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遠い昔の日常

アッシュ視線

男性陣がお風呂場に消えた後、衛兵を帰した。

渋る衛兵に悩殺笑顔で

「あら、護衛に頼んだのよ? 街は女性の一人歩きは危険だもの。レイチェルの住む町とは違うのよ? こんなに可愛い女性が歩いてたら善からぬ事を考えるお馬鹿さんが必ず居るわ」

帰りがけに執事からお心付けを貰っていたので、どっちもどっちだ。

護衛任務の報酬をしっかり貰ったのだ。

後で文句も言えまい。

「お嬢様、どうか私に罰を。悪いのは私なのです」

「何を言うの。悪いのはあの人よ?」

「違います! お嬢様、悪いのはわたーー」

「いいえ、どう考えても悪いのはあの人よ? 母親から子供を奪って孤児院で見つけたなんて言うんですもの」

「う、奪ったのは私で」

「良いのよ! レイチェル。貴女はとても魅力のある乙女ですもの! 罰を受けるのはあの獣よ」

横に子供が居るのを忘れているのだろうか?

アッシュは中々居心地の悪さを感じながら、お菓子の山を見直す。

二人の母親は子供には聞かせちゃダメでしょな会話を織り交ぜて盛り上がっている。

途中でビーに助けを求めに逃げたのに、ビーは男の子を押し倒していた。

ハハハ。なにやっとるん!

だからビーを抱えて、うっかり母親たちの元に戻ってしまった。

なにやってる? 俺!


ビーは着飾られている。

うん。いい玩具になってくれた!

乙女の視線が、集まっている。

よかった。少し余裕ができた!


が、男たちが風呂から上がってきてしまった!

大ピンチである!


父さんがメイドに手を出した。

しかし追い出して、母と結婚した。

メイドはこっそり子供を生んだ。

母も同じ頃、子供を生んだ。

そして、誘拐事件発生。

子供は見付からず、メイドの生んだ子供を家に連れてきた。

現在ココ!


うん? それだとパパが本当のパパなんだけど?

あれ? そうなの? ママ?


ガーン


つまり、捨てた女の子供を何食わぬ顔で家に連れて来たのか!

あの場所で会ったのは偶然でなかったのか?


がいーん


「だから彼女に手など出していないとーー」

「銀狼の血筋がそこいらにはぐれていると思って?」

銀狼の血筋。血の濃さにより何となく一族の者だと理解できる感覚の事だ。

俺はまだよくわからない。

ビーの匂いは好きだけど。あれは竜種だ。


「孤児院から連れてきたときは、気のせいかと思ったわ。偶然見つけた眷族の血筋。昔にはぐれた一族の末裔を見つけてきたのだと思ったわ。でも薄い血の子にはポチがなつきすぎた。よく考えなければいけなかったのよ、私は。そうすれば幼子に母親と引き離してしまう過ちを犯さずにすんだのにっ」

ゆらりと焔が背景に見える。

「そもそも貴方がちゃんとおっしゃってくれたら」

盛り上がっている。

「レッシュが産んだのはアッシュだよ?」

ビーがクッキーを頬張りながら、小首を傾げて呟いた。

「アッシュの父親は、ブルリア」

ジュースのコップに手を伸ばして、コクコク一気に飲み干す。

「レイチェルが産んだのは、コニだよ」

クッキーの皿に手を伸ばしたビーの手は、スカッと空をきった。

乙女の手の上にクッキーの皿がある。

「ビー、はい。あーん」

ビーの口にクッキーを1つ。

すかさず、空いたコップにジュースを入れる。

乙女の手のなかでコップがうっすらと冷やされる。

ヒンヤリとした冷気が漏れているのは気のせいだと思いたい。

「フフ、ここに全てが在るのだもの。聞けばよかったのよ」

焦った男陣が後ろで固まっている。

「ビー、今なんて言ったの?」

「クッキー美味しい」

ピキン。コップが凍りついた。中身はシャーベットになっている。

「その前よ?」

「……アッシュはブルリアの子供間違いない」

「ーーコニってどなた?」

視線が動く。

「あら? 何? 新しい門番候補者ではなかったの? てっきり竜との戦闘は能力試験かと思ったのに」

メモしておこう。ヤバすぎる就職活動。

採用試験は竜と闘う! 

試験内容はよく確かめよう!

「……嫌な試験だ」

もっともな台詞をコニは呟いた。

「コニは誰の子供」

「レイチェル」

「……レイチェルの所に居たのは、アッシュでなかったの?」

クッキーが乙女の手の中で粉々になっている。

「……ブルリアがアッシュを見つけたときは、一緒に住んでたね」

ピキピキと凍り付く。

ビーだけがどこ吹く風で、もしゃもしゃクッキーを頬張っている。

寒い。


「ふふふ、あ・な・た?」


父は凍った。うん。視線ひとつで凍らせる今の技は是非獲得したい。


「お、おおお、お嬢様」

レイチェル母さんが、始めての銀狼を目の当たりにして怯えている。


「レイチェルの恋人はコルで、コニの父親だよ?」

怒れる銀狼の乙女の雰囲気を気にする事なくビーの言葉が続く。

蜘蛛が隅で寒さに震えている。

取り替えっ子(妖精の悪戯 )は元通り……レッシュ?」

さすがに冷気に気が付いたビーが首をかしげる。


「……対価は」

乙女は、小さく震えている。

(時間 )

子供は足元に甘えてきた竜を抱き上げる。

「アッシュは、母親が生きることを望んだ。その為に自分のすべての時間を売り払った」


「ブルリアは子供を望み、レッシュは他の子は要らないと」


「レイチェルは子供が生きることを」


「そしてポチは、可愛くなった」


何か最後に変な単語が混ざっている。

ポチも子供の足元にくっついている。

蜘蛛がポトリと落ちてきた。寒かったらしい。

「どうしたの? お前たち」

ビーに床の上でぴくぴくしているところを拾われて、蜘蛛がホッとしている。

すいっとビーに近づくと、理由がわかる。

ビーの側だけ暖かい。


「ぶざけるな!」

コニが叫んだ。


「……コルは子供のために一族を捨てた。コニ、お前は何を望む?」




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