第十七話
短いので、同日に二話上げてます
村にたどり着く頃には、雨は止んでいた。
僕たちが森から僕の家に近づくと、雨戸は開いてして、中からベルンが外を眺めていた。ベルンは僕たちに気づくと、慌てて雨戸から離れる。そして、玄関から移動椅子の車輪を回して出てきた。
ぬかるんだ地面では車輪はたまに空転する。それでも、少しずつ、その両手を動かして近づいてくる。
僕はムツに下ろしてもらった。なんとか立てるくらいには気力が回復している。
歩いてベルンに近く。
「ただいま」
ベルンは僕に抱きついた。そして、その両腕で僕の首をへし折らんばかりに抱き締める。
「遅い」
「ごめんごめん」
僕もベルンを抱き締めて謝る。
「腕、大丈夫? 変な感じしない?」
「平気。元の腕が戻ってきたみたい」
「緑色の腕じゃなくてよかったね」
「爪は緑色だった」
「え、見せて」
ベルンを一度椅子におろし、しゃがみこんで右手の指先を観察する。たしかに、鮮やかな緑色になっている。毛や爪といった部分だけ緑色になっているのは何故だろうか。
なんだか、あれだ、爪紅だっけ。あれしてるみたい。
「……気持ち悪い?」
「全然。だってベルンの手だもん」
僕は右手の中指に接吻した。
うん。これでよし。
顔をあげると、真っ赤な顔をしたベルンが左手を振り上げていた。まるで怒っているみたいだ。珍しい。
次の瞬間、手首の振りのきいた平手が、僕の右頬を打っていた。
「ほんっ……とにっ……」
「いや、一応きちんとやっとかないと駄目かなって思って。女の子はこういうの気にするってデデーさんに聞いてたしシャトさんだって前話していたときにベルンが――」
だからね、そんな怒らないで。
どうやってご機嫌をとろうか、と考えていたら、僕の顔をベルンが両手で掴んだ。そして、僕の額に唇を落とした。
「え? 今のは?」
単純に口付けをされたから驚いたわけじゃない。だって、今のは、求婚に対する返事の作法そのままだったから。
しかし、ベルンはプイと顔を背けて家に向かって移動椅子を動かし始めた。くるりと反転して家の方に向かってしまう。僕がいくら話しかけても返事をしてくれない。
背後ではムツがクックッと喉をならしている。本当に感情表現が豊かな狐だ。
ぐーとまたお腹がなった。
まあ、いっか。
「そういえば、朝御飯、食べたい」
「ちゃんと作ってあるさ、旦那様。ただし、味は保証しない」
「しないの?」
「塩と砂糖だけでは限界がある。まあ、極端に不味くはないだろうから。食べてみて、くれ」
「やった。ベルンの手料理だ。ほら、ムツもおいでよ」
「我は砂糖は苦手なのだがな」
「大丈夫です、砂糖はほとんど使ってありません」
僕はベルンの移動椅子を押して、家の中に入る。
そして、入ってすぐに台所の惨状を見て、ベルンに家事を教えようと誓った。
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