46.見つからない湖
前回のあらすじ
・ファウストの現職業開示
・『双児分裂』について
・メリドの自己成長突入
俺とペティは今72階層を探索している。
俺たちは【イラ・ミルトン】の特効薬に必要な素材である【聖冷水】が存在するといわれている【精霊湖】を探している。
「言っても手掛かりがない以上、どこから手を付けるべきなのか……」
「……とりあえず、歩いてみて探すしかいないよね」
この探索での問題は場所が完全に不明な点であることだ。実際に存在しているとはいえ今回のは【聖樹草】のようにどこにでも生えているわけでも『イノケンティウス』のように73階層の1か所のみを徘徊しているわけではないのだ。
文献によると草原階層帯の上層部に存在しているらしく、そこは精霊が住まい安らぎの泉とのこと。そのため、あらゆる邪なる者を拒むという。
文献に記載されていたのは大まかにこんな感じであった。
なんともまぁこのゲームらしいというか【精霊湖】という名前があるからなのかよくわからないが、かなりの秘匿性を有しているのだ。
「文献の情報が正しいなら75階層までにあるというのがわかるけど……それでもまぁ一層でもかなり広いというのにここからその1か所だけを見つけるのってかなり難しいと思うんだが」
「………一応考えがあるの」
「へぇ、どんな方法なんだ?」
「………ファウストが通れない場所を教えてもらうの」
「それはまたなん‥………あぁそういうことか」
この文献の情報が正しいとすれば【精霊湖】周辺まで近づくとファウストはそこを離れるように行動するはず。そうなると、その近辺には【精霊湖】が存在する可能性があるという証明に間接的に成り立つということだ。
「それなら【索敵】を使って、魔物がいない空白地帯を中心にしらみつぶしに探索することにしようか」
「………ん、今ファウストにも頼んだから73階層で不思議なところが発見次第行ってみることにしよ?」
「あぁ、そうだな」
こうして、ある程度の対策を企て再度探索へ繰り出していったのだった。
あれから1時間が経過したころ
「だー!ちっとも見つからん!」
ゲシェムたちは一向に【精霊湖】を発見するに至らなかった。
これにはこの草原階層帯とゲシェムの問題があった。
そもそもこの草原階層帯の特徴として魔物の出現数・リポップが極端に少ないということ。
おそらくは【精霊湖】や【聖樹草】といった退魔的な存在があるため魔物があまり存在していないのだろう。
そのため【索敵】による空白地帯がいくつも点在しており、一層だけでもかなり広大であるがため移動に時間がかかってしまう。
さらにはゲシェムの【索敵】の熟練度にも問題がある。
元々【斥候】の職業を早々に転職したため熟練度がそこまで高くない。さらには転職したことにより【索敵】の熟練度の上がり方が極端に低くなったのだ。
本来アビリティの熟練度の上昇には職業の補正がついてこそ、というのがある。
しかし、転職してそのアビリティに関係する職業から離れるとその補正がなくなりむしろ下方補正となり通常以上に必要熟練度が上がってしまう。
その点ゲシェムは転職以降あまり【索敵】を利用しておらず、ほとんど熟練度が【斥候】時代と何ら変動していない状況。
これにより、【索敵】できる範囲は小さく一層全てを調べることができないので探索の移動時間が短縮されていなかったりするのだ。
「‥……ここまで来るとほんとに間に合うのかな?」
「別れて探したほうがいいのかもしれないなぁ」
幸い、73階層にはファウストが『イノケンティウス』を生け捕りにするために滞在しているからめぼしいところが発見次第報告してもらえばいい。
同様に75階層に分裂体とメリドがいるから俺が今取っている方法で探索してもらいながら【聖樹草】の採取に努めてほしい。
てか、メリドが自己成長中とか一体何があったし分裂体。
「……じゃあゲシェムは74階層の探索をお願い。私は72階層の続きと71階層を再度調べてみる」
「その心は?」
「…………私【索敵】持ってない、ゲシェム持っている」
「オーケー、わかった。発見次第連絡よろ」
「………ん、じゃまたね」
「おう」
そんな感じで俺たちも二手に分かれて捜索することにした。
実際二人で探索していても出てくる魔物の数自体が少ないため、ほとんど心配がない。
であるならば、二手に分かれて一度に調べられる探索範囲を広げたほうがより効率的だろう。
まぁ、71階層と72階層はある程度探索しているから俺への負担が多いっていうのは暗黙の了解ってやつなのかね?
というわけで、74階層来ましたっと。
ここら辺も特に何かがあるって言う感じではない。辺り一面草原である。
探索していくと魔物が現れた。『シュレリンガー』という魔物だ。
外見が半透明で73階層を通った時に見た『イノケンティウス』と同質のものを感じさせる。
恐らくは半精霊半魔物のタイプであろう。ただし『イノケンティウス』が焔の身体で構成していたが、この『シュレリンガー』は翠の身体で構成されていた。
こいつの攻撃には拘束というデバフを与えてくるのだが、それが意外にも厄介なのだ。
拘束というデバフと一体何なのかというと身動きを封じる拘束とは若干ニュアンスが異なるのだ。
この拘束というのは相手の一部ステータスの変動不可やスキル・アビリティ一部の使用不可、さらにはアイテムの一部使用不可というのがつくかなり厄介なデバフである。
これは攻撃に当たってしまうとその3種類のうち1種類のみかかってしまうというのだが、普通の相手なら何ら問題がないのだがこの魔物『シュレリンガー』にはこの攻撃が通常攻撃ではないのだ。
そう、範囲攻撃なのだ。
ある一定範囲内であれば拘束というデバフが発動されてしまい、どこかしらに使用不可能な状態になってしまう。
「………まぁ離れて対処するってのが一番いいんだけどさ『雷華』」
と、雷の閃光。『シュレリンガー』がひるむ。
俺はそのままひるんだ状態の『シュレリンガー』に接近、そのまま鎌で一閃。
とまぁ、こんな感じで要は相手に攻撃をさせる余裕をなくせばいいのだ。
こんな感じで『シュレリンガー』を倒していき、探索を進めていく。
「しっかし、ほんとに見つからないよなぁ」
そう探索を初めて5時間が経過しており、恐らく74階層のすべてを見て回ったと思うのだが見つからないのだ。
そもそも目の前に広がっているのは一面の草原で湖なんてどこにもない………。
「いや、まてよ」
こんな木々が全くといっていいほどないこの草原階層帯で湖一つ見つけられないというのは何かわけがある。
もしかしなくとも隠されている?
草原階層帯もしかしたら本質が違うのかもしれないな。
今話のまとめ
・【精霊湖】は75階層までにあるらしい
・『シュレリンガー』は『イノケンティウス』の翠版ですな
・草原階層帯には秘密アリ?




