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第1話:「ビバ自殺!!!」

こちらの諸事情により、生えたものをケモミミからツノに変更いたしました。ご確認をお願いいたします。

 さて、在り来たりは置いておくとして先ずは情報確認が必要だろう。と言ってもほとんどなにもわからないから変わったところがないかの確認くらいだけれど。服装は死ぬ前と同じくTシャツと短パン、靴や靴下は履いてないから裸足。

 ああ、そういえば首を切って死んだんだよな。傷は……残ってないな。でも死んだはずなのに生きてるってどういうことだろう? 身体を治してそのまま使ったのかな?

 しかしそれにしてはなにやら頭に違和感があるような……




……え……?





「うっわぁなにこれなにこれ! 頭に何かついてる! これってアレだ! あの鬼とかそういうのでよくあるツノだ!! うわぁ、こんなのが自分の頭に生えてるとか感動でしかないんだけど!! ありがとう自殺! 自殺ハラショー!! ビバ自殺!!!」



 ここまで騒いでおいてなんだけど、一つだけ残念でならないことがある。それは、ボクの髪色。腰近くまである長い髪は床屋で切る面倒と出費を考えて伸ばしっぱなし。もちろん、長過ぎたら自分でなんとか切っていた。でもそんなことはどうでもいいんだ。問題は色なんだ。髪は見ての通り真っ白。そう、真っ白なんだ。色素が抜けたような色だが、ボクは決してアルビノではない。髪色が変わってないなら、瞳の色も変わっていないのかも。ボクの瞳の色は真っ赤な血の色なのだ。

 何を隠そう、この髪色と瞳にはいい思い出などなに一つなかったのだ。生まれた時から髪は真っ白、瞳は真っ赤、原因は不明のまま。学校では悪魔の子だとか言われたりして散々な目にあった。もちろん報復はしっかりとしたから問題ない。

 あの人……ボクの母だった人はこの髪色を見た瞬間に産んだことすら後悔して、挙げ句の果てには監禁を実行し餓死させようとすらしてきた。産んでくれたことに多少なりとも感謝はしているが、だからといって慕っているかというと違う。断じて違う。だいたい監禁して餓死させようとする元親を慕う人はいるのか? いたらそいつはドMだ、気をつけようね。


 ところで、ボクが考えている間もずーっと落ちてるんだけど一向に下につかない。因みにこの場合の下というのは、この宇宙のような空間を泳いでいるクジラのことだ。もしかしたらボクが見ている距離と実際の距離は違うのかもしれない。そう考えるとここは本当にファンタジーな世界だ。本当に死んでよかった。


『ヤッホー!!』


 お、どこかに山でもあるのか? しかし時間が経っても山彦が聞こえてこない。残念だったね、見知らぬ子。さすがにこんな場所に山はないよ。山岳地帯に行くといい。


『あれれ? 無視? お無視なのかしら? あ、もしかしてお虫なの!? おかしいわね、アタシが呼んだのは紛れもなく人の子だったのに。いつの間にかお虫になっていたのかしら? それとも最初から虫だったのを隠していたのかしら? 妄想が膨らむわ〜♪ ああ、本当にこんなに楽しいのは久しぶり!!!』


 なんだなんだ、山彦マシンガントーク少女はボクに話があるのか? あと先に言っておこうボクは虫ではない。寒いダジャレでボクを虫にしないでほしい。

 声のした方に身体を向け、姿を確認した。わお、美少女だ。見た目年齢は中学生くらい、服装は黄色と白を基調としたドレスのようなもの。金髪にカチューシャをつけ、赤の瞳は悪戯っぽく煌めいている。


「あー、あー……うん、声は出るか。ていうかさっき出してたな。あ、そこの子。ボクに何か用かな?」


『あら! お虫じゃなかったのね! うんうん、アタシは貴女に用があるのよ!』


 うんうん、それはわかったから話を進めてほしい。ドヤ顔で指を指すな指を。人に指をさしちゃいけないんだよ。その常識がこの世界で通用するかわからないが。


『とりあえずは自殺成功おめでとう、と言っておくわ! そしてこの世界にようこそ、歓迎するわ!!』


「もしかしなくてもボクにメールを送ってくれたのは君?」


『もちろんよ。ちょうど外から人を呼んだら楽しそうだって話になったから、呼ぶことになってたのよ〜。それが私の管轄範囲の人間から選ぶことになって、今にも死にそうな貴女が見事選ばれたのよ!!』


 つまりこの子の他にも同じようなのがいるってことになる。加えて、どうやらボクたちの世界はここの世界の……恐らく神様に監視、管理されていたようだ。意外とファンタジーは身近にあったらしい。それに気づかなかった自分が憎いよ。


「ところでこのツノは?」


『この世界に来てくれた感謝の気持ちを込めてのプレゼントだけど、お気に召さなかったかしら?』


「当たり前だよ。いきなりでびっくりしたじゃないかありがとう!!」


 本当にこれには感謝したい、今したけど。まさか異世界に来たらツノが生えてましたなんて、どんな夢を見てるんだボクは。あ、夢じゃなかった。

 因みにボクはツノをこんなに気に入っているのかというと、簡単なことだ。ツノがとても好きだからだ。ツノが、というよりは鬼が好きなんだけどね。鬼の性質とか、住んでいる世界観とかが堪らなく好きなんだ。


『喜んでくれたようで嬉しいワ♪ それで、ここでの生活の仕方についてだけれど』


「その前に、もう一つボクの質問に答えてくれないかな」


『いいわよ〜』


「ボクを呼んで、君たちにはどんな利益が生じるのかな?」


 そう、ツノはあくまで付属品のようなものだ。本当にしたかった質問はこっち。因みに忘れていたわけではない。断じて、ツノに気を取られて忘れていたとかそんなことではない。


『……そうねェ、あえて言うのならこの世界が面白くなる(・・・・・・・・・・)かしら。ずーっと退屈だったのよ〜?毎日毎日、信仰されて崇められるだけの苦痛。変わらない日常ほど退屈なものはないわ。だからワタシタチは貴女を呼んだのよ。この苦痛に終始部を打つ可能性のある貴女を』


 ああ、悪い笑みを浮かべる彼女の気持ちはとてもよくわかる。平坦で波のない、変わり映えのしない毎日はとてもつまらない。それが幸せだという人もいるが、それは人それぞれの価値観によりけりなため、除外する。


「……つまり、ボクはずっと動向を監視された上につまらなくなったらお払い箱ってこと?」


『んー、殺すわけじゃないから安心して。ただちょーっと、ペナルティが発生するだけよん♪』


 そのちょーっとが気になるが、今聞いたら『体験してみる?』と言われそうなため止めておく。自分で質問しておいてなんだけど、そろそろ話を進めてもらおうかな。


「じゃあ、説明をどーぞ」


『わかったわン♪ これからの生活は、概ね貴女の好きなようにやってくれて構わないわ。でもその前にこの世界について色々と説明が必要だから、これからそれをしてくれそうな人(・・・・・・・・)のところに行くわよ〜』


うん? してくれそうな人ってどういうことだろう? まさか、前準備もなくボクを呼んでこれからその解説者に交渉しに行くのか。もしそうだったらなんで計画性のない召喚なんだ。いや、召喚じゃなくて転生? どっちでもいいか。もう一回死んでるし。


「……そういえば、どうやってそこまで行くの?」


『過激な方とゆる〜い方、どちらがお好みかしら?』


 お、いきなり選択肢か。けど恐らくこの選択肢はどちらにしろ意味のないものだろう。


「もちろん、過激な方を」


この少女ならば例えボクが緩い方を選択したとしても、過激な方を選ぶだろうから。


『りょーかい♪ ところで一つ聞いておきたいのだけれど、構わないかしら?』


「何を今更」


『貴女がこれまでしてきたことを貴女なりに教えて頂戴』


ボクがしてきたこと? そんなの、今更聞かなくてもわかるだろう。なんて言ったって、その質問をしたこの子自身がボクのいた世界を管理していたのだから。


『客観的に見たものと、当事者から聞くもの、感じるものは全く別物なのよ?』


 なるほど、確かにそうかもしれない。それを例えるのなら色が一番いいだろう。

 例えば、見た虹の色を四色だと言っても近くで見ていた人は五色と感じているかもしれない。もちろんこれは予測であり事実ではないのだが、例えとしてはいい例だろう。多分だが。

 さて、そろそろ回答をしよう。ボクが過ごしてきた、生きてきた世界でしたことを。ボクなりに短く、一言で言うのならば



『ボクは死ぬために生き、生きるために死んだ』



それ以上でもそれ以下でもない。これが事実、これがボクの考え。




「……やっぱり貴女、とっても面白くなりそう……!!!」





 瞬間、下に見えていたクジラがぐっと近づきその大きな口が開かれた。



一応自殺してるのにこのテンションはどうなのだろうと書いている本人でも首を傾げる。

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