近に付着してる。
それに被害者以外の毛髪とか繊維も。
掃除用具室にあるバケツがまだ少し濡れてるから、多分奥の個室で着替えたあと、出来るだけ証拠を隠滅しようとして水で洗い流したんだと思う」
男子トイレに入った瞬間に3Dスキャンしたのだろう。
お姉ちゃんがここからでは見えてない所まで詳細に分析している。
お姉ちゃんの話を受けて、美月さんが鑑識の人に指示を出す。
「毛髪のDNAは30代男性のもの。繊維は濃灰色のポリエステルとウールの混紡...もしかしたらスーツとかかもしれない」
仮に犯人のものだとすると、犯人は30代男性会社員といった感じになるだろうか。
まあ、スーツと決まった訳じゃないし、まだなんとも言えないだろうけど......
それにしてもDNAプロファイルって言うんだっけ?
性別とかが分かるのは、まあそうだろうなって思うけど、年齢とかも大まかに分かるって凄いよな。
あと昔は、無理に引き抜いた毛髪でもない限り、ミトコンドリアDNAしか調べられなかったみたいだけど、最近では普通に抜け落ちた髪からでも、核DNAを調べる事が出来ると お姉ちゃんから聞いた事がある。
「ここで分かるのは、こんな所かな」
少しずつ素に戻って行くにつれ、お姉ちゃんの顔がみるみる赤くなっていく。
うん、やっぱりそうなるよね。
そんなお姉ちゃんの様子を見て、美月さんが笑いを堪えていた。
男子トイレから出て、私達は今後の捜査について話し合う事にした。
「ありがとう、すっごく助かったよ......それで、君達は今回の事件どう思う?」
「私は...」
お姉ちゃんが切り出す。
「犯人の署名的行為が気になりますね。先程、拝見した捜査資料では、1番目の事件は今回と同じ様に、被害者の両手で両目がしっかり覆われていましたが、2番目の事件は覆い方が中途半端になってましたから」
そこは私も気になる。
今回の永瀬さん殺害の事件については、犯人が一旦公園に寄ったのは間違いないので、この後の逃走ルートもある程度絞れそうだ。
私はとっさに脳内マップを展開する......と言っても、道は迷路の様になっているので、地点どうしの距離や、人通りの多さ等に注目した簡易マップだ。
「華凛ちゃんはどう思う?」
美月さんが聞いてきた。
「そうですね......今回の永瀬さん殺害に関しては、警察の方達の聞き込みを待つとして...色々推理するにしても先ずは1番目と2番目の事件現場も実際に見ておきたいです。
流石に痕跡とかは残ってないと思いますが、現場周辺の雰囲気を掴んでおきたいっていうか」
「おお、それはもう君達さえ良ければぜひ!
それじゃ早速行ってみる?私が車で送ってくけど」
お姉ちゃんの方をちらっと見ると、微笑みながら頷いた。お姉ちゃんも同意見みたいだ。
「美月さんの都合が大丈夫なのでしたら、是非よろしくお願いします」
私達は頭を下げた。
「いやいや、頭あげてよ!私から頼みたい位なんだから、頭を下げるのは私の方でしょ」
美月さんが珍しく慌てている...ちょっと面白い。
「そうですか?それじゃあよろしくお願いします!
......でも本当に大丈夫なんですか、こっちの現場の指揮とか?」
「ん?ああ、まあ大丈夫っしょ!なんとかなるなる!」
私が尋ねると、美月さんは明るく笑いながら、そう言った。
...本当に大丈夫...なのか?
......まっ、いっか。
「それで最初はどっちから行く?」
「2番目の事件現場の方は時間がかかりそうですから、先ずは1番目の事件現場からお願いします」
美月さんの質問に、私の代わりにお姉ちゃんが答えてくれた。
捜査資料の全てが頭に入っているお姉ちゃんがそう言うのだから間違いないだろう。
「よーし!じゃ、月見台に向けて かっと飛ばすぜ!!」
美月さんが燃えている......いや、安全運転でお願いしますね。
美月さんの車に乗り込んだ私達は、1番目の事件現場へと向かった。




