数字の九
「あなた、ひょっとして、佐和山に、いた?」
彼女の記憶にある赤い瞳は佐和山で見たあの丸い瞳だけである。他の赤い瞳を現実世界において彼女は知らない。
赤い髪の男の子はぱああと可愛らしい顔を喜びで輝かせ「ママ、思い出してくれたんだね」と言い、抱き着くと、それまで彼女の太腿でおとなしくしていた白蛇が迷惑そうに剥いでて来て彼女の首から優雅に顔を見せた。
白鼠は下着の奥に丸まったまま眠っているのか、動きがない。
「うん、そうだね、逢ったよね。そうそう、この目とほっぺ」
そう言って高月渚は赤い髪の男の子の頬を両手で優しく撫でた。
男の子は「ママ、もっとやって」と言い、にこにこ笑っている。
高月渚もつられて笑った。
「そう言えば、僕、お名前なんて言うの?」
「九ちゃん」
「きゅうちゃん?」
「うん、酒呑童子の九ちゃんだよ」
「酒呑童子?あなた酒呑童子なの?」
「そうだよ、九ちゃん、数字の九」
童ちゃんじゃないんだ。
何か本当に和風ファンタジーっぽくなってきたな。
そんな呑気な事を考えていた高月渚と彼女に抱き着き甘える九ちゃんを氷でできた武器のような高遠忍の声が遮った。
「お前が本当に酒呑童子か?」
「そうだよ」
「そうか、まあ、それはいい。それより約束って?何なんだ?さっさと言え」
「うん、何なの?教えて?」
「この間、お山で、ママ黒いのに捕まってたでしょ?」
「うん」
「だから、僕、ママに言ったの、助けてあげるから、酒呑童子と結婚して、僕たちのママになってよって」




