Sports Battle1
嫌な予感は依然として残ったまま、目的地であるPLAY PORT神月店に到着した。
施設の中に入る。
入り口でリストバンドの様な物を店員さんにつけてもらった。
へぇー、出る時にまとめて支払うって感じなんだ。
両替とかしなくて良いし便利だな。
さっきまでの予感はいつの間にか消え去り、新鮮な光景にワクワクして来た。
フロアマップを確認する。
バスケットリングがあるのは、どうやら屋上らしい事が分かった。
わー、ゲームコーナーもあるんだ、行ってみたいな......でも、まあ、流石に今日は我慢しよう......
そんな私に気付いたのか、お姉ちゃんがニコニコしていた。
美月さんを先頭に屋上まで上がって来た。
バスケの他にもサッカーや、バドミントン等色々出来るっぽい。
ボウリングやサバゲーコーナーみたいなのも下の階にあったし、結構盛り沢山なんだな。
バスケットゴールが幾つかある方向に向かうと、私と同じ位の年齢の女子が、4人でバスケをしているのが見えた。
多分、あの中の一人が神崎さんだろう。
こういう時は、私が話しかけた方が警戒されにくいかもしれない。
私は美月さんの前に出て、4人に話しかける。
「こんにちは、お忙しい所すみません。少し良いですか?」
4人が一斉にこちらを見る。
「私達、清月女学院の新聞部なんですけど、今ニュースになってる事件を取材して回ってるんです。
良かったらお話を聞かせていただけませんか?」
かなり直球だが、下手にさっきの様な"友達"作戦で行くと、神崎さんにバレてしまう可能性もある。
美月さんは...まあ、顧問の先生って事で行けるだろう。
「事件って...ああ、永瀬の事ね。
アイツに他に話せる様な相手がいなかったってだけで、別に私、そこまでアイツと親しいって訳でもないんだけど。
たまたま小学校の頃から同じクラスになる事が多いってだけでさ」
4人の中では一番小柄...といっても、身長は165cm位。
髪型は高めのポニーテール。
服装は白のオーバーサイズパーカー、ハーフパンツといったポリエステル主体の服装に、白いバッシュという感じの女子が答えた。
多分この人が神崎さんで間違いないだろう。
「それでも構いません。少しでも何かご存知の事があれば、教えていただけないでしょうか?」
「ふーん、なら良いけど...ところで後ろの二人、凄く背が高いけど、本当に新聞部員?
なんかスポーツやってんじゃないの?」
んん?私の聞き間違いか?
今美月さんも新聞部員みたいな言い方してなかった??
美月さんをちらっと見ると...なんかめっちゃ喜んでる!
「あっ、やっぱ分かっちゃいます?
実は私、バレー部と掛け持ちなんですよ~」
美月さんがノリノリで答える。
「あー、やっぱりね...」
いや、"やっぱり"じゃねえわ!
大体服装が私達と違うのに、そこはスルーなの!?
ツッコミ不在の状況に、私は身悶えしそうになった。
「ねえ、今から3x3をやって、あなた達が勝ったら話すっていうのはどう?もちろん、ハンデはつけるよ」
お姉ちゃんがいるとはいえ、流石にこれは厳しいんじゃ......
「良いね~!その勝負乗った!!」
...はっ?
私は美月さんの所に駆け寄り、小声で話す。
「いやいやいや、美月さん!大丈夫なんですか!?私、バスケなんてルールを辛うじて知ってる位のレベルですよ!?」
「だいじょぶだいじょぶ♪
いっちょぶちかましてやろうぜ!!」
...あっ、これ、ダメなやつだわ......
何が大丈夫なのか分からないが、これはもう流れに身を委せる以外にないだろう。
お姉ちゃんの方を見ると、お姉ちゃんは楽しそうに微笑みながら、私にガッツポーズをとった。
...あっ、これ、お姉ちゃんもやる気だわ...
私は心の中の動揺と少しの孤独感を抑えこみつつ、平静を装い
「すみません、お待たせしてしまって...作戦会議は済みましたので、いつでもいけます...それでハンデというのは...?」
「私達が3回ゴールを決める前に、そっちが1回でもゴールを決められれば、そっちの勝ちっていうのはどう?」
それだったらいけるかも。
「はい、じゃあそれ......」
「ハンデなんていらないっしょ!折角なんだから、真剣勝負しようぜっ!」
美月さんが燃えている。
......ゲームだったら台パンしてるか、コントローラー投げてるわ~。
大体、勝てる算段があるのだろうか...?
...いや、この感じは多分無いな。
「後ろの人は ああ言ってるけど...どうする?」
「すみません。じゃあハンデ無しという事で...」
「ふーん、本当に良いんだね?後悔しても知らないから」
「はい...よろしくお願いします...」
本当は良くないが、美月さんがあの調子じゃ、ハンデ有りだとやる気になってくれないだろう。
だったらまだ、ハンデ無しの方が良いんじゃないだろうか。
あとで美月さんに拗ねられても困るし。
「じゃ、せめて先行はそっちからって事で。
審判は私のチームメイトがやるから心配しないで。
因みに3x3のルールって分かる?」
「普通のバスケットのルールとは違う...んですよね、やっぱり」
「うん、色々違う部分はあるんだけど、取りあえず攻める側は12秒以内にシュートするのと、フリースローラインより内側では、3秒以上ボールをコントロールするのは禁止。
ボールをとられたりとかで、攻守交代した時はアーク──3ポイントラインの外に一旦出るって感じかな」
はー、なるほどね。
よりスピーディーな展開になるって訳か。
「で、今回は真剣勝負って事だから、3ポイントラインの外側から入れた場合は2点、内側は1点って事で、21点先取するか、10分過ぎて点数が高い方が勝ちって事で」
いや、流石にそこまで真剣にしなくても......
「いいねいいね!燃えてきたぜ!」
あー、もっと真剣に燃えてる人がいたわ!
でも美月さん、体力的に大丈夫なのかな......?
「じゃ、やってみよっか」
神崎さんにボールを手渡され、私達はそれぞれ配置についた。
「えーっと、確か最初に相手にパスするんでしたよね?」
「そう!よく知ってるじゃん」
前にテレビかなんかで見た気がするんだよな。
神崎さんにボールをパスし、神崎さんからボールが返って来て試合が始まった。
さて、どうするか......ちょっとズルいかもしれないけど...
「お姉ちゃん、ゴール前に高めのパス出しても取れる?」
私はテレパシーで呼びかける。
「華凛ちゃんのパスだったら、どんなパスでもぜっっっったいに取るよ!」
お姉ちゃんが珍しく熱くなってる。
よーしそれじゃ......あっ!
やば...ちょっと力が入り過ぎちゃった...流石にこれは高過ぎだよね......
相手チームに少し楽勝ムードが漂いかける...が───
お姉ちゃんが相手の隙をついてゴール付近に駆け寄ったかと思う間もなく、突然高いジャンプをし、空中でボールを掴み、そのままダンクシュートを決めた!
......はっ?何あれ_?
私も、相手チームも、驚きのあまり思わず口が開いたままになっていた。
が、美月さんだけは「イエーイ先制てーん!」と言って、はしゃいでいた。
「うわぁ!やったよ華凛ちゃん!夢中でやったら、なんか出来ちゃった!」
お姉ちゃんもはしゃいでいた。
.........。
「あ、あの人って、バスケ部掛け持ちとかなんだよね、流石に...?」
神崎さんが、驚愕のあまり、少し震えながら聞いてきた。
「いえ、掛け持ちとかは特に...あと、あの人は私の姉です...」
「あなたのお姉さんって何者なの...!?
...ま、まあ良いわ!試合は始まったばかりだし!」
そうだよね。最長10分間も戦えるのか正直不安だ。
ゴールが決まっても、普通に試合が続行するらしく、相手チームがボールを運び、ラインの外から再び仕切り直した。
よーし、とにかく今は集中しよう!




