恥ずかしい
高遠忍は前のめりになり高月渚の腹部を石板の暗号を解読する考古学者のように真剣な瞳で凝視している。
近い。恥ずかしい。
高遠忍だけが頼りだし、高遠忍に見てもらわなければと思っていた高月渚だったが、まるで高月渚に術式を施すかのような手つきで、こんな風に近くでまじまじと見られるとは思っていなかった。
というより、彼女は何も考えてなどいなかった。
とにかく高遠忍に話さねば。それだけだった。
「ご、ち、そ、う、ようい、して、まつ、て、います」
「へっ?」
高月渚は自分でも変な声が出たなと思った。高遠忍は気にも留めず、続けた。
彼女は恥ずかしさの余り、瞳をギュッと閉じた。
芙蓉は忍の背を椅子代わりにして、麦茶を飲んで知らん顔をしている。
「みひとつできてね、あまいものすき、おおばんやきすき、だいふくすき、いけめん、こだくさん、もとむ、さんしょくひるねつき、せんぎょう、しゅふ、だいすき」
「何それ?呪文?」
「さあ」
とりあえず、わかったのはこれだけだった。
すべてひらがなで書いてあり、だいすきの横に恐らく薔薇の花を描いたと思われる絵と時計の絵が書いてある。
高遠忍は文章よりもこの時計が気になった。
高遠忍は高月渚から少し離れ、ベッドの傍に椅子を置いて見舞客のように腰かけたので、高月渚も瞳を開けて、彼の方へ顔を向けた。
高遠忍の肩から揶揄うような目で見下ろす芙蓉と目が合った。
「ごちそうって、何だろう?」
「そっちか、さあ、何だろうな」
「聞いてみればよかろ」
「えっ?」
「直接そやつに聞いてみたらよかろ」
「直接って、どうやって?」
「もう来ておるではないか」
「えっ?」
「ほれ、もうそこにおる」




