小さな
見付けた小さいスライムは、食事をしていた。
しかしその肉は余りにも大きかった。
回りに集まってくる仲間たち。
プレッシャーがかかる。
ここで、退ければ回りの仲間たちが食事に参加する。
あっという間に消化されるだろう。
じりじりと輪が縮まる。
もう時間がない。
べし
叩き落とされて見上げる。
動き出した屍。アンデッド化である。
その内、肉は削ぎ落ち骨だけになるだろう。
ボーンドラゴン。厄介な最上級魔物になる。
ワタワタと焦ったスライムは、突撃するものの弾き飛ばされていた。
タイムリミット
シャキン
横でスライムは刻まれる肉を見上げる。
小さき仲間よ。
小間切れ。覚えましたか?
ぷるぷる。
回りの仲間たち全員がぷるぷるしてます。
シャキーン
おっと。反撃が来ました。
ではご一緒に❗ 小間切れ‼
スパーン
回りの物陰からのぞいている竜やらが縮こまっている。
誰かの相棒なのだろう。
本日はご飯十分ですよ?
んまんま
みんなで食べたら直ぐ消化されます。
湿原の掃除屋の僕たちが食べ残せば、そこらじゅう骨が動くことでしょう。
骨は美味しいので、逃げていくのはちょっとですがね。
御馳走様です。
残ったのは赤色魔石。
最初に張り付いていた小さいスライムに差し出す。
あらよっと。ぴかりんこ。
魔石を取り込んだスライムは変化を覚える。
小さい羽を生やす。
ほむ。
可愛いです。スライム竜。
透明でキラキラして。
マスターが見たら、一瞬でメロメロでしょう!
ン? メロメロ?
…………………。
タラリ。
これは‼
マスターに会わせてはいけない‼
ひょいと変化したスライムを持ち上げる。
ダッシュです❗
速く別の人間とお見合いさせましょう❗
マスターは僕の❗
細かい虫除けの陣を突破して人間の建物に入る。
ええと、新しくスライム避けとか追加されてますが平気。
居ました‼
ここの最強? 竜より良い人間?
エイヤーとぉー⁉
ホップ、ステップ、ジャンプとツル。
「スーらーイム」
あきゃ
ペシペシ
どうだ?
頭にスライム竜はへばりついている。
ウンウン。
良い物件でしょう!
スライム竜は相手を吟味している。
「あれ」
頭にくっついたスライムに気が付く人間。
「……羽? 変化か?」
ペシペシ
羽で叩かれています。
「アタッ」
まぁ、お見合いは大丈夫みたいだ。
さて。
とっとと契約しなさい。
ペチペチ
ふふふ
マスターは主を持っている子にはちょっとだけ撫でても、お持ち帰りしないのです。
そう。早く!
は。なんか黒くなってました?
気のせいでしょう。
モシャモシャ
「ボス、これ彼女か?」
ゲフ
食べていたサラダ菜吹き出してしまいました。
「違うのか? ま、良いや、きれいだな」
うむ。マスターが見たら気に入るぐらいにはね。
と言うか、爆弾草アーンして……。
人間の学習力は低空飛行らしい。
スライム竜が吐き出した爆弾草で楽しく大騒ぎした。
擬態した翼を器用にたたみ、男の背中に張り付いている。
キラキラと透明で、目を楽しませてくれるスライム。
男の移動と共に、ぞろぞろと乙女の集団が移動する。
その後を、ムサイ集団がーー。
「ダー! 何?」
振り向いた男、ロイはイラつきながら近くの乙女に詰め寄った。
「そのスライム貸して?」
「は?」
「その子、あっちの子より優しいのよ」
あっちの子は、棘を生やして威嚇している。
「そりゃ追い回すからだろう」
スライムと楽しく料理をすると料理スキルが貰えると人気だ。
しかしスライムは気まぐれで、毎回料理をしてくれない。
最近は人間を見ると棘を生やして威嚇している。
あの棘も刺さると、色々スキルが貰えるのだが、やはり希望のスキルが高い確率の料理中のスライムが希望らしい。
何処へ行っても視線が追う。
隠密家業が笑えるほどだ。
きゅ、と捕まれたスライム竜が首をかしげる。
「ムイラ、彼女たちに料理を教えておくれ」
ギャラリーが歓喜する。
そして聞こえないようにこっそり囁く。
「ついでに家事スキルとか裁縫関係とか、きっちり糸紡ぎからな。一度にきっちり教えておけば今後邪魔されないだろう」
そう。先日別の娘に教えたばかりにこの行進だ。
「きゅ」
うるうる乙女たちに連れ去られる悲しげなスライムを見送り、少し後悔する。
あのスライム竜が、意外なスパルタなのを露見した秘話である。
お陰で、行列は二度とできなかった。
ガーン。マスターがあたいを貸し出した‼
ちくしょう。
今後邪魔されないように?
ン。
そうか。邪魔しに来ないように、しっかり叩き込んであげましょう!
シャキーン
本日はパン焼きです‼
小麦の粉引きからです‼
キシャー!
む? そこの男たちは畑を耕して魔麦を植えろ!
けけけ
折角なのでマスターには美味しいパンを捧げましょう!
本日は糸紡ぎです‼
ン。素材が足らないので狩りに行きましょう‼
メーメーちゃんはお肉も美味しいです❗
是非マスターに美味しく食べて頂きましょう
おりゃ、そこの男たち、荷物持ちですよ?
待て、逃げるな~~!
本日は野菜の仕込みです!
取り敢えず美味しくマスターに。
皮剥き。千切り、みじん切り、飾り切り
おりゃと、どうだ?
む? 男たちの方が巧い?
本日は糸染めです。
さて染料を取りに行きましょう。
途中で、色々な素材もゲットですよ。
マスターに美味しい……。
何ですか? 男たち、勿論荷物持ちですよ?
本日は岩場に来ています。
ここは岩塩が取れるのです‼
カコン、カコン
え、地質調査?
無理だと思うけど?
だってここは竜の塩場。前のマスターが教えてくれた場所です。
そら早く隠れないと竜に見つかるよ?
何ですか? 男たち。恨めしそうな目をして。
マスターに食べて貰う岩塩はゲットです。
フフフ。あそこの唐辛子もとっといで。
マスター! 美味しいキノこ
…………。
マスターの頭の上に、棘の生やしたスライムが❗
がびん
まーすーたー(怨)
「お、ムイラ。今日は何して来たんだ? キノコ?」
ひょいと抱き上げられ、あれ? スライム寝てる?
「こいつ、そこらに置いておくと通りかかった人間に棘飛ばすんだ。危なくてな」
うむ。マスターの側なら自動迎撃しないでも大丈夫ですからねえ。
と言うか、スライム。冬眠モードに成ってますが。
お疲れ?
「湿地にこれ放して大丈夫かな」
ふて寝ですね。
水場なら何処に放しても大丈夫かと。
所で、何時まで人間の世話をするのでしょう?
「ムイラ、刺繍を教えて!」
「銀細工の加工を」
「機織りを‼」
「お裁縫を」
キシャー
本日は仲良くボスとふて寝です。
人間の欲は果てしないことがわかりました。
マスターが、横で剣を手入れしています。
惚れ惚れ。
うふふ、ぽかぽかします。
マスター。




