表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/28

Hell´s Gate1

目を覚ますと、車は高級住宅街を走っていた。


時刻を確認すると19時45分だった。


...あれ、まだ家に着いてないのか。

もしかして巡回してるのかな?


「お!おはよーう華凛ちゃん!目覚めはどうだい?」


美月さんが元気良く聞いてくる。

お姉ちゃんはニコニコしている。


「すみません、寝落ちしちゃいました...でも、ちょっと寝たら、かなりスッキリしました!」


「おう!そいつは良かった!

んで今の状況なんだけど......」


「東雲さんの件もありますし、一応この辺りを巡回してる......ですよね?

多分、お姉ちゃんの提案かな」


お姉ちゃんが微笑みながら頷く。


「流石華凛ちゃん、察しが早くて助かるわ~!

...明日も学校だし、もう帰った方が良いんじゃないかって言ったんだけど、華澄ちゃんがどうしても一緒に回りたいって言ってくれたからさ......

やっぱ私と離れるのは寂しかったかい我が嫁よ!」


まだ続いてたんだ、その設定......

お姉ちゃんはニコニコしながら「ふふ」と笑って華麗にスルーする。


「流石に露骨な不審者とかはいないと思いますけど、今の所どんな感じですか?」


「特に何もないね~。華澄ちゃんにも手伝ってもらってるんだけど」


その言葉に お姉ちゃんも頷く。


「そうですか...」


あの悪い予感が再燃し始める。


そうあれは恐らく......


「美月さん、次は神月台の方にも行ってみませんか?」


「うん?ああ、良いけど、どうして...」


美月さんがそう言いかけた時、無線に連絡が入る。


「...えっ......!?」


無線から出た雑音混じりの声が告げた言葉に、美月さんの表情が固まる。


「......了解」


美月さんの声に緊張がこもるのと同時に、車がスピードを増した。


ここからだと聞き取りにくかったが、神月台、刺殺体といった言葉が辛うじて聞き取れた。

再び事件があったのだろう。


「事件ですね美月さん」


私がそう言うと


「...うん。神月台に上がる階段の途中で、男子高校生の刺殺体が見つかったって」


話を聞く感じだと、事件現場は1番目の事件とそっくりだなと思う。


「その男子高校生ってもしかして...」


「うん。制服から神月高校の生徒だろうって」


「そうですか......」


また、神月高校、しかも今度は男子学生...か。


「そういえば華凛ちゃん、さっき神月台に向かって欲しいって言ってたよね?

どうして何かあるかもって思ったの?」


「実は私にも良く分からないんです...虫の知らせっていうか。

ただもしかしたら、今回のシリアルキラーが関与していると思われる過去の事件の情報が、無意識下で私に犯人の思考をトレースさせているのかもしれません。

一応場所についての情報は、ある程度ニュースやネットでも知る事が出来てたので...」


「なるほど......じゃあ華凛ちゃん、犯人の逃走ルートとかって分かりそう?」


「そうですね......多分...なんですけど、まだ逃げてないんじゃないかな」


「えっ、どういうこと華凛ちゃん?」


私の言葉に美月さんが驚く。


「本命は違うんじゃないかなって......

美月さん、神月台では見通しの良い場所ほど注意していて下さい。

あと、もし現在手が空いている警察の方がいらっしゃるなら、そういった場所の周辺部分──例えば緑道等を注意するよう言ってもらえますか?」


「わ...分かった!」


美月さんが無線で指示を出す。


急な坂を登り、車は神月台へと入った。


左右が壁に囲まれ溝の様な道になっている場所では、出来るだけ歩道橋の方に注意を払うようにした。


お姉ちゃんも意識を集中している。


生きている人間に対して能力は使えないものの、半径3m以内を3Dスキャンすれば、人がいるかどうかは分かるので、多少暗い場所や、この幹線道路沿いみたいに、歩道に高い植栽帯がある様な場所でも問題無い。


...この時間帯は会社帰りと思われる人がちらほら歩いている位で、殆んど人通りはない。


特に何も無いまま、現場付近に辿り着いた。


巡回する人が増えたみたいだから、それが抑止力になると良いけど...でも或いはもう...


嫌な予感がまだ消えないまま、神月台のいわば外縁にあたる部分に、幹線道路沿いの歩道から階段で上り、さらに外縁から神月台の外に続く階段を下りて、現場へ向かう。(ほ15)


警察の人達が数人集まっている。


1番目の事件現場を彷彿とさせる様に、階段は木々に囲まれており、電灯が疎らで薄暗い。


美月さんが現場の警官から話を聞いている間に、私達は事件現場を調べる事にした。


周りの人達に軽く挨拶をしつつ、遺体の前までやって来る。


髪はアップバンクショート、身長は大体170cmちょいの学生服を着た男子が、胸から血を流して仰向けになって倒れている。

撥水リュックが背中の下敷きになっていた。

靴はやっぱり登校用のシューズを履いている。


遺体の両手は、これまでと同様に目を覆っていた。


学校帰り......だとすると、自宅は階段下付近だろうか?

しかし、部活は禁止になっているはずだから、遅くまで委員会の仕事をしていた事になるが......


...或いは、遊びに行ったか、バイトに行った帰り......?


それなら、これまでの事件から、犯人が被害者の行動パターンを把握しているのは間違いなさそうなので、シフト時間が決まっているバイトの可能性が高いか。


近くには会社員らしき女性もいた。

多分第一発見者だろう。


調査はお姉ちゃんに任せて、私は女性に話を聞いてみる事にした。


「大変でしたね...死体を目撃する事になってしまうなんて......」


発見時のショックで未だ動揺しているのだろう。

女性は高校生の私が話しかけても気にする事なく


「ええ......本当に......」


と、暗い表情をしながら答えた。


「平日は、いつもこの位の時間に ここを通るのですか?」


「はい...会社を出るのは大体決まった時間ですし、ここを通った方が自宅に近いので......」


多分階段近くにあった団地に住んでいるのだろう。


確認すべき事は確認出来た。


「大変な状況の中、質問に答えて下さってありがとうございました」


私はペコリとお辞儀をし、お姉ちゃんの側まで行った。


「お姉ちゃん、どんな感じ?」


私はテレパシーで聞いてみた。


「被害者の死因は、心タンポナーデによる急性循環不全。

第4、第5肋間から心臓を、今までの事件と同じ、細く鋭利な物で刺されてる......多分被害者が亡くなるまで1分もかかってないんじゃないかな。

雨の強さや直腸温、死後硬直の度合いや死斑の形成状況、mRNAの分解具合から総合的に考えて、死亡推定時刻は19時20分から30分までの間だよ」


「肋間を正確に狙うって、かなり難しいよね?」


「うん。解剖学の知識と技術がないと先ず無理だね」


「そうだよね......他には何か気付いた事とかある?」


「前回と違って心臓の傷口が綺麗な事かな。

刺したあと返り血が出ないよう、被害者が亡くなったのを確認してから、冷静に凶器を引き抜いたんだと思う」


なるほどね......


「あと、学生服の胸ポケットに生徒手帳が入ってた。

被害者の名前は朝比奈あさひな がくさん。神月高校の三年生。

さっき警察の人達が関係者に聞き込みを始めた所だよ。

それと、今回もニトリルが遺体の顔や手から検出された。

強い雨が降ってなかったら、犯人のDNAも採取出来たかもしれないけど、その辺りは犯人も計算にいれてるんだろうね」


「そっか......ありがとうお姉ちゃん」


さて、じゃあ美月さんに報告......


「...えっ!?...り、了解!至急そちらに向かいます!」


再び連絡が入り、美月さんが慌てている。

やっぱりこういう展開になったか......


私とお姉ちゃんは美月さんのもとへ駆け寄った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ