48/404
背中
彼女は何も言えなくなり、ただ黙って高遠忍の背中を見つめた。
こんな風に男の子の背中を見たのは初めてだった。
気にしないでくれって高遠君は言うけれど、一緒に暮らしてないって、何だろう?
聞いていいものかな?
聞かない方がいいんだよね?
同居人って何だろう?
親戚の人とかかな?
彼女がぐるぐると言葉にできない疑問ばかりを頭の中に渦巻かせていると高遠忍が口を開いた。
「部活、今日休みなのか?」
彼女は少し驚いた。まさか高遠忍の方から何か聞いてくるなんて夢にも思わなかったのだ。
「うん、毎週月曜日。あと土曜日か日曜日のどっちかがお休みなの」
「そうか」
「うん、高遠君は」そこまで言いかけ、彼女は口を噤んだ。
部活入らないの?
中学は何部だったの?
中学までどこにいたの?
聞きたいけれど、果たして高遠忍は話したいだろうか?
そう思えば、思うほど、彼の背に言いようのない孤独を感じ、彼女は何も言えなくなり、一先ず高遠忍に個人的なことを聞くのを断念した。
「ねえ、高遠君、これもね、妖怪なの?」
「腹に落書きをするようなストーカーに心当たりがあるのか?」
「ないよ、私目立つ方じゃないし」
その胸囲でか?高遠忍は声にこそ出さなかったが、呆れた顔をした。
だが彼の後ろをおとなしくついてきている高月渚には見えなかった。




