ジョブ
「この間っていつだ?」
「この間はこの間だよ、もう、この陰陽師うるさいー」
「陰陽師?」
高月渚は日常で余り耳にすることのない和風ファンタジー用語に思わず反応し、えいっと起き上がった。
「陰陽師って、高遠君のこと?」
「ああ」
「高遠君、陰陽師なの?」
「ああ」
「そっかー、だからそんな格好してるんだ」
「まあ」
「そっかー、陰陽師かー」
「何なんだ?」
「ううん、そっかー陰陽師って本当にいるんだね?」
「まあ、いるな」
高遠君のジョブは陰陽師だったのか。巫女さんっていうか、召喚士っぽいなーって思ってたけど。
彼女はこれまでの謎が急に解けたかのように、すべての辻褄が合うなと思い、また現実の高遠忍に一歩近づけた気がして嬉しくなった。
「ママー、約束」
彼女の膝の上に跨りしがみついていた子供は構えとばかりに大声で喚いた。
「ああ、ごめんね」
「謝る必要なんてない、取りあえず、高月渚から離れろ」
「やだー、ママだもん」
「ママなわけないだろ、いい加減にしろ
」「ママだもん、約束したもん」
「ねえ、約束って?」
「ママ、覚えてないの?」
「ごめんなさい」
「だから謝らなくていい」
「陰陽師うるさい、黙ってて」
「ごめんね、覚えてないの、教えてくれる?」
彼女は自分にぴっとっとくっ付きなかなか顔を見せない子供の顔を覗き込んだ。
子供は顔を彼女の胸元から離し、彼女の瞳を射抜くようにじっと見つめた。
「ママ、約束覚えてないの?」
高月渚は子供の顔を真正面から初めてとらえ、子供が赤い瞳をしていることに今頃気がついた。
赤い髪は短めで所々跳ね可愛らしい小さな耳を覗かせている。暑い夏にそぐわない白い長袖のシャツに黒い半ズボンに黒いハイソックスを履きいた、丸みのあるポチャッとした頬と赤い好奇心たっぷりといった大きな瞳が実に愛くるしい印象を与える男の子だ。
あれ、赤い目。赤い目って・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。




