呼ばれなれない
それは予想もしない展開だった。
彼女がこの数か月にわたって想像し続けた、高遠忍とのファーストコンタクトが、まさかこのような形で実現するとは。
光が見えだし幼い記憶を紐解けばもう頂上のはずだった。
何が起こったのかすらわからなかった。
白い塊のようなものが凄まじい速さで落ちてきて、彼女の体では支えきれず一緒に落下した。
当然のように彼女は細い道を転がり落ちた。
あまりの衝撃に白兎は目を覚ました。
痛い。
高月渚は声すら出せずにぼんやりと、自分を心配そうに見つめ、何とか懐に入ろうとする白兎を見つめた。
痛みと驚愕で彼女は中々立ち上がれずにいたが、白兎の後ろに白い大きな布の塊があるのに気が付いた。彼女は起き上がりその白い布の塊に触れた。
彼女が触れると白い布の塊は微かに動き仰向けになると、中からは世にも稀な美しい金髪の少年が苦痛に顔を歪め、瞳を閉じ、頭から血を流していた。
「高遠君」高月渚は山中に響き渡るかのような声で絶叫した。
高遠忍は呼ばれなれないその名前に、自分が呼ばれたのだと理解するのが遅れた。
「高遠君、しっかりして」「高遠君」「高遠君」高遠忍にとって高月渚の声は初めて聴く声だった。
何度も繰り返し呼ばれたことで彼はやっと自分の名を呼んでいる存在がすぐ近くにいることを認識した。
彼は幽かに目を開いた。
目を開くと止めどなく涙を零し、自分の名を呼ぶ少女がいた。
彼は少女を知っている気がした。
見たことがあると思った。
だがどこで見たのかはまだ分からなかった。
何か言おうとしたが、何て言っていいのかわからなかった。




