Sports Battle2
神崎さんと向かい合う。
特に筋肉に緊張が見られない。
とてもリラックスしているなと思う。
さっきのお姉ちゃんのプレーを見て動じない辺り、練習している人は流石に違うなと感じた。
神崎さんの左膝が少し落ち、重心が左に移動していく...が、やや余力を残している感じがする...それはつまり...
神崎さんが素早く右に切り返し、私を抜こうとしたが、動きが読めていた私は、神崎さんからボールを奪っていた。
「えっ!?なんで分かったの!?」
「あはは、たまたまですよ、たまたま!」
「さっすが華凛ちゃん!」
「やったね華凛ちゃん!」
お姉ちゃんと美月さんが褒めてくれた...なんか照れる。
私はドリブルをし、ラインの外に出た。
先ずは状況を把握する。
美月さんについていた人が、今はお姉ちゃんについていて、お姉ちゃんは二人にマークされている。
神崎さんに悟られないように、美月さんを周辺視野で眺めると、どうもパスを求めている様だ。
取りあえず今は美月さんにパスするしかないか。
私はお姉ちゃんにパスするふりをして、美月さんにパスを出した。
フリーになっていた美月さんはそのまま、ゴール下までドリブルをし、ゴールにボールを置きに行くような感じのシュートをして、見事に決まった。
あー、えーと...確か...レイアップ...っていうんだっけ?
美月さん、バスケやった事あるのかな?
「よぉし、決まった!昔、漫画で読んで、ずっとやってみたかったんだよね~!」
......この人も凄いな......
「ちょっとちょっと!ただのバレー部兼新聞部じゃなかったの!?」
神崎さんが動揺している。
「くっ~!!絶対に取り返すんだから!」
神崎さんに火がついたみたいだ。
はあ、これは大変そうだな......
神崎さんの動きと共に、他のメンバーの動きも格段に変わって来た。
私のシュートの成功率が低いと見たのか、神崎さんが私と少し距離を取り、お姉ちゃんをマークし始める。
高めのパスを出しても、神崎さん達のブロックが上手く、お姉ちゃんが中々動けない為、ゴール付近にパスが通らない。
そこで私が切り込みつつ、近場からシュートを狙って行く......が成功率は3回に1回と言った所だった。
それでも全く入らない訳ではない為、ゴール付近まで切り込めば、神崎さんの注意を惹き付ける事がある程度は出来るようになった。
ただ、それは当然神崎さんにも分かっているので、相手の隙を突いて、一瞬フリーになったお姉ちゃんにパスを出した時、神崎さんがすぐに引き返した──
が、お姉ちゃんがダンクする勢いが強過ぎて、神崎さんが吹っ飛ばされてしまった。
「...だっ、大丈夫ですか!?」
お姉ちゃんが神崎さんを心配する。
「いたた...あっ...うん大丈夫!
今のは私が悪かったから気にしないで!
...それにしてもさ、あなたフィジカル強すぎじゃない!?」
「ありがとうござ......あっ、いえ、すみません...!」
褒められた事に対してお礼を言おうと思ったものの、状況が状況だから思わず慌てて謝ってしまうお姉ちゃんが、珍しいなと思いつつも、なんか可愛いなと思った。
「あはは、あなた面白い人だね!
次は負けないから!」
「はい!よろしくお願いします!」
スポーツ選手って、こういうところ格好良いな......
その後は一進一退の試合展開で、相手もきっちりこちらの動きに対応してくるが、私達も相手の動きに対応していく。
残り15秒。同点で相手のボールという状況になった。
しかし、これまでの試合から、相手の動きの癖の様なものが分かっていたので、残り数秒の時点でボールを奪い、私はラインの外に出た。
お姉ちゃんは相手のディフェンスに少し苦戦しているみたい...
これはもう一か八かやるしかないか。
私は意を決して、ライン外からシュートを試みる。
しかし、神崎さんも当然それを読んでいたらしく、成功率が低いからと油断せず、しっかりシュートを防ごうとする。
しかしこうなると思っていたので、私は後ろに飛び下がりながらシュートをうっていた。
全員の視線がボールに集まる。
ボールは空中に弧を描きながら、しっかりゴールまで到達し、リングの中に吸い込まれていく...が、回転したボールがリングから吐き出されてしまった。
同点で終わりか......と思っていたら、全員の視線がボールに注がれている隙に、いつの間にかゴール下まで辿り着いていた美月さんが高く飛び上がり、リングに弾かれたボールをゴールの方へ押し出し、ボードに跳ね返ったボールを、これまた いつの間にか来ていたお姉ちゃんがそのままリングに叩き込んだ。
......やっ、やったぁ!!
嬉しさのあまり私は思わず飛び上がり、お姉ちゃんと美月さんの元に駆け寄ってお姉ちゃんに抱きついた。
「やったね、お姉ちゃん!」
「ううん!華凛ちゃんが良いシュートうってくれたからこそだよ!それに美月さんも!」
「ほんと!格好良かったです美月さん!」
「ふふ~ん!まあ?覚醒しちゃったって感じ?バスケットマンの血ってヤツがさ!!」
興奮し過ぎて何を言ってるのか良く分からないけど、この場合の"バスケットマン"は恐らく、バスケット人間という事なのだろう。
「そんな事より~、ほい!!」
美月さんが両手をあげたので、私達は三人でハイタッチをした。
「あ~!!負けた!!悔しい~!」
神崎さんが凄く悔しそうだ。
「......ふぅ...でも、楽しかったし、何より私達に足りない部分とかも見つけられて勉強になったよ。
対戦してくれてありがとう!」
神崎さんが手を差し出したので、私も手を差し出し握手した。
「いえ、こちらこそ!バスケって凄く楽しいですね!」
私が笑顔でそう言うと、神崎さんも嬉しそうにニッコリ笑った。
ああ、なんか良いなこういうのも。
その後も、それぞれがお互いに健闘を称えあった。
「あ、自己紹介が遅れました。私、月代華凛っていいます!清月女学院の1年生です!」
「ああ、そういえば部活だけしか聞いてなかったんだっけ!
私は神崎 陽菜。神月高校の2年生よ。よろしくね、華凛ちゃん!」
陽菜さんのチームメイトや、お姉ちゃんと美月さんもそれぞれ自己紹介を始めたが、美月さんはお姉ちゃんと同い年という設定だった。
うーん、下手に3年っていう設定だと受験とかあるし、仕方無い......のか?
私はなんとなくモヤモヤした。




