55.なんでもやりすぎには注意
前回のあらすじ
・ソプラティスは特殊な『緑の精霊』です
・書いててかなり長くなりましたので分割しています
・次話も調薬続きます
精鱗を少し温めた聖冷水の中へ入れる。
少しずつ砕いた精鱗を入れていくと澄んだ蒼い水がだんだん焔が燈っていく。
「なかなかきれいな感じになってきたな。なんて言うんだろうかラメが入っているような……そんな感じ?」
『すみません、ラメというものがよくわかりませんがこれはまだ溶け切っていない状態です。完全に溶かしきればよりきれいなものになりますよ』
「ほぅ、それは楽しみだな」
ティスの話を聞いて少々心を躍らせている俺は精鱗を加えた聖冷水をかき回す。
『あっ!貴方様、かき回すときは音をたてないように慎重にまわしてください。勢いが強いと溶かしている聖冷水や精鱗が飛んでいってしまう可能性が高くなってしまうので気を付けてください』
「おっと、そうなのか。こりゃ気を付けることが多いなぁ」
できる限り力を入れずにしっかり粉末状の精鱗を完璧に溶かす、今までの作業よりもじっくりと時間をかけて溶かしていく。
通常ならば弱火だとしても長時間水を熱してしまえば沸騰してしまう。
だが、今のところ5分以上温めながら作業を行っているはずなのに沸騰しておらず、むしろこの水に変化が起こっている。
「おぉ、だんだん蒼から焔のような色合いが混じった水になっているのがわかるな。ティス、これでいいのか?」
『…そうですね、では最後の作業に移りましょう。先ほどの【聖樹草の葉】を混ぜた聖冷水と【『イノケンティウス』の精鱗】を溶かした聖冷水を混ぜ合わせます。このときどちらか一方に注ぎ組むのではなく、新しい試験管に二等分に分けて注いでください。ピペットかスポイトはありますか?』
「あぁ、ちょっと待ってくれよ。…………あったあった、両方あるわ。とりあえずピペットで分ければいいか」
かなり細かいがここできちんと半分で分けなければまたまた完成度に変化が起きるとのこと。
慎重に分けていく。
新しい試験管に注いでいくとすぐに変化が起こった。
緑と赤の色合いをしていた二種類の液体が混ざり合うと真っ青というよりも鮮やかな空色になった。
この変化は先ほどとはかなり変わっている。
そのことに少なからず驚いている自分がいる。
「やり方を工夫するだけでここまで差が生まれるとはな」
『えぇ、文献で載っているのはあくまで軽い感じで載せていたのでしょう。しかし【薬師】とは己が技術を他人にそうやすやすと渡す者ほど愚かではありません。そのため大まかな指針を文献では掲示しますが、基本的には師が弟子へ技術を継承するというのが薬師の心得だったりします。またこの考えは鍛冶や裁縫、錬金でも同様です』
「なるほどな、そのせいでやけに完成度が低い薬しかできないのか」
この世界では特定の技術は継承することによって教えられていくらしい。しかし、後継が途絶えてしまう可能性がなきにしろあらず……という場合もある。そのため最低限の方法は文献に残しており、その先はその者の研鑽によって確立させていくという形が成り立っているようだ。
今回はティスがその役目を果たしたという認識でいいのだろうか?まぁそのおかげでなんとか完成度が高い【ルディ・レユアン】ができたということなのかもしれないな。
そういえばこの明らかに前と違うこの【ルディ・レユアン】の完成度を見ていなかったな。
確認してみるか!
【ルディ・レユアン(63%)】
《アビリティ:【調合Lv6】が【調合Lv16】に上がりました》
おぉ!ようやっと50%の壁を超えることができた!やはり正しい処方で作った時は上がりやすいというよりも必ず50%以上になるのかもしれない、ここは要検証だな。
しかも一回でここまでの熟練度の上昇具合をみると正しい処方で調薬すればかなりの経験値として反映されるようだ。
だが、今のティアちゃんはもう4段階目なのだ。たとえ50%以上の特効薬を飲ませたところで完璧に治るかといわれたら微妙なところ。そのため俺が作らないといけないのは完成度90%以上__できることなら完成度100%の特効薬の調薬、それしか残されている道はないのだ。
「ここからが鬼門だな、いかに全ての動作に寸分のずれを起こさないかが鍵になる…な」
ここからはティスの力ではなく俺自身の力で何とかするしかないのだ。
と、俺は集中してもう一度調薬作業を行っていくのであった
『…………!‥……ま!………貴方様!』
「……ん?」
誰かが叫んでいる気がする。
………あれ?なんでティスが横向きになっているんだ?
…つか、景色全部が横向きになってる。
『貴方様!いったいどうなさいましたか!?急に倒れてしまっていましたが……』
「…………あぁ、完全に理解したわ」
たぶんまたやったんだろうな、俺。
そう考えると倒れた体を起こし、テントの端によりかかる。
「よっと、なぁティス。俺が二度目の調薬を始めてから何分ぐらいたった?」
『は、はい。……およそ3時間たっています。一体どうなさいましたか?」
マジかぁ、今回はだいぶ短いほうではあるけど倒れるまでやっているとかないわぁ。
つか、このゲームって危険なときは強制ログアウトする仕組みになっていなかったか?それとも倒れたのが今さっきとかだったら適応外なのかもしれないな。
今、俺のみ何がおきたのか。それは『過集中』による意識が朦朧とし、最終的に気絶とまではいかないが見事に倒れてしまった……ということだろう。
『過集中』は何段階かに分かれていて現状だとフェーズ2といったところだろうか。自分の病気みたいなものだから感覚がわかっているが、のめりこんでしまうと無意識で起こってしまうときがある。
今回のケースがまさにそれだ。
まぁ起こってしまったのは仕方がないことと割り切って作った【ルディ・レユアン】を見ていく。正直このようなことは小学生以来だがそれぐらい楽しんでいたということだろうな。
とりあえず『過集中』時に作った数を確認する。
…………数えた結果27本、三時間作り続けたにしてはかなり多いと思ったがそれよりも前の時の調薬の時はあれこれと比較検証を繰り返していたためか考察に時間を使っていたので仕方がないのかもしれない。
実際、一本作成するのに20分あれば十分に足りるので………まぁ多いわこれ。
で、肝心の完成度については最高値でこんな感じ
【ルディ・レユアン(89%)】
いやここまで頑張ったんだからもうちっとあと1%ぐらいサービスしてくれよ!!
とかなんとか愚痴っていると天啓が舞い降りてきた。
《アビリティ:【調合Lv16】が【調合Lv34】に上がりました》
《アビリティ:【調合Lv20】よりスキル:【薬学】を取得しました》
ここまでは解剖のときにもでていたことだし容易に想定できていた。
だが、問題はここからだ。
《今までの行動経験より称号:【薬神の加護】を獲得しました》
………なにこれ?
おもわずこの称号について確認する。
【薬神の加護】称号所持者の調合時に極大補正を付与する。完成度や品質に大きく寄与する
なるほど、こんな称号があったのか……絶対秘匿するべきやつだな、だってこれなんで獲得したのか全く分からんし。
どうせ誰か獲得している奴とかいるでしょ、そいつに任せとこ。
で、この称号はスキル取得とかはないみたいだがこの極大補正がかかるということ。
これならすぐに完成度90%越えの特効薬ができるということではないのだろうか?
さっさともう一個作ろうと考えたが、どうやらこの称号に続きがあるようで
『あなたほど、難易度の高い調薬を行い続け何度も試行錯誤して完成度の高い薬を独学で進めてきました。そこで敬意と助言を持ってこちらを与えます。
流れ作業のようにするのではなく一つ一つの作業を丁寧に行ってください。そうすればより高い代物になることでしょう。 By 薬神・パテカトル』
おうおう、こんなの初めて見たよ?
まぁ気になることもあるけどとりあえず先にもう一度【ルディ・レユアン】を調合しようかね。
残り時間 一日と1時間半
今話のまとめ
・『過集中』については余裕があれば解説します
・皆さんも気になるでしょう【薬神の加護】こいつもまた今度
・次話ようやっとこの話が終わる……希ガスるってか終わらせます!




