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Invincible Tracer2

私は更に話を進める。


「......要するに、貴方の母親に対する復讐の代理として彼女達が選ばれた......ですよね、中山さん?」


「...ははは!凄いね君は。犯罪心理学と精神分析学の応用かな?

そう...そうだね......

僕自身気付きたくなかったけど、きっとそうだったんだ。

散々心を踏みにじって、結局僕を捨てたあの女に対して、まだ僕は...」


中山さんが悲しい表情をする。


「付け加えるなら、20歳前後の女性...恐らくは貴方を産む前の母親を殺害する事で、貴方は自分の過去を否定したかったんじゃありませんか?」


「はは...ははは......参ったな...この...僕が......?」


中山さんが悲しく笑う。


「だからこそ貴方は、事件現場全体を支配して自分を演出なさろうとした。

模倣犯が生まれる可能性も最初から考慮なさっていたのではありませんか?

実際、5人殺害されている地域がありましたが、あの内の一件は今回の神月浜町における事件と同じ様に、模倣犯が関与していた可能性が高いと思われます。

......自分こそが先導者であり、何者にも縛られない。

過去の自分を払拭する為に、貴方は そう思いたかった......

警察が口止めしていた情報を流したのは貴方自身だったのでは?」


「そう...その通りだよ......

...ただ......過去の自分を払拭する為だけだったかっていうと......それは違うかな」


さっきまでの悲しい表情が少しずつ薄れて行き、目が狂気の色を帯びていく。


「僕達はさ、自由でないといけないんだよ!

だから、僕が自由にしてあげたんだ!心を解放してあげたんだよ!

きっと、彼等も殺したい相手の肉を抉っている最中は楽しかったんじゃないかなあ。

...ああ、でもあれじゃすぐに捕まっちゃうよね。

残念だなあ、実に残念だ......

折角自由になれたのに...!」


中山さんが涙を流し始める。


「ねえ、君...君はもっと自由になりたいって思わないの?」


「うーん、私はもう十分に自由なので、別に思いませんね。

自由かどうかを決めるのって、結局は自分の心じゃないですか。

そういう意味では、貴方を縛り付けていたのは、貴方のお母さんでも警察でもなくて、貴方自身だったんじゃありませんか?

まあ、価値観なんて人それぞれですから、貴方の好きになさったら良いと思いますけど、その結果、貴方が私や私の周りの人達の命を奪い、心の自由まで奪うっていうなら、私は徹底的に貴方を暴いて、全てを白日の下に晒すだけです......探偵としてね」


「あははははははは!!

何から何まで僕の完敗って訳か!これは傑作だ...!

どうかな名探偵、僕の卑小さを暴いて、僕を罰した気分は!?」


「どうも感じませんよ。私は早く家に帰って、夕飯を食べてゲームがしたいんです。

大体、私は暴く人間であって裁く人間じゃありませんから、罰を受けたと感じるのは、貴方自身がそう望んでいたからなのでは?

だって貴方の署名は一見、自分は見えない存在として場を支配しているっていう、世間や警察に対するメッセージに見えない事もないですけど、本当は見られたくなかったんですよね。

自分自身が誰よりも分かっている、今でも子供のままの小さな自分に。

或いは気付いて欲しかったんじゃありませんか?

貴方の母親に、自分はここにいるって。微かに残る母親との記憶を再現して、そのまま居なくなってしまった母親に対して怒りをこめて」


───いないいないばぁ


私の言葉で中山さんは膝から崩れ落ち、人目も憚らず、まるで幼い子供の様に泣き始めた......



その後、美月さんが中山さんに手錠をかけ、近くの道路に待機させていたパトカーに彼を乗せた。


中山さんは警察に包囲されていて、もう既に何処にも逃げ場がなかったのである。


「終わったね...」


「うん...」


お姉ちゃんの言葉に私は頷く。


「私は華凛ちゃんがいれば、それだけで幸せだよ」


「私も...お姉ちゃんがいてくれれば、どこでも幸せ...だよ」


面と向かって言うにはちょっと照れるけど本心だ。


「ふふ、ありがとう!

......でも、華凛ちゃん、ゲームもないと駄目なんじゃない?」


お姉ちゃんが悪戯っぽく微笑む。


「そ...それとこれとは話が別でしょ!」


そう言って私達は笑い合った。


「おっ......なになに、私も仲間に入れてよ!寂しいじゃん!」


美月さんがやって来た。


「...華凛ちゃん、華澄ちゃん...今回も本当にありがとう」


美月さんが私達に敬礼する。


「美月さん達、警察の方々の協力があってこそです。こちらこそありがとうございました」


私達は美月さんにお辞儀する。


「...さてっと...もう遅いし、これから私の奢りで焼肉でも食べに行っちゃう?」


「えっ、良いんですか!?でも流石に財布の中身がまずいんじゃ...」


「ん~?そんな事はな......あっ!」


美月さんの顔が青ざめる。


「やっば...もうあんま残ってねえ......

やっ、やっぱ割り勘って事じゃ...ダメ?」


私とお姉ちゃんは互いに顔を合わせて笑う。


「もちろん良いですよ!じゃあ早速行きましょう!」


さーって、焼肉食べるぞ~♪

美味しいお肉が私を待っている~♫


気付くと、さっきまでの土砂降りが嘘の様に雲が晴れ、月が優しく私達を照らしていた。


もう雨の時期も終わりかな。


そんな事を考えながら、焼き肉が楽しみで軽くスキップしつつ、私は美月さんの車に乗り込んだ。

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