誰でもなれる
「ほら、九ちゃん可愛いって」
九ちゃんは身を乗り出し、高遠忍にえっへんという顔をしてみせた。
「高月渚は可愛いのハードルが低いんだ」
「そんなわけないでしょ、ママ。面食いだもん」
「ほー、そち。面食いなのかえ?」
「えー、自分じゃわからないなー、って私のことはいいよー」
「よくないもん。九ちゃんは可愛いもん」
「うん、可愛いよ」
「ねー」
「ねえ、契約って何?」
高月渚は思い切って聞いてみた。
ドキドキして心臓が裏返りそうだった。
通常の声を出せたかも不安だった。
だが聞き逃せなかったのだ。
だってさっきからずっと色々聞き逃している。本当はもっと知りたいのだ。
高遠忍のことを。彼の穏やかならざるとこも。
全て。
「陰陽師と妖怪の契約。契約を結ぶと、いつでもどこでも陰陽師に呼び出されちゃうの」
答えたのは高遠忍より幾分高い声の可愛らしいコロコロ転がるどんぐりのような声だった。
高遠忍は何も言おうとしない。
やっぱり聞いちゃダメだったのかな。
「そうだ、ママ。ママも陰陽師になったら?」
「えっ?なれるの?」
「なれるよー、ママ妖怪見えるじゃない、ママだったら九ちゃん契約してもいいよ」
高月渚は恐る恐る自分の左側に並ぶ彼を見上げ「なれるの?」と聞いてみた。
「ああ、なろうと思えば、誰でもなれる」
彼は至極あっさりと何でもないかのように答えた。これには彼女も驚いた。
「なれるんだ・・・・・・・・・・・・・・・・・」




