緊急事態発生
高遠忍が登校すると、彼の机の上には見たことのある白鼠がいて、彼の姿を認めると手にした紙を机の上に置き、高遠忍に飛びつき、彼の頬を平手打ちにし、机の上に着地した。
高遠忍からしたら、痛くも痒くもないことだったが、朝っぱらから何なんだと思い、高月渚の席のある斜め左方向に顔を向けると、彼女は申し訳なさそうに、手を合わせ俯いた。
細かく畳まれた紙を開け読んでみると、そこにはこの間同様個性のない整った字でこう書かれていた。
「緊急事態発生。人気のない所で見てもらいたいこと有り。返信願います。高月渚」
読み終えると彼は高月渚の方を見たが、友人と話しているため目を合わせることはできなかった。
彼は一時間目の授業が始まるとノートの一番後ろのページを開け、考えた。
白鼠は彼の返信待ちなのか、机の上で仁王立ちになり、頬を膨らませ、高遠忍を睨んでいる。
人気のない所と言っても、校内というわけにはいかないので、彼は自宅に招くことにした。
学校からそう遠くはないし、人気もない。
彼は簡潔にこう書いた。
「放課後井伊大老の銅像の裏で待っている これでいいか?」
白鼠は胡散臭そうに畳まれた紙を受け取ると、もう一度高遠忍に平手打ちをし、机から机を渡り、高月渚のもとへと帰っていった。
白鼠の帰還を祈るような気持ちで待っていた彼女に待望の高遠忍からの返信が届けられると、白鼠は後でたっぷり労わるようにという顔をして見せたが、彼女は高遠忍の返事を読むと、ノートに「ありがとう お願いします」と書き、白鼠に小さく畳んだ紙を持たせた。白鼠は不満を隠そうともしなかったが、今回ばかりは白鼠にとっても忌々しき事態なので再びお届け鼠になった。




