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この日の日常

細い長剣を構えた相手を前に、少し現実逃避したくなる。

多分しても他の人からは抗議は来ないと思う。

しかし。

まだ剣が細いのが加減してもらえてるのだろうか。

はぁと息を吐き、防御姿勢を取ると上から巨大な何かが降ってきた。

「あ、アッシュ。何してるの? ……パパと稽古?」

目を見開いた旦那様が剣を取り零した。

いや、こちらは武器なしなので剣のお稽古と言うのは違うかもしれない。

竜の脚の下で、今度こそ現実逃避した。

にぎにぎ

竜の指圧が。痛い。

いた!

「ビー、家の人には行き先を言って来たんだろうね?」

「え」

最初の衝撃から復帰した旦那様。

く、食い込む!

「ええと」

目が泳ぐ。ビー。まるわかりだよ。

「ビー、竜の爪がっ」

「あら」

プシュー

竜は叱られていた。少し涙目になった竜は変に可愛かった。






「つまり竜と散歩に出かけたらアッシュを見かけて空から降りてきたと」

威厳はありません。何故ならビーをしっかり膝に乗っけてます。

竜は小さくなって果物にかぶりついて餌付け済み。

ビーにもお菓子の山が与えられている。

「んーモグモグ」

「きゅるもぐもぐ」

竜も何か返事をした。何いったのかさっぱりだけど。

「まぁ」

永遠の乙女は旦那様の膝を取り合ってーー、いや、旦那様とビーを取り合っている。

「レッシュお姉さん、竜の卵の欠片のネックレスあげる。安産の御守り」

「まぁ」

むきゅと強引にビーを勝ち取っている。

「安産? 竜の卵は子宝の御守りだったんじゃ?」

「と言って煎じて飲むとか言うけどカルシウムとるにはモーモーの乳の飲んだ方が効率良いと思うんだけどね。チーズも良いよ」

「フム」

ポヨン

「ん?」

旦那様の頭に花が咲いているような。

「…………安産の御守り?」

「双子だね」

どうやら口うるさい旦那様を黙らせるには成功したらしい。

「ビー、まだ内緒なのよ。え、……双子?」

「うん」

「きゅるもぐもぐ」

「モグモグ」

「双子!?」

男の子なら念願の後取りだ。

「おめでとう、母さん」

抱き締める。柔らかな細い肩。

「うふふ ありがとう」

隙をついてビーを獲得した乙女はぬいぐるみを抱くようにモフモフしている。

その頭、撫で回したい。

不埒なことを考えているとビーは微笑んだ。

「ぽちー」

巨大に育ったポチが窓から覗いている。

でかくなりすぎて外戌となっている。

竜が窓越しに首をかしげて戌を見上げている。

「きゅ」

よちよち歩いて戻ってくるとビーを登り、その腕のなかに納まる。

「グルル」

ポチが唸っている。

「ポチ、おっきくなったね。え、小さくなれないの?」

がーんとポチが落ち込んでいる。

竜が、ふふんとポチをちら見してビーに甘える。

ここに竜と戌の対立が浮き彫りには成らなかった。

「モフモフ。ふふ、ねぇこの毛少しちょうだい」

ガビンとポチが固まってる横で竜がすりすりして

「あ、リリは鱗ちょうだいね」

ぎぎぎと、ぎこちない動きで首を回した竜は逃走を図った。

戌と竜は仲良く庭でかくれんぼをしだし、スキルを育てるのに成功していた。

ポチはビーの足音にびくびくしていたら、小さくなるを覚えたらしい。

小さくなれた特典で、ビーに抱っこされて喜んでいた。

「クロの毛と竜の鱗で何ができるんだ?」

「くろ?」

旦那様ははっとして目を泳がす。

「ほら、黒いから」

「うん。黒いね」

ワフワフ尻尾を振りまくっている。

「まだ名前呼べないんだ?」

ビーの目が恐いと始めて思った。



どうしてこうなった。

旦那様はポチを洗っている。

黒い毛並みが、泡で真っ白だ。

そして湯船にはビーが浸かっている。

「フンフンフン」

竜がぱしゃぱしゃ泳いでいく。

海で泳ぐ練習をして大騒ぎしたのが懐かしい。

クラーケンまで出てきてーーイカ足は旨かった。

ぱしゃぱしゃ

「ビー、他所で風呂場は泳ぐんしゃないよ」

「あーい」

ぱしゃぱしゃ

……尻が泳いでいく。

ぱしゃぱしゃ

「……ビー、背泳ぎはやめなさい」

全部見えとるがな。

「えー」

「マロンに殺される」

「う」

躾はマロンに一任だ。いや、どっちにしても告げ口は自分の首を絞めるから言えないが。

一緒におふろとか知られたら殺される。

とは言え、きっとビーがポロっと言うから秘密は長く続かないだろう。

「あ、ポチ、サラサラになったね」

泡を流した戌が艶々になっている。

「んじゃ乾かしたら毛刈りで」

うん。ポチのがーんとなった顔が面白い。

そして、旦那様に助けを求めた。

「あー、よしよし、ポチ」

どうやらお風呂で、好感度は上がったらしい。

なるほど。

そういえば、スライムも風呂に連れていってたような。


夕食はビーの好みなメニューが並んでいた。

そしてビーが爆弾を落とす。

「アッシュ、望みはなぁに」

ピシッ

どうやら、こっちの好感度も上がったらしい。

さて。

好感度はどうやったら下がるんだ?

「ビー、野菜食べないとーー」

竜にあーんと食べさせている。

ビーの皿から野菜は竜の腹の中に消えた。

「……」

ここは!

「ビーの好き嫌いがなくなりますように」

「!?」

「はい、野菜も等しく食べる」

もりもりてんこ盛りになった皿を見て、ビーはポチを抱き上げた。

「好き嫌いダメよ? ポチ」

今度はポチにあーんしていた。

ポチ。おまえ野菜もしっかりタベレタンダ?

なんだっけ?

「ビーが野菜大好きっ子になりますように?」

「!!」

がびん

好感度は下がった。

うん。なんだろう。

「アッシュのバカ~」

捨て台詞が痛い。

野菜が飛んでくる。

「う」

刻まれた生野菜から、蟲がワラワラ。

ぎゃーっ

いや、その皿は俺の前にあったものだ。

は。俺が嫌がらせされていた?

ぎゃーっ



「アッシュ、入れて」

ポチを小脇に抱えたビーが部屋を訪ねていた。

落ち込んでいる暇はない。

枕が替わったらダメな子なのか。

しかし、少し目を離したらポチを抱き枕にして寝入っていた。

ポチが助けを求めているのは気のせいだ。

カリカリとドアを引っ掻く音に、ドアを開けると竜が飛び込んできた。

「きゅ」

「ビーは寝てるから静かに」

竜もベッドに放り込みあっという間に寝付いている。

うん。

あの竜の主はビーじゃない筈なんだが。

しかし、竜と戌と天井の蜘蛛やらの前で子供に何かしようものならサクッとかの女神の元にいかされるだろう。

「おやすみ」

ベッドの端に滑り込むとすんなりと寝付いた。




重い。

朝、ビーの抱き枕になって目が覚めた。

動けん。

解放された戌と目が合う。

朝からサバイバル突入なのであった。





居間の隅に、箱があった。

中を見ると、蟲だ。逃げないように網がかかっている。

「ああ、それね。昨日ビーが投げたサラダよ。この蟲から絹が取れるんですって」

採れても加工できるんだろうか?

まぁ蜘蛛の糸から色々加工しているからなんとかなるのかもしれない。

「ごめんなさい。逃げ出したのが貴方のサラダに逃げていたらしいのよ。気がついて良かったわ」

いや、知らずにビーに食べさせようとしたし。

しかし。

簀巻きになっている旦那様に目を向ける。

「あの父さんはなんで」

簀巻きに放置されているのでしょうか

乙女の笑顔に途中で言うのをやめる。

「おほほ」

乙女の怒りに触れてはいけない。

見なかったことにしよう。

僕らの日常はとても穏やかだ。

多分。





竜の保護区調査から戻ったアッシュの実家の日常の話。

視線はアッシュでした。


前話はアッシュの子供の時の話。


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