放課後
高月渚は後悔していた。
あんな書き方で良かったのだろうか?
だが、朝あれを見てしまってから彼女はもう何も考えられず、とにかく高遠君に見てもらわねばと思い、朝ごはんを食べる前の空腹で廻らない頭であれを書いたのだ。
戻ってきた白鼠を彼女はシャツの下からこっそりと潜り込ませると、白鼠は定位置に戻り、その柔らかさとずっしりと詰まった重みを確かめるかのごとく噛みついたりしたが、彼女は怒ったりしなかった。
寧ろ今日はずっと齧ってていいからね、とさえ思っていた。
それくらいのことを白鼠は彼女にしてくれたのだ。
家に帰ったら、うんと優しくしてあげようと思った。
今日は教室移動がなかったので、授業中もずっと彼女は高遠忍の返信を眺めていた。
高遠忍に見せなくてはならないあれを思うと不安でたまらなくなるが、高遠忍の字を見ると大丈夫だと言う高遠忍の声が聞こえてくるようで、彼女は嬉しくなった。
昼休み、彼女はそわそわして落ち着きがなかった。
高遠忍の方を見ても彼はいつもと変わらず、美しく儚く、その繊細な美貌は教室にいて際立っていた。
通常運転な高遠忍に彼女は本当に自分は高遠忍と約束できたのか不安になった。
早く放課後になって欲しかった。
放課後高遠忍は一番に教室を出ていった。
彼女は、部活が休みだから駅前のアルプラ(平和堂)の本屋に寄って行こうという田畑美澄の誘いをドラマの再放送予約してくるの忘れたからと言って断り、急いで教室を出て、校門を抜けると走り出した。
早く高遠忍の顔が見たい。
彼の声を直接聞いて安心したい。
彼女は夢中になって井伊大老の銅像のある公園を目指して走った。
暑さなんて気にならなかった。
心臓が跳ねるのがわかった。
でも走ったゴールの先、そこには高遠忍がいる。
高遠忍が自分を待っていてくれる。
どこから話そう?
なんて言おう?
でも顔を見たらそれだけで、もう何も言えないかもしれないな。
ううん、それどころか嬉しくて泣いてしまうかも。




