プロローグ:「監禁なう」
初投稿になります。
拙い文面ですが、宜しくお願いします。
「ああ、本当に冗談じゃない」
誰もいない部屋でそんなこと言っても意味なんてないけど、それでも言わずにはいられない。しかし声はもう枯れ切っているらしく、心の中で恨み言を吐くしかないのが悔しい。けど吐き出さなければ溜め込むばかりだ。
それにしたってなんだあの人は。巫山戯てるのか?そこまでボクのことが嫌いか、殺すまでか。いや、まだ死んでないけど。でもこのままだと完璧に餓死コースだ、笑っとけばいいのだろうか。だいたいボクがあの人に何かしたのか。そもそも、こんなボクを生んだのは自分だろう。そりゃあ不本意に生んだわけだから、多少は仕方ないさ。むしろ暴力がなくてよかったと思う。ああ本当によかったよ。暴力以外のことは当然のようにされたけど。
一番最近のことをあげると、先ず学校に登校させてくれなくなった。つまり監禁だ。軟禁ではなく、監禁。これは皆勤賞を高校三年生の一学期に至るまで取り続けてきたボクにとっては痛い。ボクの8年の苦労を返せあのクソアマ。
あとは食料をくれなくなった。これは二日前からだ。確かに他の女子よりは丈夫だったが、二日間も水や食べ物もなしってのはどうかと思う。あいつは今度こそボクを本気で殺しにかかっているらしい。その後の自分の人生を考えたことがあるんだろうか?間違いなく刑務所暮らしだぞ。あいつには不可能犯罪を作り上げる頭はないから、ボクの死体さえ出ればもう逃げられない。
だがしかし、ボクはあいつに報復もしないまま逝くことなど到底できない。塵も積もれば山となる、だ。今までの所業を精々悔むといいさ。部屋のど真ん中に俯せじゃあ格好なんかつかないけど。けれど、どうやって報復すればいいんだろう。他人をここまで恨んだことがないから全くわからない。もういっそのこと、報復も止めて餓死を待とうか。
一度楽な方法がわかると他のことをしたくなくなるというのは、まあ人間の性というやつなのだろう。実際ボクが今そうなっている。けど餓死は嫌だなぁ、首でも吊っておこうか。よしそうしよう。抜け出せないならそれに甘んじて死のうじゃないか。今の状況はどうしようもないし、生きていても何にもならない。神を信じている訳ではないけど、次の人生に思いを託そうか。いざとなったら即行動がボクのモットーである。同じようなことを掲げている奴は、世界に幾らでもいるだろうけど。
暫く飲食をしていなかった身体を頑張って起こし、緩慢な動作で部屋の中を漁る。程なくしてちょうどいい長さのロープが見つかったが、残念なことにこの部屋には結べるような場所はなかった。なんてことだ。ボクは自殺までも許されないのか。さすがにショックだぞコノヤロウ。こうなったら最期まで足掻いてやろうか。ネットサーフィンでもしながら。
まったく腹立たしいことこの上ない。タブレットの比較的短い起動時間ですら苛ついてしまう。追い討ちのように、長らく電源を切っていたために溜まっている通知やメールにも苛々する。タブレットは悪くないし理不尽なんだけどさ。けれども、このままでは視界の端に映り込んで邪魔なため、確認だけもしておこう。
広告ばかりのメールは見ていて若干辛いものがある。事務的なこれらには、娯楽がないからだ。
だが、その中に一つだけ不思議なものがあった。差出人は無し、タイトルも無し。ボクにこんな楽しげなメールを送ってくれる心優しい人はいただろうか?ボクの記憶にはいないはずだ。そもそも、このアドレスはあいつにも見つからないように厳重にロックをかけて保管していたはず。つまり誰にも話していないだけでなく、本来なら広告以外のメールは来ない。
しかし現実に差出人不明のメールは届いている。そこから考えられることはボクも知らない間に何者かがハッキングを行い、このアドレスを探し当てたということか?
「おも、しろそ……」
ああ、もう話さないようにしようと思ったのについ話しちゃったじゃないか。これでただの広告だったら恨むぞ。メールを選択し、若干震える指を叱咤して開く。そこにはたった一言。
『そんな世界にいる必要がどこにある?』
その一文を見た瞬間、目の前にカッターナイフが現れた。原理は全くわからない。わからないが、今はわかる必要もないだろう。差出人はわからないが、この問いに対する答えは行動で示してみせよう。やるならば首だろう。こちらは終わるまでの時間すら惜しい身なのだ。
さて、粋な計らいでボクの背中を押してくれた差出人に感謝を込めて。
落ちる感覚に意識が覚醒し、緩慢な動きで目を開く。そこで見たものは…
「やっぱり、こういうのは在り来たりなのかな?」
大きなクジラの姿だった。
さようなら、醜くもそれなりには楽しかったボクの世界。産んでくれたことだけは感謝するよ、母さん。




