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馴れ初めを聞かれても困る  作者: 青木りよこ
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我に尽くせ

緑の葉物を買っていないことに気づき、青果コーナーに戻り、小松菜とトマトを入れ、アクエリアスとアクエリアスゼロとダカラの五百ミリペットボトルを入れた。

お菓子のコーナーで待っている芙蓉のところに行くと、両手に抱えたブランチュールとアルフォートの袋を二袋ずつ籠に入れ「忍、百円じゃ」と言った。


「お前とくると、買い物籠がえらいことになるな」

「何を言う。我が食べられなくなったら、お前は終わりぞ。これでも足りんくらいじゃ。もっと我に尽くせ。忍」

「ああ、そうだな」


高遠忍は五つあるエスカレーター前のレジの真ん中の三番レジで精算を済ませた。

この三番レジで今から丁度一時間前、高月渚が同じように精算を済ませ、急ぎ足でで家に帰っていった。


夏休み初日の金曜日、高月渚は午前中は学校で部活。

午後からは友人の家でフィギアスケートのアニメを見た。

友人の家を出る前に母親から牛乳買ってきてとのラインが入ったので駅前の平和堂に寄って帰ることにした。

高遠忍に電話番号は聞いたものの、結局今のところ一度もかけたことはなかったが、連絡先の高遠忍という文字を見るだけで元気になる自分を彼女は自覚していた。


明日は約束の土曜日だ。

高遠君に逢える。


それを思うと楽しみで仕方がなく思わず笑みが零れた。

あの美しい姿を近くで見れるかと思うと、あの澄んだ声がこの耳の鼓膜を震わすのかと思うと鼓動が逸るのを感じ、見慣れたスーパーの外観さえ洒落たものに見えた。

店内に入り、地下の生鮮食品売り場への階段を下り、彼女はふと明日何か手土産を持って行かなくていいのかということに気づいた。


高遠忍に夏休みなのに逢えるという事実に彼女は浮かれすぎ、すっかり忘れていたが、彼女のお腹は相変わらず爆弾が仕掛けられたままだった。

毎日お風呂に入るたびに白鼠が頬を膨らませながら献身的にごしごしするのが日課になっていた。

九ちゃんにお土産買わなくちゃ。

彼女はとりあえずグレーのお買い物かごを左手に持ちお菓子のコーナーに歩いていった。

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