鬼嫁
「いいではないか、鬼嫁」
「菅田将暉?」
「鬼ちゃんか」
「高遠君、鬼ちゃん知ってるんだ?テレビ見るんだ?」
「見るに決まってるだろ、あんた俺を何だと思ってるんだ」
「ごめんなさい、何て言うか、浮世離れしてると言うか、あんまり綺麗で、麗しいから」
「はあ?」
高遠忍は何言ってるんだ、コイツと言う顔を隠しもしなかった。
「主は面食いか?なら良かったの。酒呑童子はイケメンじゃぞ」
「そうだよ、ママ」
「そうだよって、あなたが酒呑童子なんでしょう?」
「うん、そうだよ、ああ、ちょっと違う。僕は酒呑童子だけど、ママと結婚するのは僕じゃない酒呑童子。背が高くって、筋肉ムキムキでイケメンの酒呑童子だよ」
「ごめん、よくわかんない」
「だから、僕は酒呑童子だけど、酒呑童子じゃなくて、うーん、酒呑童子の切り落としなの」
「切り落とし?」
我ながら上手く言えたぞと、九ちゃんはエッヘンと偉そうに胸を張る。
切り落とし?そう言われて彼女の脳裏に浮かんだのは、きはだまぐろである。
薄い赤身のお刺身。
あの切り落としはどうやって加工されているのだろう?
機械?それとも調理師さんが包丁で一枚一枚薄く切っているのだろうか?
彼女はベルトコンベヤーに乗せられた九ちゃんが「薄いのー」と言って流れていくのが想像でき、何だか居たたまれない気持ちになり、目の前の子供の願いを叶えてやりたいような気がしてきた。
そんな簡単に絆されそうになっている高月渚に冷静になれとばかりに高遠忍が何の抑揚もない声で言った。
「なら、お前は酒呑童子の本体ではないわけだな」




