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魔王様武器作る? ビィの工作

ブンブン尻尾を千切れんばかりに振り回し、腹を嬉しそうに見せながらキューキュー鳴くケルベロス。

腹を撫でると、より一層尻尾を振る。

デロリと何か酔ったような表情に手足をピクピクする。

普段の戌を知っているならば、何か薬でも盛ったと結論付けるかもしれない。

「坊主、何処から迷い込んだ?」

首根っこを捕まえて兵士が声をかける。

「あ」

見ないふりしていた周りのギャラリーが小さく声をたてたが、ほぼ同時に戌が飛びかかった。

「うぉー」

戌の牙が目の前に組伏せられた兵士は固まっている。

これに追いたてられたターゲットがどうなるかよく理解しているだけに動けない。


「……なぁあと何人ああなるか賭けないか?」

「やめろよ。殺されるぞ」

視線だけで方角を示唆すると、話しかけた男は視線を追いかけて固まる。

そこには、崩れ果てた隊長が泣いていた。

「ありゃ、荒れるなぁ」

「ツンデレがデレデレにだからなぁ」

「回りにはツンツンだがな」

ため息が出る。

獣の視線が集まっているのだ。そして選ばれたのが撫でられている。

「てか、いつあいつらが乱入するか気が気でないのだが」

飛竜の一団の視線が突き刺さっている。

「こえぇぇ」

側には寄ってこない。しかし何時その我慢が切れるのかを思うと恐いものがある。

「にゃー」

猫がするりと足元で鳴く。

黒い尻尾が長いーー。

「げ」

「あれって」

「まさかだよな」

兵士たちの呟きは、ヒョイと猫を抱き上げた子供にはもちろん聞こえてはいない。

「月光、可愛いねえ」

がーんと、腹を見せていたケルベロスが落ち込む。戌はでかすぎて抱っこは無理である。

「もとサイズ馬車より大きいのだが……」

「いや、でかいまま来ると、毛皮にされるそうだぞ」

「毛皮ちょうだい、と言われて 毛逆立てて(モフモフ )になりながら逃げていったのは笑えない話だからな」

「あはは」

そんなことして無事なのが大変驚きである。

いや、現在も驚きである。

「あ、女の子だね。月光」

逆さまにされて尻尾をむんずと握られている。

「何故引っ掻かれない」

「よせ、そんなになったら泣くだろ」

「あいつの爪の威力を考えたら腕が飛ぶんじゃ?」

隊長が、大慌てで飛んできた。

「ビィ、稽古をつけてやろう」

「やったー」

ポイされた猫は、がぶりと隊長の足に噛みついている。

けしけし猫キックも混ざっている。

「駄目よ。危険だから向こういっててね」

猫は渋々離れた。

「隊長、大丈夫? 痛いの痛いの飛んでいけ~」

「……」

「……」

「殺」

猫と戌と竜の殺気がこもる。

「俺、気分が」

「俺も」

くるりと子供が振り向く。

途端に、殺気が引っ込む。

「そう言えば、竜たちピカピカだね」

キリッとポーズをする竜。機嫌は直ったらしい。






「構えて」

隊長のかけ声とともに子供が真面目な顔で貸してもらった剣を構える。

戌が神妙な顔つきでそそくさと運動場の端に移動する。

猫は既に壁沿いに積み上がった気の箱の上に陣取っている。

竜はこれまた隅っこに身を寄せて固まっている。

「…………なぁ」

「言うな。隅っこに無言で逃げるのだ」

兵士たちが我先に隅に固まったので、かなり広い空間ができる。

「なんだ? お前たち」

神妙な兵士達に首をかしげながらも、子供に向き直る隊長。

「少し素振りをしてみようか」

「はーい」

ビィが、ヒョイヒョイ剣を振るう。

何度かフリフリしていたが、つるりと手から剣が落ち地面に突き刺さる。

「あら?」

「………………剣、少し重すぎたか?」

練習用とはいえ、それなりの重さを持つ。

隊長は突き刺さっている剣を抜いて、マジマジと剣を見た。

確か渡した剣である。が、何か違う。

「……こっちの木刀にしてみようか」

「うん」

子供が楽しそうに木刀を振る。その間に、隊長は剣を鑑定して小さくため息をついた。

おかしい。

「おい、これの出所調べとけ」

兵士に剣を渡し、おや?と彼等の様子に目を細める。

「どうしたんだ? お前たーーち?」

ヒュンヒュンと、背後で良い音が響いている。

子供が木刀を楽しそうに振っている。

「…………ビィ、ちょっと貸しなさい」

「うん?」

木刀を鑑定して、ひきつりながらその辺に転がっていた木の枝を子供に渡す。

「む?」

「剣が折れたときに木の枝も武器にしないとね」

中々苦しい言い訳を補足させる。

「……わかった」

子供は大人しく木の枝を振る。

「…………」

「なぁ、あの音」

「後で、それとなく全部の剣を素振りさせよう」

ヒソヒソ兵士達がが企むなか、隊長はごくりと喉を鳴らした。

子供が振るう只の木の枝が、あっという間に良い音を鳴らして空気を斬っている。

「んじゃ、隊長 いくよ」

「え、うぇ?」

どかーーん

兵舎の壁が吹き飛んだ。

「…………」

「あれ?」

隊長は思った。ビィがノーコンで助かったと。

「……壁の修復実習だな」

「う、ハイ」

素晴らしい強度を誇る壁が造られるのを見ながら、隊長は深く溜め息を吐いた。

あれが次来たときは、すかさず城壁の修理を始めようと。










夜の見回りの中、竜舎が妙なことに気がついた。

「……」

竜が何かを捕まえたみたいだ。

鉄壁のガードで、それは逃げられないみたいだった。

「なぁあれって」

「時々来てるらしいな。毛繕いが凄いらしい」

「ピカピカになってたのがあれですか?」

ビカリと光るスライム。

「ギルドで噂のスライムですよね?」

「多分そうだと思うが、実は複数いるのではという意見もある」

ギルドで噂のスライムは60階層のボス竜を従えている。

なのに、ここの竜から逃げられないのが同じ個体だとは思えない。

モソモソやっと逃げ出してきたスライムに忍び寄る影。

「あ」

猫がスライムをくわえる。

そのまま猫が走り去るのを兵士は見送るしかなかった。

何せ猫を追っかけて戌が走っていった。


翌日、ピカピカになった猫と戌がいた。しかし隊長の頭にはスライムが貼り付き髪を一心不乱に消化していた。

その姿で食堂に現れた隊長と必死で目を合わせない兵士たち。

しかし隊長がテーブルにつくと、料理を山程配膳する。

スライムが、サラダにダイブする。

「……月光が捕獲したらしく枕元に持って来たんだ」

隊長はほつりと呟いた。

猫は獲物をマスターに律儀に見せに来る。

「月光がボールにして追いかけるものだから頭から離れなくなって……」

腹が減ったスライムは危険かもしれない。

隊長の頭に視線がいかないようにしながら兵士たちは心に刻む。

スライムの非常食を用意しておこうと。

ピカリンコ

「あ」

スライムの突撃ごはんの対価として、その日食堂に居合わせた兵士はスキルに目覚めた。

「……教育が来た」

隊長が呟く。

一番に戌と猫が教育されていた。

調教ではしつけられない部分を教育していた。






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