ダンジョンのスライム①
前衛の俺
盾役の男
盗賊の女
魔法使いの女
荷物持ちの男
俺たちのメンバーだ。
中々良いバランスで稼いでいたパーティーだ。
現在、息を潜めて潜伏中である。
目の前の通路に影がゆらりと揺れる。
それは姿を表す。
ミノタウロス。
徘徊型の魔獣をやり過ごすのも難しくなってきた。
大きな斧の武器を引きずって歩いていく。
それはキョロキョロやけに周りを気にしている。
そしてビクッと反応し慌てたように足早に移動していく。
「……あれが逃げるようなのとは遭遇したくないな」
転移トラップに遭遇して数日、この階層が何処かも解らず遭遇したミノタウロス。
しばらく息を殺して待機するも、何も来そうにない。
通路に脚を出しーー、ムニュと何かを踏んづけた。
何かの罠を起動させたかーー、恐る恐る足元を見ると何か暴れている。
咄嗟に剣を突き刺す、とそれはヒラリとかわしてボディーアタックしてきた。
みぞおちへのクリーンヒット。
ピョンピョンとそれが背後に飛び掛かって行く。
「ま!」
待ての、てを発音する前にピカッと光る。
「……」
「これ、ヒールね」
魔法使いが呟く。
寝かされた盗賊の女の上で、ピカピカしている。
「それ、スライムか?」
この洞窟にスライムが出るとは聞いていなかった。
「う、う……ん」
盗賊の女が小さく動く。
実の所、彼女を見捨てようとしていた。満足に動けぬ荷物を抱えてここから生還する道が見いだせなかったから。
ぴょんぴょんスライムが跳ねる。
「……」
「…………」
「は! ちょっ」
魔法使いが気が付き、キッと男たちを睨んだ。
スライムが跳ねる度に、彼女の胸元がタプタプと揺れる。
うむ。あそこに視線が集まる魔法でもかかっていたのだろう。
すっと視線を反らす男たち。
と言うか。跳ねるスライムを何とかした方が良いのではないだろうか?
気がついた盗賊はスライムを捕まえると、ぺちっと壁に投げつけた。
「寝てる女の胸を触るバカは誰じゃ、……あれ?」
目を覚ました乙女が周りを見回す。
「あれ? わたし死ななかった?」
「……心臓マッサージしてくれた恩人を壁に投げつけたけどな」
「うぇ?」
スライムが壁から飛び付いてくる。胸に。
もみもみ
「‼」
再度スライムは放り投げられた。今度は通路の方に。
そこに運悪く牛が通りかかっていた。
とても運悪く。
「ブモォオオオ」
牛が雄叫びを上げて逃げていった。
スライムの中には角の一本が残されていた。
「……」
「……」
「今の雄叫びで魔物集まってこないか?」
「え、あ、移動しないと」
もしゃもしゃ
スライムだけが平和に食事をしていた。
ピョンピョンとスライムが跳ねる。
その後ろを追いかける人間の一団。
変だ。先頭がスライム。
スライムは、チョロチョロ蛇行して罠にかかっている。
しかし平気なようで、直ぐチョロチョロしだす。
「……罠多いな。転移トラップは無いみたいだが」
「……三つ前の罠は転移トラップ系だったわよ」
盗賊の乙女がぼそりと呟く。
「は」
「あの子、発動した瞬間解除してたもん」
普通は、発動前に解除だ。
発動したのに何故に解除出来る?
「発動後にキャンセルなんか出来るのか?」
「やってたの!」
と言うより、罠にかかっているから外から進入したモンスター扱いだ。スライムはこの洞窟に生まれた個体でない。
「フフフ、ねぇスライム」
盗賊の乙女が話しかけると、スライムは止まる。
「私、罠レベル上げたいの。教えて?」
ひょんと肩にスライムが乗る。
「むむむ、あら」
アッチもコッチも罠だらけだった。
「アハハ、ちょっとここ全部罠だから!」
盗賊の乙女は少し後悔した。スライムが肩に乗ったとたんに周りの危険度が跳ね上がる。
ちらりと後ろの通路を見返して、スライムがフラフラして解除した罠がよくわかる。
「うう、頑張る」
直ぐ前の罠を観察する。
「………………落とし穴……かな」
自信なさげに呟くと、スライムがひょいと罠に吸い込まれる。
「!」
下に落ちたはずのスライムは上から降ってきた。
「……え~と」
「……落とし穴の底に転移があるのかも」
「なるほど」
魔法使いが穴を凝視している。魔方陣が気になるのだろう。
彼女はばかと超がつく魔法好きである。
嫌な予感がする。
案の定、スライムをガシッと捕まえると目を細めた。
「それ教えて!」
スライムがビクッと反応する。
「今の、発動した瞬間に介入して上から落ちるにしたでしょ! どうやったの?」
「ちょ、スライムとっちゃダメ~、罠わかんなくなっちゃう」
二人の乙女がスライムを取り合っている。
なんかむかつく。
「お前ら、騒ぐなーーあ」
牛が先の通路から現れた。
「⁉」
牛が固まる。そして逃げ出した。
スライムは後を追う。
「……肉だって」
「え」
荷物持ちの男が呟く。
「スライムが肉と叫びながら追いかけていった」
どうやらスライムは腹を空かせたらしい。
「……ここ罠だらけだったよな?」
「うう、もうわかんない」
つまり動くのは危険だと言うことだ。
「スライム戻ってきてくれるかしら?」
「むむむ」
前方の罠に念を送る盗賊の横で、魔方陣を写している魔法使い。
そんな光景は初心者ダンジョンでも稀だ。
「スライムの記憶力は鶏より良いのか?」
「…………スライムって普通思考しないんじゃ」
「肉と叫んだが」
「鶏も餌とかご飯位はいいそうだが」
「……お腹減った」
カオスだ。
しばらくしてスライムは牛の頭を腹にいれてポテポテ戻ってきた。
助かった。
カオスだ。スライムが解体している。牛だ。
どうやら仕留めた牛の頭は食べながら、人間を捜しに来たらしい。
そして残った身体を今解体している。
とても巧く解体している。
解体屋としてスカウトしたいぐらいだ。
横で、乙女が二人、肉を焼いている。
「美味しいよ! スライム」
「ムキョモグュ スライム」
モンスターが狩った獲物を横から勝手に焼いて食べている乙女たち。
モンスターは骨やら筋やらを食べている。
肉は多少減っても良いのか?
さっきは肉と言って走っていったと思うが。
そして、乙女だから肉に手を出すのを許されているらしい。
男が手を出すと、地味にトゲを飛ばしてくる。
意外と痛い。
盾でガードしながら、肉を食べる盾持ち。
うん。
荷物の影から肉を手にする荷物持ち。
う。
肉に手が出せないのは俺だけだ。
「……スライム、肉を分けて下さい」
もう。
スキルはいっぱいです。
「スライム、毒耐性も麻痺耐性も気配探知も覚えたからお願いです。お肉をーー」
「ど、毒耐性?」
「麻痺耐性って?」
「気配探知! 何処で!」
詰め寄られた。
「スライムのトゲが……」
え? と集まった視線がスライムに向く。
「さっきの地味なトゲ?」
「刺さるとなんか来てたが」
スライムは囲まれた。が、トゲは出さない。
「スライム、ねぇさっきの」
「いて」
こっそり肉に手を出したら、トゲが降ってきた。
「……」
「……」
「あ、回復魔法来た」
「ナンデスト!」
魔法乙女が飛び付いた。
騒がしい。
そして判明したことがある。トゲが無くてもスキルが覚えられた。
女二人は欲しいスキルを貰えたらしい。
男は、トゲを何度か受けて目当てのが来るまで多少痛い思いをして覚えた。
とりあえず気配探知は使えた。とても怖い思いをしながら見張りをしているうちに熟練度が上がった。
「いて」
うとうとしたらスライムが容赦なくトゲを飛ばしてくる。
こんなに真面目に見張りをしたのは新入り時代ぐらいかもしれない。
しかし、敵は来ない。敵はスライムの警戒網のギリギリのところから様子を伺っているが、近づいては来ない。
近付けばスライムが三枚に卸すから。
俺が見張ってなくても全然平気。
サボりはスライムが許してくれない。
荷物持ちが抱えている荷物は金になる。
盾持ちの盾は女たちを守ってくれるだろう。
女は守る存在で、前衛の剣使いはスライムよりヘボだ。
ヘボが足手まといにならないようにリーダーが教育する。
現在教育されている俺。
ここに必要なのはスライムで俺じゃない。
スライムがいなければ、もう全滅していただろう。
スライムの間合いに蜘蛛がカサカサ降りてくる。
スライムはスパーンと真っ二つにして、蜘蛛の脚を切り裂き焚き火に入れる。良く燃える。
鍋を取りだし、火にかける。
覚えた水魔法で鍋に水をいれ、具材は野菜を適当に刻んで投入。スライムの肉を失敬して、それも刻んで入れる。
「後は、塩が」
調味料をガサガサして鍋に視線を向けるとスライムが煮込まれていた。
「⁉」
ビックリしたとたんにスキルが降ってくる。
「あ、料理覚えた」
しかしスライム鍋はどうしたものかと思っていると、スライムは平気そうに鍋から出てくる。
「……鍋に落ちるなよ」
水が欲しかったのかと納得しながら深皿に水を入れると、スライムが飛び込んでくる。
「わーい。ご飯」
匂いに起き出してきた乙女たちがスープに飛び付いている。
止める間もなく食べられた。
「美味しいよ‼」
「そ、そうか」
スープは男たちにも好評だった。
スライムが落ちたとは言えなかった。
スライムの体内で魔石が消化されている。
あれは売ると結構高くいい収入になる。
それがスライムに消化されている。
「スライム、魔石って美味しいの?」
魔法の媒体として魔法使いが値段と相談で仕入して使っている。
スライムが首を傾げている。
骨と一緒に消化されている。
「あのね、町で売ると高く買って貰えるんだよ」
魔法使いの乙女はスライムを説得して、魔石を自分の鞄に入れた。
交渉スキルが有るのかもしれない。
次に盗賊の乙女が素材を鞄につめだした。
多分この階層にはもう来ないだろう。
スライムは、素材にならないゴミを消化して満足そうだ。
重いものは容赦なく荷物持ちの鞄につめだした。
詐欺スキルが派生しているのかもしれない。
「はぁ、獣魔契約弾かれる」
「あたしなんか、弾く前に無かったことにされてるわよ」
乙女たちよ。
スライムが何処に向かっているのか判らないで着いてあるいているのを理解しているのか?
そのうちスライムは、人間が欲しがる素材はあっさり寄越してくるようになった。
その分荷物が増える。
「アタシもう無理」
根をあげる。しかしスライムに着いていかねば命がないのである。
「階層主だな」
広い空間の真ん中に竜がスピスピ寝ている。
スライムはポテポテ横を通りすぎる。
後ろを忍び足で着いていく。
「ぐぁ?」
竜が目を開けた。
「……」
「…………」
「逃げーー?」
竜が逃げ出した。
「うえ?」
「え?」
竜は壁面の隅っこに頭を突っ込んで、震える尻を見せている。
「尻尾出てるよ?」
「これ、隠れているつもりなんだ。……多分」
戦闘を拒否した竜。
「こんな攻略有るんだ?」
「アホな」
スライムは階段には興味を見せず、その横の壁をペチペチしている。
「何して?」
壁が消えた。隠し部屋だった。
「これは」
「魔方陣!」
光る。
視界が白く染まる。
転移の感覚。
ああ、出来れば浅い階層にーー。
そう思った瞬間、空が見えた。
空があるようや深い場所に移動したのかと思いの視界に人が見えた。
揃いの防具を着けた兵士だ。
「あ、れ?」
ごしごし目を擦っている盗賊の乙女が首をかしげる。
「あそこ、入り口?」
「あれ、兵士の詰所?」
魔法乙女が近付いてきた兵士に飛びかかって行く。
「竜の転移門から移動ですか?」
スライムがポテポテ兵士の合間を行く。誰もスライムにちょっかいをかけない。
「竜、隅の壁を自分で掘ったのか頭だけ突っ込んで震えてましたが」
「そう、その竜です。戦闘はしなかったみたいですね」
詰所の前に水桶が置いてある。スライムはそこにドボンと入った。
乾いていたらしい。
「あの俺達が入ったときはそんな情報は知らなかったんですが」
「ああ、50層以上に行くパーティーにしか告知されなかったからな。お前たちなんでそんなところに紛れ込んだんだ?」
「はぁ、30層で罠にあいまして」
「ふむ。スライムもそんな罠で奥地に登っているのかもしれないな」
情報が足りない。
「スライムに逢えて良かったな。低層に移転トラッブが有ると情報出すことになるな」
後半は独り言のような予定を思案した呟きみたいだった。
スライムに会えなかったら今頃恐ろしいを通り越していただろう。
水浴びを済ませたスライムが戻ってくる。
兵士たちが水桶に群がっているのが見えた。
あれはなんだろうか?
「こら、お前ら」
水桶争奪戦に参加した兵士を何となく理解しながら肩に乗ったスライムに視線を移す。
「ギルドかな」
「お酒のみたい」
「お風呂」
「お布団」
「肉」
散々肉三昧だったのに誰だ。肉をリクエストしている奴は。
「順番にだな」
ヒャッホーと喜ぶメンバー。
もう何も驚かん。
ギルドにて。
箱の中にスライムからの戦利品を入れる。
色々素材、魔石。良くわからんコーティングされた肉。
宝箱が完成する。
箱の中でスライムがごそごそしている。
中々可愛い。
「肉にかけられた魔法、うぅわかんない」
魔法乙女が悩んでいる。
その顔面に魔石を投げつけるスライム。
ぽいぽい投げるのをキャッチする。
「え?」
「素早さの指環だよ?」
「俺のは力の腕輪」
「む、防衛の籠手」
俺のところには頭上から剣が降ってきた。
「いて」
剣は荷物に無かった筈だ。何処から出てきた?
二階から誰か落としたのか?
受付嬢が飛んできた。
「ええと換金ですか?」
「え、多分違う」
スライムがシュタとカウンターに登り、ペンを振り回す。
「‼」
受付嬢が普段メモをしている紙に何か描いている。
「……ええと? どうやってスライムにペン持たせる調教したのですか?」
してないがな。
「ええと? マスターに贈る。学園 魔王様? ウフフ、偉いわねえ。スライム」
しばし紙を覗き込んだ受付嬢は、にこりと微笑んだ。
「どうやって、スライムに文字を覚えさせたんですか?」
「…………」
してないがな。
「学園に今、魔王様居るのか?」
「え? 魔王城にいるんじゃないの?」
「そもそも何処の学園?」
地方にも整備された学園がある。
「魔王城に送っとけばいいんじゃないか?」
丸投げをしておこう。
スライムはイソイソと箱に戻って蓋を器用に閉める。
「ウフフ。可愛いわねえ」
しかし受付嬢はかぱっと蓋を持ち上げた。
「生き物は送れないのよ? ごめんね」
ガビーンとスライム。
「代わりにお手紙特別に入れても良いわよ」
手紙は別便なのが普通なんですが。
スライムがペンを持ってうにうにしている。
絵ならまぁグレーゾーンで大丈夫のだろう。
「うーん、でもこれ受けてくれる人いるかしら」
財宝です。多分、慎ましい生活なら一生暮らせそうな気がします。
「それに魔王城に一般人が荷物は送れないわよ?」
ガビーン
スライムはとぼとぼ出ていってしまった。
「ええと、で、これどうするの?」
受付嬢は悪気はなかったのだろう。
しかし宝箱はスライムの物だ。
「スライムが取りに来るまで保管してくれ」
そう言われ受付嬢は「え?」と始めて目を泳がせた。
「スライム。これスライムの?」
「そう紛失なんかさせたらスライムが何処までも追いかけていくと思うぞ」
まじで。竜が頭を突っ込んでプルプルするようや教育が待っている。
「スライム」
路地でスライムを見付けて、拾い上げる。
「元気出せよ。ほら串焼き旨いぞ」
スライムに餌付けしながら露店を回る。
「学園にいる魔王様の学校を俺調べてやるから、元気出せよ、な?」
スライムを慰めていたら乙女たちにスライムを持っていかれた。
「スライム酒盛りよ!」
「おー、飲むぞ~」
乙女の酒盛りには近付くな。
おとなしく宿屋に帰り、おかみさんに聞いてみる。
「魔王様の通っている学園ってどこか知ってる?」
「うちの侯爵様のとこの魔王様かい? 竜が生まれたらしいし、侯爵様の所にも竜がもらわれてきたらしいからそのうちお披露目があるとか」
近い。すごく近場にいたよ。
学園行きの定期馬車に乗り込めば直ぐ着くよ。
ダンジョン通ってないで、馬車に乗り込めよ!
幌馬車の馬は妙に手入れがされていた。
「あー、こりゃスライム隠れてるな」
御者がため息混じりに呟く。
「馬はピカピカになっても乗せられないんだって」
念入りに検査されてスライムは追い出されていた。
「ごめんよ」
毎度の光景らしかった。
自力で歩いて行くか?
干からびそうだ。
馬車に乗れないなら、馬でーー。
「どっちにしても学園の結界で入れないだろうし、周りの水場がないから住みつけないだろう」
「だよなぁ。干からびてるの何度見たか」
干からびてたのかよ!
スライムなにやってるの?
「その度に馬はソワソワするし、戌は役に立たないし」
馬と戌はスライムのピンチに敏感らしい。
「スライム。学園に入れないなら侯爵様の家でも見に行くか? もしかしたら週末家に来てるかもしれないし、遊びに行きたい年頃だろうから抜け出して街にいるかもしれないだろ?」
ベチベチとアタックが来る。
「スライム、強制スキル入力やめて」
一度にそんなに無理。破裂します。
「強制スキル?」
あ、やべ。馬車の護衛が声をかけてきた。
スキルは何でも役に立つから多く入手したいものだ。
護衛家業の身としては切実だ。
しかしそんな事が出来ると知られるのは不味いと思う。
「もうでるんだろ馬車」
「ちっ」
馬車の様子を見て、話は諦めてくれたらしい。
「さて、じゃあ侯爵様のお家侵入突撃ルートの下見だな。なぁスライム……」
衛兵が両脇にいた。
「⁉」
「ほう、侯爵様のお家侵入ルートの下見か」
「じっくり聞かせていただこう」
なんか踏んだり蹴ったり?
「えーと? 言葉のあやでして」
「おう、なに夜まで日勤だ。何なら泊まりでも大丈夫だぞ」
大丈夫でない。
結局ギルド長に身元保証人になってもらった。
パーティーメンバーでは駄目だった。
なにせリーダーが自分だったからそれ以上が望まれた。
「なんかスミマセン」
「不用意に侯爵様のお家侵入など言うからだ」
「はあ」
忍者スキルが有るから以外と平気だとは言わない方がいいのだろう。
「そもそも侯爵様のお家には竜やらケルベロスやらタイガーもいるんだぞ。もう少し考えろ」
「あ、居ますね。壁にヤモリとか蜘蛛とか、模様かと思ったらでっかい蛾でビビったことが……」
あ、ギロリと睨まれた。
「ほう、でっかい蛾」
結局寝ずの取り調べを受けた。シクシク。
忍耐と会話スキルがめきめき上がった。
スライムはいつのまにか逃げていた。あんにゃろ。
明け方宿屋に戻るとメンバーが勢揃いしていた。
「お勤めご苦労様」
「お前ら、違うぞ。ちょっと職質とお説教をだな」
「はいはい。で、次は盗賊家業?」
「はぁ!?」
「だって侯爵様のお家に盗みに行くんでしょ」
コイツら、何処から情報を得ているんだ?
「行かねぇよ。だいたいあそこの品は闇でも難しいし、いろんなものに追いかけ回されるわ、挙げ句に赤目のガキを小脇に抱えて逃げ惑って死にかけたんだぞ。……あれ?」
「ほう、赤目の魔王様を小脇に……抱いたのね」
乙女たちがなんか怖い。
何故忘れていたのでしょうか。
コイツらは子供大好き乙女だ。
「えーと、俺なんて言った? あれ?」
しかしピンチは目の前だった。
スライムがポテポテ歩く。その後ろを追いかける俺たち。
身元保証人の対価は、スライムの護衛だった。
いやスライムの移動ルートの洗い出しだ。
「ねぇ。スライムが倒したら経験値入るんだけど?」
「お前、容赦なく素材集めてるなよ」
「持つのは俺か」
「あ、待って スライム」
まかれた。
「むむむ」
乙女たちが燃え上がっている。
まかれること三回目。外に出れば夕方。
ギルド長に報告会。
それで終了。
「で、お前、いつ侯爵様のお家に忍び込んだんだ?」
ゴフッ
「赤目の魔王様を抱っこしたのは何時の事だ?」
ゲフ
報告はしっかり上がっていた。
ヘルプだ! スライム!
本日も職質とお説教タイムがーー。
つづく(笑)




