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馴れ初めを聞かれても困る  作者: 青木りよこ
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ファンタジー用語

「結婚?」


彼女は余りに現実感の乏しい言葉に驚きそこだけ抜き出し聞き返した。


「うん、ママ、首こっくりしたよ、約束成立。陰陽師は知ってるよね?人間の約束は破っても大丈夫だけど、妖怪の約束は絶対なんだよ」


そう言って九ちゃんはにっこりと高遠忍に笑った。

自分の勝利を確信しきっているような笑みだった。


「どういうこと?」


彼女は縋るような声でベッドのすぐ傍に腕を組み無表情で立っている高遠忍に聞いた。


「あははははははははははは」


高遠忍が口を開く前に天井から芙蓉のけたたましい高笑いが聞こえた。いつの間にか宙に浮き、口元に手をやっている。


「芙蓉」


高遠忍が咎めるように花の名を呼ぶ。


「だって、可笑しかろ?まあ、こやつが全部悪いわな、非力な人間風情が山に入るからじゃ、自業自得。

約束は約束。諦めて、嫁になるんよな」

「芙蓉」

「忍だって、わかっておるであろ、妖怪の約束は破れん、そいつはママになってと言った、こやつは頷いた。約束は成立じゃ」

「そうそう、ママ」

「ママって・・・・・・・・・・・・・・・」


はっきり言って高月渚に実感はなかった。

ママもそうだが、結婚。

結婚はいずれはするだろうし、したいと思ってはいるが、それは大人になってからの話である。

だって、高月渚の上の姉は今年二十五になるが、今だに一度もお姉ちゃんの彼氏として男の人を紹介されたことはない。

下の姉も同様だ。

上の姉は「ジークフリートさんのせいで、夢女子になってしまう、夢女子だけはならぬと心に誓っていたのに」と言ってスマホを見ていたし、下の姉も「前世でどれだけの徳を積んだら、日野聡と結婚できるんだろ」と言ってパソコンを見ていた。


結婚は高月渚にとって、陰陽師や酒呑童子同様ファンタジー用語だった。

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