53.契約……………調薬は?
前回のあらすじ
・完成度が50以上にするにはただ単に調合するだけではだめ
・精霊は不可視の存在とともに【視る種族】という別称を持っている
・この世界のNPCは性格や人格が豊富で普通の人間とほとんど変わりません
『それでどうするの?私を連れていくの行かないの?』
そういうのは目の前にいる小さな緑色の精霊。
彼女曰く俺が作っている【ルディ・レユアン】は作り方が正しいわけではないため完成度が一定値を上回ることがないとのこと。
それで彼女の要望である『彼女を従え、外の世界へ連れ出す』ということを対価として、本当の【ルディ・レユアン】の作成を教えてくれるとのこと。
まぁなんとも人間らしい考え方をしていると思うよ。
実際俺にとってもはや時間がない。
残り6時間のうちに特効薬を調薬しなければティアちゃんの命はないと思うし、現状俺の技量では到底高い完成度を持った【ルディ・レユアン】はできやしないのは事実だ。
それならば彼女の要望に応え、教えを請うほうがよほど効率的だ。
ただ、問題点もいくつかある。
一つは本当に彼女を従えることができるのかどうかだ。もし【精霊使い】という職業がないと彼女を従えることができないのならば俺にはできない。
そもそも【精霊使い】とは派生職もしくは上級職の可能性が高く、それに関係する職業についていないため今の俺ではすぐには選択することができないという点。
だが、彼女が【視る種族】といっている以上俺の職業構成でも従えることができるという可能性があるということかもしれないので一旦この問題は無視しておこう。
二つ目が最大の問題ともいえる。
彼女を連れていくことで周囲のプレイヤーにばれてしまう可能性が高まるというところだ。俺が今まで街を歩いて【精霊使い】と思しき人物が今まで目にしたことがない以上、彼女を連れ歩くと彼女を狙ってくる輩がなきにしろあらず。実際にプレイヤーキル_PKというのも少なからずこの世界でも起きているらしいから彼女の安全が保障できるとも限らないのだ。
そんな不安があるということは彼女にとってここにいることが何よりの安全だと俺は思っている。
ここ幻想階層帯でも十分に生活できるし、なにより人が全く来ないというところが安全性を保障している。
それでも彼女が外に行きたいというなら俺は彼女の意思を尊重したい。
それに俺は彼女に調薬方法を教えてもらわないとティアちゃんの命を救えないしな。
俺は想定している問題点を彼女に聞いてみた。すると彼女はこういった。
『たしかに【精霊使い】なる職業であるほうが私たちの力を十分に発揮することができるわ。でも別に【精霊使い】でなくてもスキルさえあれば従えることはできるわ。ただ私はあくまで『緑の精霊』で戦闘にはあまり向いてはいないの』
「え?そうなのか?お前って意外と特殊な精霊というわけなのか?」
俺はこの答えに少し驚いている。
【精霊使い】という職業がある以上、精霊というのは戦う力があるものばかり思っていた。
確かにここまで精霊が戦っているところを見たことはないが、半精霊半魔物という存在がある以上ある程度戦うことができると判断していた。
が、彼女は戦闘向きではないという。彼女のニュアンス的には『緑の精霊』というのは特殊な立ち位置の精霊なのかもしれない。
『そもそも精霊というのはこの世界を支える存在というのはさっきも言ったわね?例えば火山のところにいるような精霊は『火の精霊』が主に存在しているわ。それと同様に『水の精霊』『風の精霊』『土の精霊』『光の精霊』『闇の精霊』という各属性の精霊がこの世界には存在しているの。さらに特殊な分類として『鍛冶の精霊』『裁縫の精霊』『調薬の精霊』などありとあらゆる精霊がいるの。まぁさらに上位の精霊として『空間の精霊』『時の精霊』などもいるわね』
「へぇ、精霊っていろんな種類がいるんだな。で、『緑の精霊』というのはその特殊な部類に入るのか?」
『うーん、似て非なるものね。確かに普通の精霊とは異なり特殊なのだけど上位っているほどの精霊の格を持っているわけでもないの。それにここでは私以外に『緑の精霊』という存在を確認していないの。もしかしたらそこまで個体数が多くないのかもしれないわね』
なるほど、彼女の話をまとめると精霊とは千差万別であり彼女の立ち位置は個体数の少ない存在の一人ということかな。
で、彼女を従えるには別に【精霊使い】である必要はないと。
しかも、基本的に精霊は眼に見えないのだ。
そういえばここをさがすために【精霊視】が必須になっていたがこのスキル自体この世界で生きていく上でなくても生活ができる時点でそこまで取得しているプレイヤーはいないだろう。
そう考えると俺が彼女を従え連れまわすことになんも不備はないと思う。しかも、俺にとっては戦力__というのもどうかとは思うがさらに強くなれるかもしれないというのならば俺にとってもこれ以上嬉しいことはないだろう。
「俺でよければ君を外へ連れていこう。どうすればいい?」
『【契約】という異能はないかしら?それがあればすぐにでも貴方の精霊として仕えることができるわ』
「わかった、【契約】だな」
と俺は取得可能なスキル一覧を見る。
たくさんのスキルの中で彼女がいっていた【契約】というスキルを発見した。
そのスキルの効果がこちら
【契約】自身とその対象者で同意のもと条件を満たせば契約が成立する。どのような形であれ互いが同意すればその契約が受理される。しかし条件を満たさなければ契約は成立しない
むむ、なかなか面白いスキルだな。
これは互いの条件、今回の事例でいうならばこの『緑の精霊』と従属関係となる代わりに俺に【ルディ・レユアン】の調薬方法を伝授するという条件のもと【契約】を行うと成立する。
もし俺が『緑の精霊』を仲間にしないあるいは『緑の精霊』が【ルディ・レユアン】を教えない場合、その契約を満たさないということになり、双方のうち守らなかった一方に罰が与えられるようだ。
今回はお互い利害が一致しているから特に問題がないが、これが一致しない場合どちらかにリスクがかかってしまうという恐れがあるということだ。
しかし裏を返せば、一方的に有利な条件をたたきつけてこちらに利を生み出すこともできるということ。
これは使いどころさえ間違わなければ相当有利になるスキルだ。
多分商人とかは持っていてもおかしくはないスキルだろうな。
とまぁ【契約】は取得可能だったので早速取得することにする。幸い所要スキルポイントは1だったのですぐに取得できる。
《スキルポイント使用によりスキル:【契約】を取得しました》
「‥……うし!【契約】の取得は完了できた。どうする、すぐにでも契約するか?」
『ええ!もちろんよ、すぐにお願いするわ』
「了解、【契約】発動」
というと、目の前にウィンドウが現れた。
《契約する対象者を選択してください》
「えっと、俺と目の前の『緑の精霊』だ」
《契約内容をお願いします》
「俺は【ルディ・レユアン】の正しい調薬方法についての教示」
『私はこの人間_ゲシェムに従属し、外の世界を見ることです』
《ゲシェム様の要求と『緑の精霊』様の要求がとつりあいませんがよろしいですか?》
「俺は大丈夫」
『私も問題ありません』
《双方の同意を確認、【契約】を実行します》
《【契約】完了『緑の精霊』をテイムしました》
《『緑の精霊』に名前をつけてください》
どうやら成功したようだが、これはテイム扱いになるのか……まぁ彼女自体問題がないようだし、こちらとしてもうれしい誤算だな。
「成功したようだが、お前に名前をつけないといけないみたいなんだ。元の名前とかないのか?」
『いえ特に名前はなくただの『緑の精霊』というものでしたので……よろしければ貴方_いえご主人様がお考え下さい』
と、いうので少し考えてみるか…。
緑……翠……翡翠…………確か翡翠は………
「……うん、ソプラティスなんてどうだ?」
『ソプラティス‥……いい名前ですね!私はソプラティス、以後貴方様にお仕えする緑の精霊として恥じぬよう頑張ります』
「お、おう。そこまで気張らなくていいと思うぞ?」
《初テイムによりスキル:【調教】を取得しました》
《精霊テイムによりスキル:【精霊紋】を取得しました》
《精霊テイムによりアビリティ:【精霊術】を習得しました》
という成り行きにはなってしまったが『緑の精霊』ことソプラティス__多分ティスとかで呼ぶと思うなぁ__を仲間にするのであった。
あれ?調薬は?
残り時間 1日と5時間
nemu:ソプラティス (精霊)Lv.2
job:緑魔導士Lv1
HP:120
MP:360
STR:2
INT:37
VIT:5
MND:13
AGT:20
DEX:26
LUK:15
SP:0
RaceSkill:【認識阻害】
Skill:Op
【緑保護】【浮遊】【精霊眼】【光合成】
【薬学】【記憶保存】
Ability
【緑魔法Lv4】【舞空術Lv10】
【速読Lv3】
称号
【知性ある精霊】【記憶する者】【ゲシェムの召喚精霊】
今話のまとめ
・現在【精霊使い】は存在していません。なので精霊を従えているのは実質初めてです
・ソプラティス(略称ティス)は翡翠の意味をもつクリューソプラソス(ローマ)とネフリティス(ギリシャ)をもじってみました
・ゲシェムが取得したスキル・アビリティやティスについてはまた今度




