ちゃんと見て
狼狽え、目を背けようとする彼に高月渚は言った。
「高遠君、ちゃんと見て。お腹だから大丈夫だから」
お腹だからといって何が大丈夫なのか。
だがそう言われて見ないわけにもいかず、彼は目を閉じ、呼吸を整え、彼女の白い腹部に目をやった。
涙ぐむ彼女は小さい子供がお医者さんにするように、高遠忍へ向けて素直にお腹を出していた。
彼は彼女の白い腹部をじっと見た。
すると恥ずかしさは失せ、神妙な面持ちになり言った。
「いつから?」
「朝起きたら」
「そうか、昨日寝るまでは何ともなかったんだな?」
「うん」
「そうか」
「どうしよう、高遠君」
「ああ」
「夏休み、プール行けない」
「はっ?」
「夏休み、プール行けないよう、高遠君」
そう言えば、あと三日で夏休みだったな。
彼は完全に冷静になり、彼女の白い腹部を見た。
高月渚の白い腹部全体にびっしりと黒字で何か文字のようなものが書かれている。
彼は彼女にさらに近づき「触っていいか?」と聞いた。
彼女は首を豪快に縦に振り涙の混じった声で「うん」と言った。
高遠忍は彼女の白い腹部に躊躇することなく右手で触れた。
「大丈夫?」
「ああ」
彼女が余りにも幼い声で言うので、彼は努めて優しい声を出そうとしたが、短すぎて彼女には伝わらなかった。
「プール、行ける?」
それか。そんなにプールに行きたいのか?
女子の考えていることはわからないと思ったが、とりあえず言った。
「大丈夫だ」と。




