勝手なこと言うな
「そうなのかなー?」
「勝手なこと言うな。というか、そんな奴と結婚するな。服なんか何着てたって一緒だろ」
「何着てたってってことはないんじゃないかなー。可愛い服着てたら、普通に褒められたら嬉しいよ」
「普通に・・・・・・・・・」
高遠忍は腑に落ちないという顔をした。
したというのが自分でもわかった。
だが表情には出なかった。
だから彼の顔を何気なく見上げた高月渚には彼が何に引っかかったのかわからなかった。
高遠忍は考えていた。普通に褒めるとは何だろうか、と。
その服を褒めればいいのか。それともその服を着ている本人を褒めたらいいのかが彼には分らなかった。
褒める。
褒めるって何だ。
褒め言葉とは。
「ママ。酒呑童子はちゃんと褒めるよ。やれる男だから。だからお嫁さんに来たら着物に割烹着ね」
「着物って、私着付けできないよー」
「そう言う問題じゃないだろう」
「我はできるぞ」
「そうなの。すごいね芙蓉ちゃん」
「ママ、結婚式白無垢着てね」
「えーっと、ウエディングドレス着たいかな。一生に一回だし」
「何じゃ、主は一回しか結婚せん気か」
「えー、そりゃそうじゃないの、一生一緒にいようと思って結婚するんだし」
「甘いの。とんでもないわ。結婚した途端急にDV夫になったらどうする気じゃ」
「酒呑童子DVなんてしないもん。優しくって、力持ちだもん」
力持ちは関係ないだろと高遠忍は思ったが、先ほどの高月渚の普通に褒められたら嬉しいという発言が彼の中で解決できそうもない難問として立ち塞がり、言い争う気力を失わせていた。




