訂正
「胸ばかり大きくてもの、大事なのは首から上であろ?結婚したら一生この顔見て暮らすんじゃぞ、
渚は贔屓目に見ても顔だけなら平均よりちょっと上、せいぜい七十二点ってところかの、首から下は、百点満点じゃけどな」
「何を言っている、芙蓉。高月渚は可愛いだろう」
頬を膨らませ、大きな赤い瞳を見開き、反論しようとした、小さな鬼よりも先に高遠忍は酷く真面目な調子でそう言った。
まるで滋賀県の県庁所在地を答えるかのごとく、当たり前のように、正確に。
これに一番驚いたのは高月渚である。
彼女は驚きの余り、思わず、目の前の九ちゃんをぬいぐるみのように抱きしめ「高遠君、私のこと可愛いと思ってるんだ?」と大きな声で言った。
高遠忍はそんなこと聞き返されるとは思っていなかったので、頭に疑問符を浮かべたまま、
「ああ」と至極冷静に言った。
彼からしたら、ありのままの事実を述べただけであり、何ら驚かれることではなかったので、心外だった。
高月渚が可愛いのは彼にとっては、何でもないことだった。
彼は芙蓉の高月渚への評価が余りにも低かったので、それを的確に訂正したに過ぎなかった。
それは、朝から雨が降っているにもかかわらず、芙蓉が「いい天気じゃな」と言った時に「今日は雨だ」と言って、彼女の誤りを正す、それと同じことだった。
だから高遠忍には彼女が何故、狼狽え、九ちゃんを抱きしめ、視線を逸らすように俯いたのか、
全く理解に苦しんだ。




