54.真の【ルディ・レユアン】までの道
前回のあらすじ
・現在【精霊使い】は存在していません。なので精霊を従えているのは実質初めてです
・ソプラティス(略称ティス)は翡翠の意味をもつクリューソプラソス(ローマ)とネフリティス(ギリシャ)をもじってみました
・ゲシェムが取得したスキル・アビリティやティスについてはまた今度
お互いのために【契約】を果たし、俺はソプラティス__ティスから【ルディ・レユアン】の正しい調薬法を教えてもらおうとしている。
というか、なんかここまで来るのにかなり時間がかかったような感覚があるのだが気のせいだろうか?単に濃密な時間を過ごしたからだろうか?………まぁいいや。
「それでティス【ルディ・レユアン】の正しい調薬方法を教えてくれないか?」
『えぇ、それが【契約】ですもの。しかし、根本的な調薬方法は貴方様のやり方と大して変わらないのですよ?強いて言うのでしたらその一つ一つの素材に対しての適切な方法で調合するというだけですね』
「やっぱそうなのか」
つまり今さっき俺が考えていたことと全く同じということだ。きっとティスがいなくても時間さえあれば自力で何とか解決することができたのかもしれない。
だが、今回は時間が足りないっていうのと作れる個数が限られているので早い段階で完成度の高い【ルディ・レユアン】を調薬したいところ。ティスのアドバイスは欲しいところなのだ。
彼女のステータスを見てもなかなか特殊な感じであるのが見て取れるので頼りにしています。
ということで彼女の指示のもと作業を再開する。
一つ目の作業である【聖樹草の葉】の切り刻み方からだ。
【聖樹草の葉】は葉全体に聖気や魔力をため込んでいると思っていたが本質は少し異なるようで
『【聖樹草の葉】全体に魔力や聖気があるとされていますが実は葉の中で繊維が崩れるとその聖気が漏れ出てしまうのですですので、できる限り繊維を崩すことなく切り刻みます』
「だけどそれだと縦に刻むだけで細かくはならなくないか?」
『それですが、最初のここで完全に刻む必要はそこまでありません。次の工程で完全に液状になればよいのです。なのでここでは繊維を崩さずに刻んでください』
「なるほどわかった。そうしてみる」
俺はティスの指示のもと【聖樹草の葉】を刻んでいく。
この葉は笹の葉のようなものを想像してほしい。縦に繊維があるのでそれを崩さないように薬研で刻んでいく。
意外にもこの作業が難しい。ところどころ繊維を崩してしまっているものの今までよりも繊維を崩していない。つか、さっきまでは粉々になるまでつぶしていたのもあるからそれに比べるとまだましかもしれないよな。
とある程度切り刻むことができたところでティスからひと言。
『だいぶきざむことができましたので、次へ進みましょう』
「おう次はすりつぶす作業でいいんだよな?ここで気を付けるのはなんだ?」
『ええ、この作業では完全に液状になるまですりつぶすことを忘れないでください。あとは先ほどは【清らかな聖冷水】を一気に入れていましたが、これを5回に分割して投入してください』
「あいよ、にしてもこれってかなり厳しいよな?」
『ええ、まぁそうですね』
先ほどよりも細かくないということもあり、すりつぶす工程がさらに困難なことになってしまっているのだ。
それに加えて、半分ではなく一本を5等分に分けて入れていくということで量を正確に測っていかないと上手く混ざれないようで気が抜けない作業になること間違いなしだろう。
と、考えながらも早速作業へ移っていった。
やはりというか予想していた通りすりつぶす工程に悪戦苦闘している。
だが、ティスの助言通りに調薬しているおかげか【聖樹草の葉】と【清らかな聖冷水】に反応が起きている。
『そろそろですね、2回目を投入してください』
「わかった」
1度目の反応が起きたところでティスから追加の指示が来た。
どうやら変化が起きた時にすぐ追加していくようだ。
「というより、こういった変化が起きるものなんだな。さっきまではこんな変化が起きなかったぞ?」
『薬の完成度が高いものは必ず調薬時になんらかの変化や反応が起きるものなのです。むしろ変化が何も起きていないということを不思議に思うように心がけてください』
「はいよ。………にしてもスキルに【薬学】があるぐらい詳しいんだな。でも【調薬】とかはないんだな、なんでだ?」
『それは……私が精霊であるからですね。この身体ですと調薬を行うことができないのです。しかしなぜか私にはこういった知識がたくさんありましたし、私自身好奇心があるというのもあります。そのため外の世界へ行ってみたいという欲が湧いてしまったわけなのですが』
「へぇ、精霊全体がそういう感じというわけではなさそうだよな」
『えぇ、他の精霊は……まぁ無邪気な方が多い傾向にありますね。ただ上位の精霊種はその傾向に大きく逸脱しますが』
「………それって遠回しに幼稚って言ってないか?でも、その傾向から考えるとティスも上位の存在ってことにはならないのか?」
『はい、私はあくまで『緑の精霊』ですので精霊種の中では一番下の位の精霊種の一体です。……あっ、聖冷水の追加お願いします』
そんな会話を繰り返しながら残り3回分の追加を行っていく。
彼女の話を聞いている限り、どうやらティスは通常の精霊種とは異なる異種・亜種に分類される類の存在なのかもしれないと考える。【使い魔】であるルカとはまた異なるが思ってもみなかった逸材を見つけたようだな。
5回にわたってすりつぶしをおこなうと【聖樹草の葉】は完全に液状に変化を遂げ、液体の色が先ほどの時と異なり真緑というよりも翡翠のような美しい緑へと変化していった。
「なんともまぁきれいな色に変わったな。……で、これで聖樹草のほうは一度完了ってことでいいんだよな?」
『はい。次は【『イノケンティウス』の精鱗】の調合を行いますので、一度乳棒と乳鉢を洗ってください』
「うい」
……なんか傍から見たら主従関係が逆に見えてしまうような気もしなくもないが……気にしたら負けだ、さっさと準備していこう。
『この素材に関しましては特に気を付けるようなところはありません。ただし魔力を纏わせた状態でやっていただくとより高い完成度となります』
「あっ、そうなんだ」
『ちなみにこの魔力を纏わせるというのはスキルやアビリティで専用のモノがありますのでそれがあればできると思いますが』
「多分大丈夫だよ、それに近いことをしょっちゅうやってるし」
この魔力を纏わせる手法、実は【妖糸】に魔法を組み込むときに使っていることに類似しているのだ。しかし【妖糸】でやっていた魔力を纏わせるという手法がなぜスキル・アビリティとして取得習得していないのか、それは若干異なるという1点だ。
ティスの話によると【魔纏闘術】というアビリティや【魔纏・〇】というスキルなどの魔力などを自身に纏わせるという手法があるらしいが、俺は糸に魔力を纏わせる【妖糸】と同じ手法をもちいて道具に魔力を纏わせることにする。
するとどうだ。見事に乳棒に紫色よく見る【妖糸】の時と同じような膜を生成することができた。
『……私が想定していたこととは違いましたが、その方法でも問題なさそうですね。では砕いてしまってください』
あとはただただ砕いていく。ちなみに先ほどとの変化を比較すると、先ほどの工程では焔のような色合いだったのがくすんだ淡朱色になってしまったが、今回の作業ではその色の変化がないまま細かく砕くことができた。
そもそも『イノケンティウス』が半精霊の性質を有している以上その体は魔力体となっているため、その精鱗にも魔力を多く所持している。
恐らくだが、魔力を纏わせることで精鱗内にとどまっている魔力を外へ逃がすことなく粉砕しているから色が抜けることがないのだろうか。
と一定のレベルまで砕くことができるとティスが話しかけてきた。
『そろそろいいでしょうかね。では砕いた精鱗を聖冷水に入れてください。この時に聖冷水を少し温めておいてください』
「あぁ、それでアルコールランプが調薬道具に存在するわけだ」
『はい、大抵の調薬作業ではアルコールランプが必須になりますので文献で書かれていなかったらしいですがご用意されていて助かりました』
「まっ、それは売ってくれたばあさんに感謝しておこうか」
そんな会話をしながら作業を進める。
【清らかな聖冷水】がはいった試験管一本をビーカーへ移し、少し温める。ここで気をつけないといけないのが暖め過ぎて蒸発してしまうと完成度が低下してしまうんだとか。
タイミングをしっかり見定めて精鱗を投入しなければならない。
そのタイミングはティスが報告してくれるので最初は助かる。だが、ティスから教えてもらうとしても口頭でのタイミングのずれが生じるためどうしても完成度に変化が生じてしまう。
そのため、このあと何回か調薬するときのための感覚を養っておこうと考えている。
『今です!精鱗を入れてください』
と俺は精鱗を入れていく。
少し思ったがこれは先が長そうだと思いました(なんか作文みたいだな)
残り時間 1日と4時間半
今話のまとめ
・ソプラティスは特殊な『緑の精霊』です
・書いててかなり長くなりましたので分割しています
・次話も調薬続きます




